墓じまいで取り出した遺骨を手元供養する家が増えた?複数の遺骨を収蔵する「お墓」型仏壇
コロナ禍のなか、墓じまい後に取り出した遺骨を手元供養にする家が増えました。コロナ禍による自粛により、遺骨の行く先を自由に探せない方も多いですよね。
ただこの他にも、墓じまいで取り出した遺骨の数が5柱・10柱と多く、合葬墓で永代供養を検討していたものの、予算がかさみ手元供養を選択する事例も増えました。お墓とは違い、合葬墓は1柱ごとで料金を提示するためです。
墓じまいでは離檀する家も多く、手元供養もより容易に受け入れられるようになりました。墓じまい後に手元供養を行うことで、費用が抑えられるうえに、後から納骨の検討もできます。
そこで今回は、墓じまいで取り出した遺骨を手元供養する時に役立つ、手元供養までの手順や種類、費用目安などを解説します。
墓じまいで取り出した遺骨を手元供養する家が増えた?複数の遺骨を収蔵する「お墓」型仏壇
手元供養とは
手元供養とはお墓を持たない葬送のひとつで、自宅に遺骨を祀る方法です。仏壇を仕立てて祀る家が一般的ですが、必ずしも仏壇に祀らなければならない訳ではありません。
墓じまい後に手元供養を選ぶ場合、(1)両親など近しい身内の遺骨のみを手元供養にする場合や、(2)取り出した遺骨を粉骨して、お墓代わりの仏壇と見立てて祀る場合があります。
・ 近しい身内のみを手元供養にする
… 墓じまいでは5柱・10柱と多くの遺骨が取り出されることがあります。そこで遠いご先祖様は合葬墓などへ永代供養して、両親や配偶者など、近しい遺骨のみを、墓じまい後に手元供養にする方法です。
・ 全ての遺骨を手元供養にする
… 合葬墓は最も費用を安く抑える永代供養の方法ですが、それでも5万円~10万円/1柱が目安です。そのため10柱もの遺骨が取り出されてしまうと、費用もかさみます。
→ そこで全ての遺骨を粉骨してコンパクトにまとめ、仏壇へ収納する供養方法の選択が増えました。コロナ禍によりお墓までお参りに行けない事態も、手元供養が選ばれる遠因です。
墓じまい後では「手元供養は法的に違法ではないの?」や「仏教的に問題があるのでは?」などの声も聞こえます。
確かに仏教では故人の魂はすぐに成仏するとされる浄土真宗以外の仏教宗派において、お墓に埋葬されない期間は「忌中」とされ、「あの世とこの世を彷徨うから、早く納骨しなさい」と言われることがあるでしょう。
けれども現代では無宗教の家も増え、気にする人々が少なくなりました。
また法的には遺骨を墓地以外の土地に埋葬することは「遺体遺棄」として違法になるものの、遺骨を自宅安置することは、違法には当たりません。
手元供養を選ぶ理由
では現代、墓じまい後に手元供養を選ぶ理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
故人亡き後、火葬場で遺骨を引き取ったまま、納骨せずに手元供養を選ぶ事例が最も多いですが、最近では「先祖代々墓に納骨したものの、やはり手元供養にしたい!」と、敢えて一度埋葬した遺骨を取り出して、手元供養を行う事例も出ています。
【 墓じまい後に手元供養を選ぶ理由 】
・グリーフケアの一環として(アクセサリー/ミニ骨壺)
… 大切な家族を失った喪失のショックにより、四十九日を過ぎても自宅に遺骨を安置したまま、なかなか納骨できない事例は意外に多いです。このような時、「納骨しなくちゃ」と日々悩むよりも、手元供養を選んだ方がグリーフケアが進みやすい傾向にあります。
・「お墓のない葬送」の形として(ブック型)
… コロナ禍にあり、お墓参りが頻繁にできない現代において、年間管理料や掃除などのメンテナンスの必要がない「お墓のない葬送」の形として、粉骨してコンパクトにした遺骨を自宅で収蔵する手元供養が見られるようになりました。
・後々お墓を建てるまでの対策として
… 家族が亡くなった時にお墓がなく予算もない場合や、墓じまいをしたものの、取り出した遺骨の数が多く、予算オーバーになった場合など、目途が付くまで一時的に手元供養を選ぶ事例です。
・夫婦など、後々自分と一緒にお墓に入るため
… 終活により永代供養付きの夫婦墓を選んだ事例など、「一緒に納骨されたい」場合に手元供養を選ぶケースが増えました。エンディングノートなどで希望を伝え、自分の納骨時まで手元供養にします。
・合葬墓など(個別に取り出せない葬送)で、後々後悔しないために
… 家族が亡くなった時にお墓がなく予算もない場合に、他の遺骨と一緒に合祀埋葬される合葬墓が最も安い選択肢になりますが、後々遺骨を取り出すことはできません。そこで後々後悔しないように、一部を火葬場で分骨して手元供養を行う型もいます。
などなどの理由が多いでしょう。かつては大切な人を失った喪失感やショック(グリーフ)から、いつまでも骨壺の状態のまま、納骨できずに迷う方が多くいましたが、コチラも手元供養のひとつの形です。
ですから墓じまい後の手元供養でも、法的には必ずしも粉骨する必要はありませんが、業者では、遺骨のカビなどを衛生的にケアした後、乾燥して粉骨までしてくれため、粉骨をすることで仏壇に祀ったり、仏壇の棚に納めやすくなるでしょう。
遺骨は手入れから始まる粉骨までの流れ
墓じまい後に手元供養を行う場合、遺骨にはカビも生えていますし水分が溜まってしまうなど、衛生的にも見た目にも自宅には受け入れにくい状況ではないでしょうか。
ですから墓じまい後には、手元供養前に遺骨の手入れを業者に依頼する流れが一般的です。
● 墓じまい後に手元供養をする場合、業者が行う粉骨までの流れは、下記3つの工程です。
・洗骨
・乾燥
・粉骨
焼骨をしてからお墓に納骨されず、比較的短時間でご自宅に保管された遺骨は、洗骨の必要はありません。(ですから、業者には粉骨のみを依頼します。)
粉骨の費用目安
納骨堂などに収蔵する場合、遺骨は粉骨しませんから、業者では「洗骨+乾燥」のセット料金と、粉骨料金、そして遺骨のサイズで分ける仕組みが多いです。
・粉骨のみの費用目安 … 1~3万円/1柱
・洗骨・乾燥セットの費用目安 … 1~3万円/1柱
・洗骨・乾燥・粉骨セットの費用目安 … 1~4万円/1柱
なかには遺骨の手入れなしに、骨壺の形で自宅安置を検討する型もいますが、墓じまい後にお墓から出された骨は多くの水分を含んでいる状態です。
遺骨表面に菌が付着している可能性が高いため、やはり洗骨→乾燥までの手入れは不可欠でしょう。
ご自宅での供養の仕方
コロナ禍により、墓じまい後の手元供養が広がり始めましたが、火葬場で持ち帰った遺骨をそのまま手元供養にする選択は、この数年で一気に広がりました。
● 墓じまい後の手元供養はまだ少ないものの、最初から行う手元供養は2000年頃から広がったと言われています。
→ 今でも手元供養自体の需要は高く、「ブック型」「アクセサリー」「ミニ骨壷」など、美しく粉骨した遺骨を扱う仏具が多く販売されるようになりました。
納骨後はどうしても遠くに行ってしまうような気がすると思う方など、生活の中で故人に一緒にいてもらいたい、話しかけることができる。これが「手元供養」です。
手元供養のメリット
手元供養は、亡くなった方と身近に感じることが最大のメリットです。そのため、前述したように長く喪失感に苛まれた結果、墓じまいをして手元供養に切り替えた事例もあります。
・故人を身近に感じる暮らし
・お墓参りに行く必要がない
・費用を抑えた供養ができる
・供養場所に困らない
・後々お墓に納骨もできる
お墓や仏壇はそれぞれ費用が掛かりますが、墓じまい後に手元供養を選ぶ場合、遺骨の扱い方にも決まり事はありません。手元供養用の祭壇(ステージ)でも2万円前後の商品もあるなど、価格幅が広いでしょう。
また、墓じまい後の手元供養が増えた背景には、さまざまな手元供養用の商品が販売されるようになったこともあります。
粉骨した遺骨をコンパクトにまとめるブック型や、いつも持ち歩くアクセサリー型、一般的なミニ骨壷型まで、場所を取らずどこでも供養できるものがほとんどです。そのため賃貸の場合でも場所の置き場所に困らないことも、選ばれる背景にあります。
手元供養のデメリット
ただ、仏教的にも浄土真宗以外では、土に埋葬しない限り故人は忌中にあり、あの世とこの世を彷徨うとされます。そのため熱心な仏教信徒の親族がいる場合は、「成仏しない」と反対されることもあるでしょう。
● 特に墓じまい後の手元供養は理解されない事例もあります。ただ予算面や精神面で、何らかの事情があって、墓じまい後に手元供養を選ぶ方がほとんどです。
→ ですから家族や親族と話し合い、墓じまい後に手元供養を選ぶ理由をしっかりと伝え、理解を得るように進めるとスムーズでしょう。
ただ合葬墓や散骨など、遺骨が「0」になる葬送方法とは違い、墓じまい後に手元供養を選んだ場合は、後々家族親族から理解が得られなかった場合でも、手元に遺骨が残っていることで、何らかの解決策は維持できます。
手元供養の種類
近年、墓じまい後の手元供養が注目されるのには、仏壇の下に戸棚を設け、粉骨した遺骨を「本のように」納める、「お墓型仏壇」が販売されるようになったためではないでしょうか。
● 今までは手元供養と言うとグリーフケアのためにあり、愛しい故人、一柱の供養として選ばれてきました。
→ けれどもブック型の骨壺や、お墓型仏壇が登場したことにより、家に先祖代々墓を建てる感覚で遺骨を祀ることも可能になっています。
それでは、下記より墓じまい後にも選択できる、手元供養の種類についてご紹介しますので、どうぞ参考にしてください。
仏壇内に納めるブック型
墓じまい後に手元供養を選ぶ場合、専門業者に依頼をして洗骨・乾燥・粉骨を行った後、さまざまな種類の仏壇や仏具から、気に入ったものや適切なものを選びますが、なかでも遺骨を仏壇内に納めるブック型の箱が人気です。
ブック型に収まるため、墓じまいでご先祖様の遺骨を手元供養にする場合でも、複数の遺骨を仏壇下の棚に納めることができます。
● ブック型の特徴としては以下の3つです。
・スタイリッシュなデザイン
・コンパクト
・戒名やメッセージなどの刻印を入れられる
何よりも縦型なので、場所を取られることなく、複数の遺骨を仏壇内に納めるうえに、それぞれの背に故人の情報を刻印できるので、お墓と同じように供養ができます。
故人といつでも一緒「アクセサリータイプ」
特にグリーフケア(※)に用いられるのが「アクセサリータイプ」です。ネックレスやブレスレットのチャーム内に、粉骨した遺骨を納めるため、故人といつでも一緒です。
そのため墓じまい後の手元供養では、遠いご先祖様の遺骨などは合葬墓などへ永代供養し、配偶者など特に思い入れのある故人の遺骨のみを手元供養に選ぶ時の選択と言えます。
● アクセサリータイプの手元供養は、「ネジ封入式」と呼ばれる形が多いです。粉骨をした後、仏具店などで購入すると遺骨の収蔵方法も付いている商品が多く、遺族が自分達で納めることもできます。
・デザインがシンプル
・日常的な環境でも錆びが起きにくい
・ジュエリーから遺骨が外に出ない
(※)グリーフケアとは、大切な人を亡くした喪失感やショック(グリーフ)を癒す工程をさします。墓じまいまでして手元供養を選ぶ事例では、グリーフが深い方が多いため、生前は手元供養を行いながら、一緒に入るお墓を終活で探す方が多い傾向です。
そのためアクセサリーのなかには木製など、付けたまま火葬されても燃えるものもあります。
遺骨や遺灰を納める「骨壷」
墓じまい後の手元供養でも、個人墓など、近しい人を祀る場合の供養方法が骨壺です。そのため多くは、祭壇の中央に骨壺を祀ります。
※仏教では仏壇の中央に御本尊がありますよね。墓じまい後の手元供養では、離檀(特定寺院の信徒から離れること)して無宗教になっている家が多いため、祀り方は自由です。
また、家族を亡くして火葬後に手元供養を選ぶ場合にも、骨壺タイプでの供養がよく選ばれます。
● 手元供養の骨壺は、一般的な火葬場などで提供される大きな白い骨壺ではありません。他の手元供養と同じく、遺骨は粉骨まで手入れされて、骨壺に収まるのが一般的です。
→ なので一般的に「ミニ骨壷」と呼ばれる器に、粉骨した遺骨や遺灰の一部を納めます。なかには粉骨をせずに「喉仏(のどぼとけ)」のみを収める家もあるでしょう。
「ミニ骨壷」の特徴は以下の3つになります。
・場所を取らない
・バリエーション豊富
・仏壇の代わりになる
年配の方の中には「しっかり供養したい」「仏壇の代わりにしたい」などからミニ骨壷を利用する方が増加しています。保管するお部屋に合わせて雰囲気やインテリアに合わせられるのでオススメです。
いかがでしたでしょうか、今回は墓じまい後に手元供養が増えた今、複数の遺骨を自宅で収蔵・供養する方法をお伝えしました。
もともとはグリーフケアの観点から広がった手元供養でしたが、墓じまいが全国的に広がる今、手元供養は一時的な自宅供養としても選ばれています。
家墓(先祖代々墓)の墓じまいにより、納骨堂を契約するにしても、合葬墓に埋葬するにしても、個人では予算が追い付かない体験談も少なくありません。
今では手元供養が広がったことで、さまざまな手元供養のステージや骨壺、仏具が揃っていますから、自宅で遺骨を安置しても嫌な感じがしないこともあり、一時的に費用を抑えて遺骨を安置する方法として選ばれるようになりました。
また、グリーフケアとしての手元供養も、コロナ禍を受けてさらにニーズは急増しています。
墓じまいをして、近しい故人のみ手元供養を選ぶ方は、今後も増えることでしょう。
まとめ
墓じまいの手元供養が増えた理由とタイプ
・遺骨の数が多いと永代供養も費用がかさむ
・複数の遺骨を収蔵できる「ブック型」骨壺が登場
・一時的な保管方法として選ぶ手元供養
・近しい家族のみを手元供養に選ぶ事例も多い
・配偶者を手元供養し、二人で一緒にお墓に入る
●手元供養前の遺骨の手入れ
・洗骨(墓じまい後)
・乾燥(墓じまい、長期の自宅安置後)
・粉骨(全て)
●手元供養の種類
・ブック型(複数の遺骨を収蔵できる)
・アクセサリー型(常に一緒に暮らす)
・骨壺型(一般的な手元供養の方法)
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