
【樹木葬の体験談④】母の遺言は自然葬なのに親族からは猛反対!頼りの父は落ち込んで…

生前に自分の死後の手続きを行う「終活(しゅうかつ)」が広がる昨今では、母(父)の遺言により自然葬を行うケースが増えましたよね。
けれども母(父)の遺言により自然葬を行いたくても、「親族が反対して故人の遺志通りには進められない…」と相談に来るケースは少なくありません。
・母(父)の遺言通り自然葬がしたい
・親族からの反対がある時の解決法は?
・喪主が落ち込んで、進まない時はどうする?
今回は、母が遺言で自然葬を希望したものの、親族の反対や父の落ち込みで思うように勧められなかった、森口瑤子さん(26歳・仮名)の体験談と解決策をお伝えします。

「終活(しゅうかつ)」とは

●母亡き後に病院の持ち物から、遺書とエンディングノートを発見し、自然葬の生前契約の存在を知る
瑤子さんの母は、末期のすい臓癌が見つかって約2か月ほどで亡くなりますが、すい臓がんが見つかる以前から、一人で終活を続けていました。
●「終活(しゅうかつ)」とは、葬儀やお墓など、自分亡き後の事柄を生前に行うことです。
・葬儀の生前契約
・葬送(お墓など)の生前契約
・亡き後に伝えたい事柄
・エンディングノート
・遺言書
・相続対策
…などなど自分亡き後に気になる事柄を、もろもろ生前に手続きしたり、家族に言づけるツール(エンディングノートや遺言書など)に記載しておきます。
ただ今回の瑤子さんの体験談で問題となった発端は、母が終活を行うにあたり、家族に知らせず一人で進めていた点でした。
・「終活でお墓を建てると良い」は本当?生前と死後の建墓、それぞれのメリット・デメリット
家族が知らない問題点
●母亡き後に遺言を通して自然葬の要望を知り、瑤子さんは慌てて手続きを取ります
まず、瑤子さんは母の訃報により最初に葬儀社探しをしていましたが、瑤子さんのお母様が葬儀社と生前契約を済ませていたとして、瑤子さんが途中まで打ち合わせを進めていた葬儀社には、早急にキャンセルをしなければなりませんでした。
・生前契約の存在を知らず、二重契約になる
・家族親族の同意を得ておらず、強行突破になる
・喪主や遺族が矢面に立つ可能性
…例えば、今回は病室にエンディングノートや遺言書があったため、瑤子さんがスムーズに見つけることになりますが、もしもエンディングノートや遺言書が見つからなければ、生前契約をしたにも関わらず、そのまま無いものとして、全ての葬送が進むでしょう。
また瑤子さんのケースのように、家族や親族の同意を得ていない生前契約の場合、反対者が出て、故人の遺志を全うしようとする喪主や遺族が、親族の反対に合う可能性も否めません。
・【おひとりさま終活まとめ】誰が納骨してくれる?死後に安心できる10の手続き<その1>
「自然葬」とは
●自然葬とは、樹木葬や海洋散骨など、遺骨が自然へ還る葬送です
瑤子さんの母が遺言で希望した「自然葬」とは、遺骨を残さず自然へと循環させる葬送を差し、その種類はさまざまです。
・樹木葬…樹木の麓に埋葬され、土に還る
・海洋散骨…粉骨した遺骨を海に撒き、海に還る
・空葬…バルーンなどで粉骨した遺骨を飛ばし、空に還る
この他、最近では宇宙葬やダイヤモンド葬なども見受けられ、自然葬とひと口に言っても、その種類はさまざまに増えました。
今回瑤子さんの母が遺言で希望した自然葬は、個別埋葬型の樹木葬です。
・個別スペースが設けられている
・土に還る素材の骨袋に入れられる
…瑤子さんの母が生前契約した「個別埋葬型樹木葬」の特徴は上記のようなもので、生前契約時に支払いを済ませてしまえば、納骨後の特別なランニングコストは必要ありません。
霊園内に設置された墓地だったため、お参りもしやすいタイプでした。
・【自然葬の種類】自然葬の種類と特徴。個別の墓標を残す自然葬もあるの?|永代供養ナビ
親族の反対

●母の遺言で自然葬を進めようとしたものの、瑤子さんは親族の反対に合います
親族としては「嫁いだ先の父の実家で、先祖代々墓に入れば良い」との考えです。
ただ、母としては嫁姑関係で苦労してきたため、「義実家の人々と一緒のお墓に入りたくない」との考えが強いようでした。
・森口家の長男嫁が先祖代々墓に入らないなんて!
・菩提寺のご住職との関係が悪くなるのでは?
・今後の供養(法要)はどうなるの?
…などなど、様々な意見がありましたが、主には菩提寺との関係性を悲観したものが多くありました。
「菩提寺(ぼだいじ)」とは、家が代々信仰してきた寺院を差し、多くは集落に建つ寺院墓地を管理する寺院です。
そのため地方の森口家では、地域の人々との関係性も気になったようです。
…と言うのも瑤子さんの父は長男であり、先祖代々墓の墓主でした。
・大阪でお墓を建てたら「檀家になる」ってどういうこと?菩提寺・檀那寺との関係性とは?
父の喪失
●父は、母が遺言で自然葬を希望したことを知り、二重のショックを受けていました
前述したように先祖代々墓の墓主は父です。
そのため母が遺言で自然葬を希望したこと(しかもすでに生前契約をしていた)は、墓主である父と一緒のお墓に入らない選択にもなります。
・母の終活を知らなかった
・一緒のお墓に入らない母の選択
・葬儀から葬送まで、自分で全てを決めていた
…そもそも父としては、すい臓癌が見つかった時点から、母が生きることよりも死の準備を進めていたことにショックを受けていたようです。
ただ瑤子さんが俯瞰的に判断すると、母は元気な時に気軽な気持ちで、終活を進めていたのではないかと考えています。
●仮に元気な時に終活を進めるとしても、家族や周囲に知らせて理解を得る方が、後々までスムーズです
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エンディングノートに見つけた一文
●けれども母のエンディングノートを細かく見ていくと、父と共に自然葬を検討していたことも見えてきます
母の遺言には「自然葬での葬送を希望」のみ記載されていましたが、エンディングノートには、生前契約の細かな情報が入っていました。
そこですい臓癌が発見される直前、父にも自然葬を勧めようとしていた旨が記載されており、決して父と別のお墓に入ろうとしていた訳ではないことが分かります。
●つまり母は終活の途中ですい臓癌が見つかり、そのまま闘病へ移行したのでした
母としては若い頃に苦労した嫁姑問題、直近では介護で苦労しながらも感謝されず、文句を言われてきたため、
②義両親と一緒のお墓に入りたくない
…と考えていたようです。
けれども、父には申し訳なくて言えないまま時が過ぎ、そのまますい臓癌の発見に繋がりました。
・エンディングノートの書き方まとめ☆欠かせない7つの項目と残された家族に役立つポイント
親族との話し合い

●瑤子さんの父が親族と話し合い、①墓主を変える、②母は遺言通り自然葬とする、ことを決めました
父が母の遺言で自然葬を希望した真意を理解したことで、少しずつ父の喪失感も癒されつつあります。
暮らしのなかで、自宅に安置されている母の遺骨に話しかけながら、お茶やお線香など、日々の供養をするだけで、自然と一日一日と、母の死を受け入れられるようになりました。
ただそこには母の遺言の真意を理解して、自然葬を行うための段階も役立ったようだと、瑤子さんは言います。
●親族との話し合いが成功したポイントは、最初にご住職へ相談したことでした。
①ご住職へ相談
・配偶者(母)の気持ちを正直に相談
・自然葬を検討している
(そのため納骨できない)
②ご住職を交えた親族間の相談
・墓主を妹の長男へ譲る
・両親以降は、先祖代々墓に入らない
以上の流れで親族間の相談は解決します。
親族としても、義両親の納骨時に古い先祖代々墓を建て替えているため、しばらくは修繕の心配もなく、建墓費用なども掛からないため問題はありません。
ただ親族としては「墓主を辞退するならば、それ以降の家族も入らないで!」と言う要望でしたが、父はもちろん、瑤子さんやご兄弟も、そこに執着はなかったようです。
瑤子さんは「もしも家族墓が必要になれば、その時に新しくお墓を建てる」と考えています。
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セレモニーで喪失が癒される

●一周忌をきっかけに、お母様の遺言に倣い自然葬を執り行います
親族の同意を得たものの、納骨式はお父様と瑤子さん、瑤子さんの2人の弟の4人、家族のみで執り行いました。
自然葬の納骨は代行として任せることもできましたが、ひとつの区切りとして家族が見守り、お世話になった菩提寺のご住職をお呼びして、読経供養を行っています。
●家族のみで執り行い、菩提寺のご住職に法要を依頼する
・自然葬(生前契約)…約30万円
・読経供養…約10万円
家族のみですので、特別な費用は掛かりません。
また服装も気軽な私服で執り行いました。
読経供養の相場は一般的に約3万円~5万円と聞いていましたが、親族間の話し合いを進めるにあたり、ご住職には大変お世話になったため、お礼も兼ねて約10万円を包んでいます。
菩提寺からは離檀することになったものの、今後も法要では、依頼をするつもりです。
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定期的な合同供養に参列
●瑤子さんのお父様は霊園で開催される、毎月の合同供養に参列しています
瑤子さんのお母様が遺言で自然葬を依頼した霊園では、毎月合同供養が行われていました。
父は母の喪失でしばらくショックを抱えていましたが、その助けのひとつとして、この合同供養への参加を決めたようです。
・手ぶらで参加できる
・毎月定期的な合同供養
・参列は自由
霊園としては合同供養に参列しても、お布施などを用意する必要はありません。
けれども瑤子さんのお父様は、毎月約3千円ほどのお布施を持参して参列しています。
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自然葬の生前契約
●お母様の自然葬を行った霊園で、お父様も自然葬の生前契約をしました
瑤子さんのお父様は、お母様と同じ自然葬墓地で一区画を生前契約しています。
お母様の遺言で自然葬を決めた区画とは少し離れてしましましたが、同じ墓地で生前契約ができました。
・個別埋葬型樹木葬…約30万円
瑤子さんのお母様の場合、終活の過程ですい臓癌が見つかり亡くなったため、幸い自然葬の区画がまだ分譲されていなかった点も、お父様が決めた理由でしょう。
・【おひとりさま終活まとめ】誰が納骨してくれる?死後に安心できる10の手続き<その1>
最後に
以上、瑤子さんが母の遺言を見つけてから、自然葬を行うまでの体験談です。
故人が生前に終活を行っていたことを、家族が知っていたのであれば、心づもりもあったのでしょうが、今回は「寝耳に水」でした。
そのため喪主である父親を含め、親族も一時期は混乱し、瑤子さん自身も「母親が勝手に決めたことだから…」と、あまりの反対や困難に諦めかけてもいたそうです。
けれども瑤子さんのケースでは、菩提寺のご住職がご理解が深かったこと、御親族のご住職への信頼が深かったことが、母親の遺言通りに自然葬を進めるきっかけになりました。
巷では「離檀トラブル」など、菩提寺のご住職とのトラブルも散見されますが、信頼できるご住職であれば、早い段階でご相談をするのも、さまざまな問題を解決する対策のひとつです。
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まとめ
ご住職の助けで親族の反対を乗り切った体験談
・母の死後、遺言を発見
・母は自然葬を希望していた
・父のショックと親族の反対
・エンディングノートで母の気持ちを理解
・ご住職に相談する
・ご住職を交えて親族間の話し合い
・父は墓主を譲る
・母の自然葬へ
・納骨時にはご住職に読経供養を依頼
・父も自然葬の生前契約
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