家じまい・墓じまい・実家じまいの手順とは?掛かる期間や費用は?放置で起きる問題は?
・家じまい、墓じまいとは?
・家じまいと実家じまいの違いは?
・家じまいや墓じまいを放置するとどうなる?
・家じまい、墓じまいの手順は?
・家じまい、墓じまいに掛かる費用や時間は?
家じまい、墓じまいとは、将来空き家になるであろう家を売却すること、継承者がいないであろうお墓を閉じることです。
「残された家族に迷惑を掛けない」と始める終活では、家じまいや墓じまいが活動の主軸になる人も増えました。
本記事を読むことで、家じまい、墓じまいの手順や注意点、掛かる費用の目安、期間などが分かります。
家じまい、墓じまいとは
◇家じまい、墓じまいとは、家を売却したりお墓を閉じることです
「家じまい」は、終活を通して家を売却し、身軽な賃貸物件や老人ホームなどへ引っ越すことを差します。
一方「墓じまい」とは、お墓を閉じて遺骨を取り出し、合葬墓などの永代供養墓に埋葬して、お墓を撤去することです。
<家じまい・墓じまいとは> | ||
[種類] | [内容] | [目的] |
①家じまい | ・家の売却 | ・将来空き家になるのを防ぐため |
②墓じまい | ・お墓の撤去 | ・将来無縁仏になるのを防ぐため |
いずれも共通するのは目的で、自分亡き後、実家を相続した人、お墓を継承した人が、定期的な掃除や維持管理費など、経済的・精神的・肉体的負担を強いられることを防ぐことにあります。
・【大阪のお墓】先祖代々墓を継承すると何が大変?継承を決める前に押さえたい7つの記事
家じまいと実家じまいの違いは?
◇「実家じまい」とは、空き家になった実家を売却することです
実家じまいは、すでに両親が亡くなり空き家になった実家を相続した後、荷物を整理して売却することを差します。
自分が住まなくなって何十年と経った実家の家財を整理することは大変です。
さらに高齢になると掃除も難しくなるため、実家じまいは子どもにとって負担の大きな作業でしょう。
<家じまいと実家じまいの違い> | ||
[種類] | [目的] | [問題] |
①家じまい ・自分の家を売却 |
・相続の負担を減らす ・身軽になる |
・家の整理 ・新しい家が必要 ・引っ越しのタイミング |
②実家じまい ・両親の家を売却 |
・実家が空き家 ・築年数の古い家 ・維持管理の負担 ・近隣の苦情対応 |
・家の解体 ・土地の処分 ・相続税 ・費用面の負担 |
子どもの頃の思い出が詰まった実家を、子ども自身が売却する実家じまいは、精神的な負担も大きく、決断までに時間が掛かる人も多いです。
けれども実家は相続放棄をしたとしても、維持管理責任が伴います。
そのため将来的に家に住む子どもがおらず空き家になると判断した時、終活を通して生前に家じまいを済ませる人が増えました。
・【不動産の相続】実家を相続したけどいらない時2つの選択肢。相続放棄をしたいケースまで
家じまいや墓じまいをしないとどうなる?
◇相続・継承した人に、経済的・精神的負担が掛かります
家じまい、墓じまいをせずに相続が発生すると、相続人である子ども達が相続・継承して対処しなければなりません。
相続放棄をしたとしても空き家は維持管理責任が生じますし、お墓は継承者がいないままだと、無縁仏になってしまいます。
<空き家の相続で掛かる負担> ●相続税以外で、維持管理に掛かる費用項目 |
|
[税金] | |
①固定資産税 | |
②都市計画税 | |
[維持管理費] | |
③修繕費 | ・メンテナンス ・定期的な掃除 ・大幅修繕 |
④維持管理費 | ・交通費 ・草刈り費用など ・定期的な通風 ・防犯対策 |
⑤保険料 | ・火災保険料 |
⑥その他出費 | ・老朽化による修繕 ・雨風対策 ・侵入者による損害 …など。 |
住まない空き家になった家を相続すると、維持管理が大変です。
固定資産税や都市計画税はもちろんですが、それ以上に、日ごろ人が住んでいない家に訪れる侵入者や、周辺住民からの苦情もあります。
墓じまいをしないとどうなる?
◇墓じまいをしないと、無縁仏になるリスクがあるでしょう
将来的に継承者が見込めないお墓をそのままにしておくと、お墓を継承した子どもが経済的・体力的負担を強いられます。
誰も継承しなかった場合には、そのまま放置されて朽ちていく墓地もありますが、撤去されて無縁仏として供養される流れが多いです。
<お墓の継承で掛かる負担> ●お墓の継承に相続税は掛かりません |
|
[費用負担] | |
①年間管理料 | ・約5千円~3万円/年間 |
②墓石の維持費 | ・約5千円~3万円/5年 |
③定期的なお墓掃除 | ・約1~2万円/1回 (お墓参り代行利用) |
④大規模修繕 | ・約10万円~30万円/5年~10年 |
⑤お布施 (法要/寺院墓地) |
・約3千円~30万円/1回のお布施 |
[墓主の負担] |
|
⑥定期的な掃除 | ・自分で行う(交通費) ・掃除代行業者へ依頼 |
⑦法要の主催 | ・年忌法要 ・弔い上げ |
⑧菩提寺との付き合い | ・お布施 ・法会の参加 (お布施代) |
お墓の継承は相続税が掛かりません。
空き家になった実家ほど、維持管理にあたり固定資産税などのランニングコストは掛かりませんが、特に先祖代々墓などの継承は、精神的負担が大きいです。
お墓を継承することで年忌法要など、定期的な法要の主催を任されることになる他、次世代の継承者探しへの負担も産まれるでしょう。
お墓の継承者トラブル
◇お墓の継承者は、原則として1人です
お墓や仏壇など、ご先祖様や故人の供養にまつわる祭祀財産を継承する人は、原則1人と定められています。
そのためお墓を継承した1人が、維持管理や法要の負担を背負ってしまいがちです。
その昔は「長男が家督を継ぐ」慣習があったため、長男が家の財産とともにお墓も継承する相続が多くありました。
けれども今では、お墓を継承したからと言って、遺産が多く相続できる訳ではありません。
<増えるお墓の継承問題> | |
[継承の形] | [相続の形] |
[昔のお墓継承] | |
●家督相続 | ・長男(本家)が家を継ぐ ・長男(本家)がお墓を継承 |
●本家制度 | ・長男(本家)が家の財産を継承 ・長男(本家)が分家を支援 |
[現代のお墓継承] |
|
●祭祀財産の継承 | ・1人がお墓を継承 (共同相続は不可) ・兄弟姉妹誰でも良い |
●分割相続 | ・遺産は兄弟姉妹で分割 [お墓は祭祀財産] ・相続財産に入らない ・相続税が加算されない |
お墓を継承すると相続税こそ掛かりませんが、年間管理料や維持管理など、さまざまな負担が伴います。
しかも相続財産のように共同相続ができないので、口約束はあっても、結果的に兄弟姉妹の1人が大きな負担を担うリスクも懸念されるでしょう。
一方で昔の家督相続制度は廃止され、お墓を継承しても、相続財産は平等で分割されるため、利益を得ることはできません。
・【大阪の相続】実家とお墓を兄弟で一緒に相続・継承はできる?トラブルになるってホント?
家じまい、墓じまいの手順は?
◇家じまいは、最初に不動産会社に査定を依頼します
家じまいの第一段階は、家を売却した後の暮らしを決めることです。
ただ「高級老人ホームに入りたい!」と思っても、予算がなければ成り立ちません。
不動産会社に査定依頼をして、現在の家がどれほどの価値があるのか、時価を確認すると良いでしょう。
<家じまいの手順> | |
①不動産会社に査定依頼 | ・時価を確認 ・複数の不動産会社に相談 ・比較検討する |
②家じまい後の暮らしを検討 | ・賃貸アパート ・老人ホーム ・子どもと同居 …など。 |
③残したい物を分ける | ・骨董品 ・思い出の品 ・重要書類 ※コンパクトにする |
④荷物を整理・処分 | ・家族に協力を仰ぐ ・整理業者に依頼 ・不用品回収業者へ依頼 ※コンパクトにする |
⑤家の処分方法を決める | ・不動産仲介 (仲介してもらい売却) ・不動産買取 (買い取ってもらう) ・土地活用 (家を解体し土地のみ売却) |
⑥引っ越し | ・売却後の家を決めておく [ライフラインの解約] ・電気、ガス ・インターネット ・定期宅配 …など。 |
⑦家の売却 |
高齢になってからの家じまいで注意する点は、売却後の家の確保と、高齢者の賃貸契約です。
特に65歳以上の賃貸契約では、孤独死リスクから賃貸契約を断られてしまうこともあります。
保証人が付くことで契約できる物件もありますが、予め売却後の住まいを決めてから、売却を進めると安心です。
・【不動産の相続】相続した実家が売れない!買い手がつくための5つの対策とは
墓じまいの手順とは
◇遺骨の納骨先を決めて、お墓を撤去します
墓じまいではお墓を撤去しますが、その前に納骨されている遺骨を取り出さなくてはなりません。
取り出した遺骨を放置する訳にはいきませんから(遺棄罪になります)、取り出した遺骨は合葬墓など、継承者を必要としない永代供養を選びます。
墓じまいでは取り出した遺骨の埋葬先を決め、行政窓口で「改葬手続き」を取らなければなりません。
<墓じまいの手順とは> | |
①現在の墓地管理者に相談をする | ・墓じまいの事情を話す ・菩提寺であればお布施を渡す ・「埋葬(収蔵)証明書」をもらう |
②新しい埋葬先を決める | ・資料を取り相見積もり ・比較検討して契約 ・「受入許可証」をもらう |
③行政手続き | ●改葬許可申請書の提出 ・埋葬(収蔵)証明書 ・受入許可証 ●改葬許可証の発行 |
④遺骨の取り出し | ・石材業者に依頼 ・閉眼供養 (僧侶に依頼) ・遺骨の取り出し |
⑤墓石の撤去 | ・石材業者に依頼 ・墓石の解体 ・墓石の撤去 |
⑥遺骨の埋葬(収蔵) | ・納骨式 (必要があれば)開眼供養 |
現代、永代供養は一般墓でも付いています。
樹木葬や海洋散骨などの自然葬を取り扱う業者も増えました。
ひと昔前の墓じまいでは、取り出した遺骨は合葬墓が一般的でしたが、現代は自然葬や納骨堂、永代供養付きの個人墓まで、選択肢は広がっています。
また「墓じまいパック」を提供する業者も増えているので、利用すると便利です。
家じまいや墓じまいに掛かる費用、期間は?
◇家じまいや墓じまいに掛かる期間は、約3ヶ月~半年が平均的です
家じまいや墓じまいでは、一般的に約3ヶ月~半年が平均的な期間ですが、家じまいでは荷物の量や処分方法によって、年単位の長期戦になる人もいます。
掛かる費用も、引っ越し先や荷物の整理を業者に頼むか否か、その範囲によっても、費用幅が広いでしょう。
下記は戸建ての家を解体し売却する際の一例です。
<家じまいに掛かる費用> ●戸建ての家を解体 |
|
[引っ越し] | |
①荷物整理(業者に依頼) | ・約10万円 |
②賃貸契約(転居先) | ・約30万円 |
③引っ越し業者 | ・約10万円 |
[家の処分] | |
④解体作業 | ・約100万円 |
⑤仲介手数料(不動産会社) | ・売却価格×3% |
⑥測量 | ・約20万円 |
[税金] | |
⑦印紙税 | ・約8,000円 |
⑧譲渡所得税 |
譲渡所得税は所有期間が5年以上か以下かで計算が変わります。
終活で家じまいをする際は、築年数20年以上も多いでしょう。
<家じまいに掛かる費用> | |
[所有期間5年内] | ・課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%) |
[所有期間5年以上] | ・課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%) |
家じまいの多くは住み替えであり、売却時にすでに建物自体に資産価値のない築20年以上の物件も多いため、あまり利益が生じない売却も多いです。
けれども利益が生じた時には、将来的な相続税対策として、非課税枠を利用した生前贈与なども検討すると良いでしょう。
墓じまいに掛かる費用は?
◇墓じまいでは、遺骨の納骨先で費用幅が大きいです
墓じまいでは、お墓の撤去費用自体は約20万円~50万円、行政手続きも高くて2千円で済みますが、「取り出した遺骨をどのように扱うか」によって、約300万円以上にもなり得ます。
<墓じまいに掛かる費用> | |
[既存墓地] | |
①離檀料 | ・約3万円~10万円 |
②お布施(閉眼供養) | ・約3万円~30万円 |
③遺骨の取り出し | ・約3万円~30万円 |
④お墓の返還 | ・約10万円~50万円 |
[行政手続き] | |
⑤改葬許可証 | ・約300円~2千円 |
[新しい納骨先] | |
⑥お布施(納骨式) | ・約3万円~6万円 |
⑦永代供養 | ・約10万円~250万円 |
永代供養とは、家族に代わり管理者が永代に渡って遺骨の管理や供養を担ってくれるもので、永代供養により継承者を立てる必要がありません。
けれど契約した一定年数が過ぎ、更新されない場合は、合葬墓に他の遺骨とともに合祀され、共同供養されます。
家じまいと墓じまいのタイミング
◇家じまいは、将来空き家になるだろうと判断したタイミングが多いです
家じまいは、子どもが遠方で居を構えるなど、将来的に実家が空き家になるだろうと判断したタイミングが多いでしょう。
・建物の劣化
・老人ホームへの入居
が多いのですが、相続対策としてもうひとつの家じまいのタイミングがあります。
それが配偶者の片方が亡くなり、ひとり暮らしになったタイミングです。
配偶者が相続する一次相続と比べ、子どもが相続する二次相続では相続税も高くなるため「相続前に実家を手放そう」との家じまいが増えました。
<家じまいの相続対策> | |
[一次相続] | ●配偶者が相続 ・配偶者へ優遇措置がある |
[二次相続] | ●子どもが相続 ・相続税が割高になる |
また夫婦二人暮らしと違い、高齢者のひとり暮らしは何かと危険も伴います。
そのためシニアマンションへの引っ越しや、掃除の手間暇が少ない、コンパクトな賃貸マンションへの引っ越しを希望する人も増えました。
まとめ:生前に家じまい・墓じまいを済ませる人が増えています
ひと昔前のように、子どもが代々実家に住み、お墓を守る時代ではなくなりました。
そこで築年数の古い家を残しても、住む後継者がおらず、空き家のボロ家になるケースは少なくありません。
相続時に古くなった実家を国が引き取る制度もありますが、子どもや孫に余計な負担を掛けないよう、終活の広がりをきっかけにして、生前に不安材料の芽を摘み取る人が増えました。
家じまい、墓じまいをすることで、子ども達が維持管理による負担を軽減できます。
お電話でも受け付けております
お電話でも受け付けております