海洋散骨にかかる費用はどれくらい?デメリットや注意点は?勝手に散骨したらどうなる?
「海洋散骨をしたいけれど費用相場が分からない」
「海洋散骨で後悔しないプランを選びたい」
「海洋散骨ってトラブルにならない?」
「海洋散骨」は、粉骨した遺骨を海に撒いて自然に還す自然葬のひとつです。
かつては生前に海を愛した故人を偲ぶセレモニー要素が強い葬送でしたが、現代ではお墓がいらない葬送のひとつとして認知されるようになりました。
本記事を読むことで、将来的に後悔しない海洋散骨プラン・費用相場が分かります。後半では海洋散骨業者の選び方、散骨後の供養についても解説しているので、どうぞ最後までお読みください。
遺骨を海に撒く「海洋散骨」
◇「海洋散骨」とは遺骨を海に撒く自然葬・散骨のひとつです
散骨には海洋散骨の他、山林奥深くに遺骨を撒く「里山散骨」、ヘリコプター等で空から遺骨を撒く「空葬」、バルーンに粉骨した遺骨を入れて飛ばす「バルーン葬」等があります。
自然葬では樹木のふもとに遺骨を埋葬し土に還す「樹木葬」が最も有名です。
需要も高く現代では一般墓を抑えて、約40%以上のシェアを誇る葬送方法になりました。
①海洋散骨が広がる背景
海洋散骨をはじめとする自然葬は、人が亡くなって自然に還る自然回帰を目的としています。
1990年代にNPO法人「葬送の自由をすすめる会」が設立された頃には、生前に海を愛していた故人の葬送等、自然回帰を主な目的として海洋散骨を選択する人が大半でした。
けれども現代ではお墓の継承者がいないことから、遺骨の管理・供養のない海洋散骨をはじめとした自然葬を選ぶ人々が増えました。
また終活の広がりにより生前に自分亡き後の選択をする高齢者が増え、「子や孫にお墓の負担を増やしたくない」と海洋散骨を選ぶケースが増えています。
海洋散骨の注意点
◇海洋散骨は法的に違法ではありません
養殖場等でない限り、海には所有者がいないため海洋散骨は個人で散骨することができます。けれども遺骨を散骨するため、周辺住民の暮らしに迷惑をかけない配慮が必要です。
地域住民・海洋周辺地域の土地所有者、漁業関係者等への配慮はもちろん、海洋散骨にあたり宗教的感情等から不快に思う人々がいることも理解して海洋散骨を進めなければなりません。
また厚生労働省では散骨事業者に向けガイドラインを発行しています。厚生労働省のガイドライン、及び地方公共団体の条例を遵守して、海洋散骨を進めましょう。
下記より最も重要な海洋散骨における注意点をご紹介します。
・令和2年厚生労働省「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」
①海洋散骨は沖合いで行う
◇海洋散骨は生活圏から、一定の距離以上離れた沖合いで行います
海洋散骨は海であればどこでも良い訳ではありません。
海洋散骨業者は自治体や周辺住民に許可を得た、誰にも迷惑がかからない海の沖合いまで船を出すため、基本的には業者に依頼すると安心です。
海洋散骨において特に避けるべき海域は、海水浴場・養殖場の周辺・漁業権問題のある川や沼・船の航路上等があります。
[豆知識]川での海洋散骨は?
川での散骨も日本では法律で直接的に規制する記述はなく、粉骨したうえでマナーある範囲内での散骨は可能です。
けれども他人の私有地にある川・自治体の規制がある等、トラブルの種にもなりかねません。故人とゆかりの深い川等が想定できますが、でき得る限り川での散骨は避けた方が良いでしょう。
②遺骨は粉骨する
◇遺骨は視認できない程度まで粉骨します
一般の人々が遺骨と視認できないよう、焼骨後に約2mm以下のパウダー状を目安に粉骨し海洋散骨を行わなけれななりません。
自分で遺骨の粉骨を行っても法的に問題はありませんが、精神衛生上おすすめできません。海洋散骨業者・遺骨のメンテナンス業者で遺骨の粉骨を請け負ってくれます。
③自然環境に配慮する
日本の火葬場は信頼できますが、充分に火葬されていない遺骨は自然環境を害する恐れがあるため充分に焼骨し、パウダー状に粉骨された遺骨を撒きます。
またご遺族が自然環境について注意をしたいポイントは、遺骨と一緒に撒く副葬品です。海に還らずゴミになるものは撒きません。
貴金属・セロファン・リボン等の水溶性ではない副葬品は避け、花びら(茎等は取る)等を遺骨とともに撒きます。飲み物・食べ物も海に還りますが節度を持って撒きましょう。
勝手に海に散骨するとどうなる?
海洋散骨のメリット
海洋散骨はお墓・納骨堂等の遺骨供養と比べて、ご遺族の経済的負担が大幅に軽減する点が大きなメリットです。将来的にも年間管理料等、定期的に支払う費用がありません。
故人が生前に海を愛していた方であれば、ご遺族は海洋散骨セレモニーを通じて故人を偲び供養することができるため、開放的な自然に囲まれながら悲しみが癒される側面もあります。
①広く自由な海に還る
海洋散骨はお墓のいらない遺骨供養のひとつです。お墓のいらない遺骨供養では海洋散骨の他に、納骨堂・合祀墓(合葬墓)等の永代供養があるでしょう。
納骨堂や合祀墓では「小さいスペースに納められて窮屈そう」「他の遺骨と一緒に埋葬される」等のご遺族の想いを散見します。
けれども海洋散骨は広い海へ散骨するため開放的な遺骨供養ができます。生前に自由を愛した故人を想い、ご遺族が海洋散骨を選ぶケースも多いです。
②ご遺族の負担がない
お墓に納骨すると維持管理の負担が子ども・孫の代まで残ります。
お墓を残すことで、継承者は定期的なお墓掃除やメンテナンス、墓地へ支払う年間管理料が毎年約5千円~2万円ほどかかるでしょう。
さらに孫の代になるとお墓を残すための継承者問題への不安も残ります。
次の継承者がいない場合、墓主は無縁墓を避けなければなりません。墓じまい等の決断をしなければならないリスクもあるでしょう。
・お墓の継承とは?継承者の順位とは、誰がなるの?継承者の役割とは?継承の手続きや費用
③費用がかからない
お墓への納骨はもちろんですが、お墓のいらない納骨堂であっても、遺骨が残る個別安置期間は年間管理料等の経済的負担がかかるでしょう。
海洋散骨では遺骨が海に撒かれて自然に還るため、遺骨の維持管理にかかる費用はかかりません。セレモニー時の初期費用のみですので、生前契約を済ませれば遺されたご遺族に、経済的負担がかかる心配が軽減されます。
・納骨堂と永代供養の違いとは?永代供養墓(合祀墓)や樹木葬と納骨堂の3つの違いを解説
海洋散骨のデメリット
海洋散骨は日本において新しい遺骨供養の方法です。
お墓を代々継承してご先祖様を崇拝する日本の価値観において、自然回帰の考え方を起源とする海洋散骨は、周囲の人々に理解されない可能性もあるでしょう。
故人の遺骨供養はご遺族が決めて問題はありませんが、家族・親族・周囲の人々にも報告する・説明をする等の配慮は必要になります。
①お墓参りができない
遺骨が残らない海洋散骨はお墓参りができません。
お墓のない遺骨供養でも永代供養墓・樹木葬等は墓標が残りますが、海洋散骨は海に向かって故人を偲び供養します。
ただお墓参りができないデメリットを解消するため、氏名を掘ったプレート等の「メモリアルグッズ」を提供する海洋散骨業者は多いです。
この他、故人の氏名を彫刻する墓碑・定期的に海洋散骨スポットへ船を出す「メモリアルクルーズ」を提供する海洋散骨業者もあるため業者選びもポイントです。
②遺骨が手元に残らない
海洋散骨は海に遺骨を撒く供養方法なので、ご遺族の手元に遺骨は残りません。後々後悔をしても対策がないため注意をしましょう。
海洋散骨を検討しているものの、遺骨を手元に残したい場合は分骨の方法もあります。「分骨」とは遺骨を分けて供養する方法です。
③家族・親族の理解が必要
海洋散骨は新しい遺骨供養の方法なので、家族や親族から理解を得られないこともあるでしょう。日本では古くからお墓参りの風習があったため、家族・親族への説得が必要になる可能性は否めません。
けれども周囲への報告をしていない・周囲からの理解を得られないまま海洋散骨を済ませてしまうと、後々トラブルが起きても遺骨が手元にないため対応ができません。
将来的に深い溝にならぬよう、海洋散骨にあたり家族・親族への報告や説得は不可欠です。
海洋散骨の種類と費用
◇海洋散骨の費用は約2万円~50万円と幅広いです
海洋散骨にはセレモニー要素もあります。
葬儀の代わりとして家族・親族や故人と生前に親しかった知人友人が集まり、故人を偲びながら遺骨を撒く海洋散骨では、希望があるほど費用も高くなるでしょう。
一方でお墓のいらない遺骨供養のひとつの形として、業者に遺骨を委託し海洋散骨を行うケースもあります。この場合は海洋散骨の費用も安い傾向です。
①チャーター海洋散骨
約30万円~50万円がチャーター海洋散骨の費用相場です。
「チャーター海洋散骨」とは、故人と親しい家族・親族・知人友人のみが船をチャーターし、海洋散骨を行う方法です。
海洋散骨業者が扱う船の規模によりますが、多くはヨット・ボート等を利用するため、10人~15人程の人数に留められます。
②合同海洋散骨
約7万円~25万円が合同海洋散骨の費用相場です。
「合同海洋散骨」とは、複数のご遺族が乗り合わせて海洋散骨する方法で、同乗できるご遺族の人数は2人~5人程に制限されます。
他のご遺族とともに海洋散骨スポットまで行き、スタッフの進行により遺骨を散布する流れが多いでしょう。
③委託海洋散骨
約2万円~10万円・平均的には約4万円~7万円が委託海洋散骨の費用相場です。「委託海洋散骨」は海洋散骨業者に委託するため、ご遺族は散骨時に船に同乗はできません。
委託海洋散骨の場合、遠方から遺骨を郵送するプランもあります。遺骨の郵送方法は業者で指定されますが、基本としてゆうパックのみ受け付けてくれるのでご注意ください。
海洋散骨の様子を撮影した動画が送られる、動画配信に参加できる業者もあります。足腰が弱いなど事情があり海洋散骨に参加できないご遺族は、一考されてはいかがでしょうか。
海洋散骨では粉骨を行う
厚生労働省のガイドラインにより、海洋散骨では遺骨を2mm以下のパウダー状に粉骨しなければなりません。焼骨した遺骨をご遺族が粉骨することもできますが、精神衛生上おすすめできません。
海洋散骨業者に依頼すると粉骨作業も請け負ってくれるでしょう。海洋散骨前に粉骨をする場合、パック料金として提示される業者が一般的です。
単体で遺骨の粉骨を依頼する場合の費用目安は1柱で約3万円~5万円、遺骨の大きさにもよります。また墓じまいで取り出した遺骨の場合、粉骨前に洗骨・乾燥などの工程を経るため、追加料金がかかる可能性もあるでしょう。
①粉骨した残りの遺骨
海洋散骨にあたり遺骨を粉骨しているため、分骨した遺骨の「手元供養」が増えています。ご遺族は毎日の暮らしのなかで供養ができるでしょう。
「手元供養」は遺骨を身近で供養する方法で、自宅に遺骨を祀ったステージ(祭壇)を設ける自宅供養の他、ペンダントトップ等のアクセサリーに遺骨を納めて持ち歩く方法も人気です。
アクセサリーであれば約3千円~の容器もある等、予算に合わせて仏具を揃えるため費用がかからないメリットもあります。この他、納骨堂・お墓等へ納骨する方法でも問題はありません。
海洋散骨後の供養方法
海洋散骨では分骨しない限り、遺骨は手元に残りません。けれども海洋散骨後も、ご遺族が納得できる供養が実現するよう、さまざまなサービスを提供する業者も増えています。
海洋散骨後に故人の氏名・海洋散骨の日付を刻印したメモリアルプレート等、メモリアルグッズを提供する業者が多くあります。
また霊園が提供する海洋散骨業者のなかには、霊園内の墓碑に故人の氏名を彫刻してくれるサービスも見受けるため、それぞれのサービス内容を確認して選びましょう。
①メモリアルクルーズ
海洋散骨後の供養サービスのなかでも「メモリアルクルーズ」は定評があります。
「メモリアルクルーズ」とは、海洋散骨スポットまで定期的に船を出すサービスで、ご遺族は予約を取りクルーズに参加できる供養方法です。
月命日・年忌法要等でメモリアルクルーズを利用し、海洋散骨スポットで献花を捧げることができます。
②遺骨なしの年忌法要
海洋散骨により遺骨が手元になくなっても、別の場所で年忌法要を執り行うことも可能です。葬儀社や寺院・霊園、最近ではインターネットでも僧侶を紹介してくれます。
また遺骨がなくても仏壇を自宅に置き、位牌を祀ることに問題はありません。自宅で御仏前法要を執り行う他、セレモニーホールの利用を検討しても良いでしょう。
・大阪では永代供養の後も法要やお墓参りはできる?納骨式から年忌法要7つのおすすめ記事
まとめ:海洋散骨は業者選びがポイント
お墓のない葬送・遺骨が残らない供養が広がる今、海に還る海洋散骨は新しい時代の葬送として認知されるようになりました。
法的にも違法ではありませんが厚生労働省によるガイドラインも設けられ、厳しい規制を設ける自治体もあるため、海洋散骨業者に依頼することが最も安全です。
海洋散骨業者には代理店・専門業者等があるため、業者の見極めも重要なポイントとなります。実店舗の確認はもちろん、料金プランが明瞭・実績・散骨後の供養・スケジュールの柔軟性、等を複数の海洋散骨業者から比較検討し、納得のできる業者に相談しましょう。
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