
【お墓Q&A】母のお墓を兄弟3人で協力して建てた場合、お墓の権利関係はどうなるの?

兄弟で建てたお墓の権利関係についての相談です。
ひとり親だった母が亡くなり、3人兄弟がお金を出し合ってお墓を建てました。
将来的には兄弟それぞれがそのお墓に入るつもりで、ひとり80万円、合計で240万円の現代では比較的大きなお墓を建てています。
相談者は三男の山田明夫(仮名)さん33歳です。
兄弟3人、平等にお金を出し合って建てたお墓の権利は、どのようになるのでしょうか。
【お墓Q&A】母のお墓を兄弟3人で協力して建てた場合、お墓の権利関係はどうなるの?

お墓の権利は基本的に一人

お墓の権利は後々のトラブルを避けるため、基本的に共有者の発想はありません。
昔ながらの慣習では、一般的に長兄がお墓の権利を持っているのではないでしょうか。
この場合、誰がお墓の権利を持っているかは、その墓地の購入から新しく建てたお墓であるのか、それとももともとあるお墓を建て直したのかで、変わります。
(1)墓地から新しく建てたお墓
(2)昔からあるお墓の建て直し
昔からある墓地にお墓を建て直した場合、なかには集落入合にある集合墓地や、古い寺院墓地に建つお墓の場合、昔ながらの慣習に従い、現代の霊園や寺院の規則とは例外のものもあるでしょう。
(1)墓地から新しく建てたお墓
墓地から新しく建てたお墓の権利は、契約時の契約者です。
現代の霊園は規約もしっかりとしているため、お墓の権利者となる名義人もハッキリとしているでしょう。
昔からの慣習として、両親のお墓を管理継承するのは長兄であることが多いので、長兄が代表として契約を進めるでしょうが、これからお墓を購入するなら、契約前に相談をすると、後々の兄弟間トラブルも回避できます。
(2)昔からあるお墓の建て直し
昔からあるお墓の建て直しであれば、その墓地は親の代から継承されてきたものでしょう。
この場合、両親が亡くなった時の相続時、誰がお墓の権利を継承したのかで分かります。
●お墓や墓地の権利を継承する者を「祭祀継承者(さいしけいしょうしゃ)」と言いますが、法的にトラブルを避けるため、祭祀継承者が原則1人です。
ちなみにお墓の権利を継承することは、相続ではありません。
お墓は故人を供養するために必要な「祭祀財産(さいしざいさん)」であり、一般的な相続財産とは別の扱いで、「相続」ではなく「継承」です。
・祭祀財産に相続税は掛からない
・祭祀財産は遺産分割の対象ではない
つまりお墓の権利を継承したからと言って、その他の相続財産の遺産分割に影響しません。
そしてお墓の権利を継承しても、そこに相続税は掛からない訳です。
ちなみにこれは他の「祭祀財産」であるお仏壇やそれに伴う仏具などにも当てはまります。
(ただし一部、高級な御本尊など、価値があると認められたものは相続財産に入ることもあるでしょう。)
※お墓の継承と相続財産に関しては下記をご参照ください。
・【大阪の相続】実家とお墓を兄弟で一緒に相続・継承はできる?トラブルになるってホント?
お墓を建てる墓地の権利は「永代使用権」
ちなみにお墓を建てる際、墓地の権利は「永代使用権」を購入します。
「永代使用権」とは、永代に渡りその墓地を使用できる権利です。
そのため下記のような事柄はできません。
・第三者への墓地の譲渡
・第三者へ墓地の貸し借り
永代使用権はあくまでも墓地を永代に渡り使用する権利で、墓地の所有権は霊園(寺院)側にあります。
これは墓地全体を管理維持するための必要性により、法的な言葉ではないものの、昔ながらの慣習として、一般的になったものです。
家の裏山に昔から建てている先祖代々墓など、戦前戦後の昔からある個人所有の「個人墓地」など、一部例外はありますが、現代建つお墓のほとんどは、民間霊園や寺院墓地、公営墓地などに建つため、永代使用権を購入しているでしょう。
※永代使用権について、詳しくは別記事でお伝えしています。
・【お墓Q&A】墓地の権利はどんな仕組みになっているの?「永代使用権」はどんな権利?
兄弟間での取り決めは、また別
ただしこれは、お墓を建てるうえでの権利であり、霊園(寺院)との契約上で定められたものです。
そのため兄弟間での取り決めは自由でしょう。
・将来的にお墓の権利を買い取ってもらう
・将来的に自分や家族も、そのお墓に入る
…などなどの約束事はできます。
今回は兄弟みんなが、そのお墓に入る予定でお金を出し合いましたが、一般的に兄弟は分家になるため、将来的には別のお墓に入るかもしれません。
この場合は今回出したお墓の予算を、権利者である(長兄など)に買い取ってもらう形で返してもらうなどの取り決めができるでしょう。
また、こちらは下記項目で詳しくお伝えしますが、本来は分家である兄弟であっても、同じお墓に入ることはできます。
将来、兄弟がお墓に入る権利はある?

今回の相談で気に掛かる点が、兄弟が全員、将来的に両親のお墓に入るとして、お金を出し合っている点です。
兄弟それぞれの状況は相談で詳しく述べられていませんが、現在は独身でもゆくゆくは結婚をして家庭を持つことが多いでしょう。
この場合、昔ながらの慣習では、長兄が本家となり両親のお墓に入り、他の兄弟は「分家」として、新しくお墓を建てることが多いためです。
・お墓の権利者とその家族がお墓に入る
・兄弟やその家族が、お墓に入ることは想定していない
(兄弟は「分家」と言う考え方)
…ただこれは、あくまでも霊園(寺院)の規則や慣習によるもので、親族や縁故者を認める霊園も多く見受けます。
お墓に入る人や範囲は、法律上で定められているものではありません。
お墓の権利者に準ずる
ただ霊園(寺院)など墓地の管理者側は、お墓の権利者が兄弟の埋葬(埋蔵)を希望した場合、何かしら正当な理由がなければ拒否ができない、とされています。
そのため複数のお墓の権利者(墓主)が存在することはないものの、ひとりのお墓の権利者の希望により、複数の家族が入ることは不可能ではありません。
・お墓の権利者の許可のもと
・兄弟や親族の入墓はできる
・お墓の共同権利はほとんどない
…と言うことになります。
例えば、生涯独身だった兄弟が、長兄がお墓の権利を持つ墓地に埋葬(埋蔵)されるケースは多くあるでしょう。
※全くの他人同士で入るお墓もあります。
・【大阪の終活】永代供養墓の登場で「墓友(はかとも)」急増!血筋にこだわらないお墓とは
祭祀継承者の負担

今回とは少し違う例ですが、兄弟でお墓の権利を主張したり、両親が入るお墓の維持管理、継承に異議を唱えることは多くあります。
例えば、長兄がお墓の権利を継承して墓守を続けてきたものの、お墓の維持管理が難しくなり、墓じまいを検討した場合などです。
・お墓の維持管理が難しくなった
・お墓の権利継承で負担を掛けたくない
(継承者がいない)
・霊園への年間管理料の支払いが難しくなった
…などなどの理由が聞こえます。
例えば、転勤などで住まいがお墓から遠方になった場合や、子どもが女性ばかりでお墓の権利継承には忍びない…、などの相談もありました。
※墓じまいに関しては別記事に詳しいです。
・【墓じまいの手続きまとめ】スムーズに進める7つのステップ|取り出した遺骨の永代供養
お墓は建てるばかりではない
確かにお墓を建てる時は資金も掛かり、開眼供養など法要事も執り行うなど、大変です。
けれどもさらに大変なのは、お墓を建ててから維持管理をしていくことでしょう。
●一般的に今回の場合、3人兄弟で建てたお墓の権利者は長兄になることが多いですが、墓主になると言うことは、維持管理の負担や責任も伴います。
将来的に3人兄弟で建てたお墓に全員が入るのであれば、お墓を建てた後の権利ばかりではなく、霊園に払う年間管理料や定期的なお墓の掃除、維持管理などの負担にも配慮し、分担して進めると良いでしょう。
※お墓の継承者に掛かる負担に関しては、下記に詳しいです。
・大阪でお墓の継承者に!経済的な負担はどれくらい?年間管理料やメンテナンスコスト、法要まで解説
最後に
以上、母の死をきっかけに兄弟でお金を出し合って建てたお墓の権利関係について、相談に答える形でお伝えしました。
今回は兄弟で80万円ずつお金を出し合い、240万円の予算で比較的大きなお墓を建てたとのことですが、一般社団法人全国優良石材店の会(通称「全優石」)が2019年に行ったアンケートによると、平均的な墓石購入価格は160.7万円でした。
2000年以前、ひと昔前の日本では、建墓費用が300万円以上とも言われていましたから、この頃に比べるとお墓を建てる感覚も大きく変化したのではないでしょうか。
実際に2019年度のアンケートでも、過去10年間で最も最安値を記録しました。
今ではお墓を持たない樹木葬や自然葬、おひとりさまでも入墓できる永代供養付きで60万円や100万円ほどのコンパクトなお墓も見受けます。
この他、納骨堂も昔のように「一時期的な遺骨の安置場所」ではなく、葬送のひとつの形にもなっています。
※永代供養付きの樹木葬については、別記事に詳しいです。
・【樹木葬の選び方】自然(土)に還るシンボルツリー型樹木葬|仕組みで選ぶ6つのポイント
まとめ
兄弟3人で建てたお墓の権利はどうなる?
●お墓の権利は基本的に一人
・新しいお墓は契約時の名義人
・古いお墓は祭祀継承者
●兄弟間の取り決めは別
・将来的に兄弟も入る
・お墓の権利を買い取ってもらう
●お墓に入る人は墓主に準ずる
・墓主の許可があれば兄弟も入墓できる
・墓主が希望すれば霊園側は拒否できない
(正当な理由がない限り)
●墓主の負担
・年間管理料の支払い
・お墓の維持管理(墓守)
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