直葬で後悔しないために理解したいデメリット。火葬式・一日葬との違いや、納骨の注意点
「直葬・火葬式・一日葬との違いは?」
「直葬は安いけれど、後で後悔しない?」
「直葬のデメリットや注意点は?」
直葬は火葬場で全てを済ませる葬送です。家族葬・一日葬・自由葬等、あらゆる葬儀スタイルが登場した現代でも、最も費用を抑えることができるでしょう。
ただし直葬はご遺族の負担が少ない分、デメリットもあります。故人の葬送は一度きりですのでデメリットを理解したうえで、直葬を決めることがポイントです。
本記事を読むことで直葬とは何か?火葬式・一日葬・密葬等の他の葬儀スタイルとの違いや、直葬を選ぶことで起こり得るデメリットが分かります。直葬により後々後悔することのないよう、選ぶ前に理解しておくと安心です。
「直葬」とは
直葬(ちょくそう)とは宗教的な儀式を執り行うことなく、火葬のみを済ませる葬送です。地域・葬儀社等により「密葬」「火葬式」とも呼ばれますが、詳細は少しずつ異なります。
直葬の大きな特徴は・宗教的な儀式を取り入れない・ごく近しい身内のみで執り行うことの2点です。火葬場で葬送を済ませるため参列者は10名以下のごく小規模な直葬が多いでしょう。
直葬は火葬場でご遺骨を火葬した後、骨壺に遺骨を収骨する「骨上げ」のみを行います。骨上げも省略するご遺族はいますが、火葬場により対応は異なります。
・骨上げの意味ややり方、マナーを解説。骨上げをしたくない時、1人で行う時はどうする?
①火葬式との違い
火葬式(かそうしき)も直葬と同じく火葬場で葬送を行います。しかしながら火葬式では、宗教的儀式を伴う葬儀が基本です。
火葬式では僧侶をお呼びして、火葬の間に火葬炉の前で読経供養が行われます。ただ火葬炉前は次の予約までの時間的な制約があるため、火葬式プランのなかには出棺前や安置所で読経供養を済ませるものもあるでしょう。
火葬式を執り行う場合は、僧侶に読経供養を依頼するためお礼として、お布施の準備が必要です。火葬式におけるお布施金額は、1回の読経供養に対して約3万円~10万円、平均的には約3万円~5万円を目安に包みます。
・【図解】お布施マナーとは?封筒や書き方、金額は?お札の入れ方・渡し方もイラスト解説
②一日葬との違い
一日葬(いちにちそう)とは、お通夜を省略して葬儀・告別式・火葬のみを執り行い、1日で全ての葬送を済ませる葬儀プランです。
一日葬は直葬とは違い、告別式等の宗教的儀式を伴います。午前中からご遺体の納棺・葬儀・告別式、午後から火葬を行う流れが一般的ですので、全体で約5時間ほどかかるでしょう。
直葬は火葬場でのみ執り行うため、約1時間~2時間ほどです。ただし法的に死後24時間は火葬ができないため、ご遺体の安置場所の手配は必要になるでしょう。
・【家族が亡くなったら】遺体安置の場所選び。搬送依頼前に選ぶ3つの種類|永代供養ナビ
③密葬との違い
直葬のメリット・現状
株式会社鎌倉新書が2022年に実施した「第5回お葬式に関する全国調査」では、直送・火葬式を占める割合が全体の11.4%に達しました。
2020年に世界を襲ったコロナ渦以降は、従来の一般葬から簡略化・参列者の小規模化が急速に進み、2022年度の主流は55.7%の家族葬へと変化しています。
一方、コロナ以前の2020年に一般葬の割合は48.9%でしたが、2022年一般葬の割合は僅か25.9%です。この流れに伴い、最も簡略化された直葬・火葬式は2020年の4.9%から、2022年は11.4%へと拡大しています。
・鎌倉新書「【葬儀】第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」
①経済的な負担が軽減する
宗教的儀式を省略し最も簡略化された直葬は費用も安く納まります。直葬の費用相場は約10万円~40万円、平均値は火葬込みで約36万円です。
直葬の費用はオプションを追加しないことで調整ができるでしょう。費用内訳は・火葬費用・棺・搬送費用・ドライアイス等・霊柩車(寝台車)・安置所・人件費です。
比較検討の材料として他の葬儀形式での費用平均値は、一日葬が約40万円~50万円・家族葬が約80万円~110万円・一般葬が約160万円~190万円ほどとされています。
②体力・精神面での負担が軽減する
直葬は火葬場のみで約1時間~2時間ほどで完結する葬送です。一日葬・火葬式と比べても最も簡略化した葬送と言えるでしょう。参列者もごく近しい身内のみで執り行うため約10人以下の直葬が一般的です。
参列者へ気遣う必要がなく香典・供花・供物を受け付けないご遺族も多いでしょう。香典辞退の直葬では、葬送後の香典返し等の負担もかかりません。
③参列者の負担が軽減する
小規模に簡略化された直葬では、参列者も精神的・肉体的な負担が大幅に軽減します。火葬場のみで移動がなく約1時間~2時間で済むため、高齢の方でも参列しやすいでしょう。
ご遺族のみでの直葬も多く、他の参列者への気遣いも必要ありません。香典辞退の直葬では、参列者は香典を包む必要もないので経済的な負担も軽減されます。
④火葬場の予約が取りやすい
火葬前の宗教的儀式を省略した直葬は、時間的融通が利きやすいため火葬場の予約を取りやすいです。参列者もごく少数なので、スケジュールを調整しやすいでしょう。
現代は火葬場の予約が取りにくく、なかには7日間待ちの声も聞こえます。火葬を待つ間、ご遺体は安置所に安置され、1日ごとに安置料金がかかるでしょう。時間的融通が利きやすい直葬では、安置期間にかかる費用も節約できます。
⑤「0葬」とは
「0葬」とは火葬後にご遺骨を引き取らない葬送です。火葬後のご遺骨は火葬場にお任せし、ご遺族は遺骨を持ち帰らないため「0葬」と呼ばれます。
ご遺骨を納骨する必要はありませんが、0葬を選ぶと後々ご遺骨は残りません。0葬を受け付けない地域・火葬場もあるので、よくよく検討してから選んでください。
直葬のデメリット・注意点
宗教的儀式を伴わない新しい形式の直葬は、家族・親族から理解を得にくくトラブルの原因にもなり得ます。「成仏できない」「浮かばれない」等の声も多いでしょう。
また通夜・儀式等の宗教的儀式は、大切な家族を亡くしたご遺族にとって悲しみを癒すグリーフケアの役割も果たします。ひとつひとつの儀式をこなすことは、ご遺族にとって故人の死を受け入れる過程でもあるのです。
故人の葬送は一度きりですので直葬のデメリットを理解し、家族・親族と充分に話し合ったうえで決めると良いでしょう。
①菩提寺に納骨できない可能性
宗教的儀式を行わない直葬は、特に菩提寺を持つ家にとって注意が必要です。「菩提寺」とは家が代々属する寺院であり、家はその宗派に帰依し法要の一切を託します。先祖代々墓が特定の寺院墓地に建つ場合、墓地管理を担う寺院が菩提寺でしょう。
菩提寺のある家で先祖代々墓にご遺骨を埋葬したい場合、直葬では供養が充分ではないとして納骨を拒否される可能性があります。
※菩提寺を持つ家での対処法は、後ほど詳しく解説しますので最後までお読みください。
・「檀家」とは?かかる費用や義務、檀家になる・やめるには?檀家にならず法要はできる?
②ゆっくりお別れできない
直葬は約1時間~2時間で全ての葬送を済ませます。そのため通夜・葬儀・告別式にてお別れの儀式を行う一般的な葬儀と比べ、ゆっくりとお別れの時間を設けることができません。
少ない参列者で宗教的儀式に頼らずゆっくりと故人を弔いたいならば、家族葬・自由葬・ホテル葬等が適切です。目的に適した葬儀形式を選びましょう。
・【家族が亡くなったら】大阪で広がる家族葬。ホテル葬や自由葬6つのスタイル|永代供養ナビ
③葬祭費補助金が支給されない可能性
直葬で菩提寺とのトラブルを回避するには?
菩提寺があり先祖代々墓にご遺骨を納骨したい場合は、直葬では菩提寺から納骨を拒否される可能性があります。宗教的儀式を伴わない直葬は無宗教葬でもあるため、菩提寺の教えに倣っていないためです。
菩提寺の理解を得て直葬を執り行いたい場合は事前にご住職に相談し、丁重に事情を説明して理解を得る必要があります。
①戒名を依頼する
寺院墓地は特定の仏教宗派に倣い、ご遺骨を供養しなければなりません。仏教では人が亡くなるとお釈迦様の弟子として「戒名」を授かります。(生前にいただくこともあります。)
菩提寺をはじめとする寺院墓地にご遺骨を納骨したいならば、墓地管理者となる寺院のご住職に戒名を名付けてもらう流れが基本です。
現代はネットを中心に安い価格で戒名の名付けサービスを提供する業者もあります。けれども菩提寺で戒名をいただいていない故人のご遺骨は、納骨を拒否されるトラブルが多々ありますのでご注意ください。
②読経供養を依頼する
直葬は読経供養等の宗教的儀式を行いません。そのため菩提寺にご遺骨を納骨する際に「供養が充分ではない」として、納骨を拒否されるケースがあります。
菩提寺でご遺骨を納骨したいならば、読経供養を伴う火葬式・一日葬等を選びましょう。そして読経供養は菩提寺のご住職へ依頼します。
直葬により納骨拒否された場合の対処法
直葬により菩提寺に納骨を拒否された・寺院墓地で納骨ができない場合には、宗旨宗派不問の霊園(墓地)を選ぶと良いでしょう。
宗旨宗派不問の墓地は民営墓地(民間霊園)・公営墓地があります。自治体が運営する公営墓地は募集期間が決まっているので、時期が合わなければ民営墓地(民間霊園)を検討してみてはいかがでしょうか。
①合祀墓・永代供養墓
合祀墓・永代供養墓はご遺骨を骨壺や骨袋から取り出して、不特定多数のご遺骨と同じ場所に埋葬する葬送です。納骨時の費用のみで追加費用はなく、継承者を立てる必要がありません。
民営墓地(民間霊園)や公営墓地はもちろん、合祀墓・永代供養墓に埋葬する場合は、宗旨宗派不問とする寺院墓地が増えました。
費用相場も約3万円~30万円、平均費用は約3万円~10万円と安い費用で葬送できます。ただし一度埋葬すると再びご遺骨を取り出すことはできない点は、注意をしてください。
・永代供養墓はどんなお墓かわかりやすく解説!何年供養してくれる?選び方のポイントは?
②樹木葬
長い時間をかけて土に還ることを目的とした樹木葬も、宗旨宗派を問わない葬送です。合祀墓と同じく、寺院墓地でも樹木葬に対しては宗旨宗派不問とする墓地が多いでしょう。
樹木葬は墓石ではなく樹木を墓標とした葬送です。埋葬方法には個別型・合祀型があるので、選択肢によっては、埋葬後も個別の墓標に向かって参拝ができます。
埋葬方法や立地によって種類が豊富な樹木葬は選択肢が多い分、1柱につき約5万円~80万円と費用幅も広いでしょう。樹木葬も一度埋葬すると、再び遺骨を取り出すことができません。
③海洋散骨
海洋散骨とはご遺骨を海に撒いて自然に還す、樹木葬と同じ自然葬のひとつです。ご遺骨は自然に還されるため、宗旨宗派に倣う必要がありません。
ただし樹木葬と同様、海にご遺骨を撒く海洋散骨はご遺骨が手元に残らない点は注意が必要です。なかには分骨して一部を残すご遺族もいます。
海洋散骨は法的に違法ではありませんが、自治体で禁止する区域があったり、周辺住民への配慮が不可欠です。海洋散骨を行う際には、専門業者に依頼すると良いでしょう。
・散骨とは?誰でもできる?日本では違法?費用目安やメリット・デメリット、進め方を解説
④納骨堂
納骨堂はご遺骨を収蔵する屋内施設です。かつてはお墓が建つまでの一時的なご遺骨の安置場所でしたが、現在ではお墓に並ぶ葬送のひとつとなりました。納骨堂も宗旨宗派不問とする寺院が多い傾向です。
仏壇型・自動搬送型・ロッカー型等、利用者の希望によりさまざまなタイプが登場しています。都心部に多くアクセス環境の良さも魅力です。また永代供養が付いた納骨堂が一般的ですので、継承者を立てる必要もありません。
納骨堂の費用相場は約20万円~180万円と幅広いです。納骨堂の種類・ご遺骨の安置期間・ご遺骨の柱数によって費用相場が異なります。
・納骨堂で永代供養を行う費用はどれくらい?納骨堂5つの種類で違う費用相場を詳しく解説!
③手元供養
直葬後、そもそもご遺骨を納骨しない方法として手元供養があります。手元供養とはご遺骨を自宅で供養する方法です。
現代の手元供養ではご遺骨をパウダー状に粉骨して小さな骨壺に収めます。この他、ペンダントヘッド等にご遺骨を収めて持ち歩く手元供養もあるでしょう。
手元供養の費用相場は約3千円~80万円、ご遺骨をそのまま祀っても手元供養です。仏壇と仏具を揃えるならば費用もそれなりにかかります。手元供養は仏壇仏具店で相談をしてみましょう。
・【手元供養の体験談】娘の手元供養。娘の遺骨を納骨できないまま5年、分骨をして祭壇へ
まとめ:直葬は高齢化・核家族化のなかで広がりました
火葬場で約1時間~2時間ほどで終わる宗教的儀式のない直葬が広がる背景には、進む高齢化社会・核家族化があります。
本来であれば故人を手厚く供養したいご遺族も多いですが、喪主の高齢化により一般葬のような細やかな対応が難しい、核家族化により高齢の喪主をサポートする親族がいない事例も少なくありません。
直葬により手厚い供養ができなかったことを悔やむ声もありますが、葬送の後も故人を偲び思いを馳せるだけでも充分な供養になるでしょう。なかには直葬の後、ご遺骨を手元供養にして日々手厚く供養を行う人もいます。故人への供養の仕方は人によりさまざまです。
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