お墓を継ぎたくない…継承の拒否はできる?祭祀承継者の決め方とその後の選択肢
「実家のお墓を継ぎたくないけれど、拒否できるのだろうか」
——そんな悩みを抱えている方は少なくありません。
● お墓の継承は、通常の相続とは異なる「祭祀承継」という別の制度で扱われており、指定された場合には基本的に拒否できない、というのが実情です。
とはいえ、お墓の継承は拒否できませんが、継いだ後の管理が難しい場合には、負担を軽くするための選択肢も用意されています。
この記事では、お墓の継承の決まり方や拒否できない理由、そして継承後に負担を減らす方法まで詳しくご紹介します。
※本記事は、供養を通じて多くのご家族に寄り添ってきた「霊園・墓石のヤシロ」が執筆しています。なお、記事内にはヤシロの納骨堂サービスへのご案内を含む場合があります。(2026年7月20日更新)
お墓の継承は拒否できる?基本的な仕組みと「祭祀承継者」とは
祭祀承継者とは?拒否できない?お墓や仏壇を引き継ぐ人のこと
◇お墓や仏壇を引き継ぐ人を「祭祀承継者」と呼ぶ
お墓や仏壇、位牌などを引き継ぐ人のことを、法律上「祭祀承継者」と呼びます。
祭祀承継者は、お墓の管理や年忌法要の主催など、先祖の祭祀に関する役割を担う立場です。「相続人」と似た言葉に聞こえますが、実際には別の制度として扱われており、必ずしも相続人である必要はありません。
● 祭祀承継者が担う主な役割
・お墓や仏壇の管理
・年忌法要など、祭祀に関する取りまとめ
・墓地の名義変更などの手続き
一般的な財産の相続とは異なり、祭祀承継者は原則として1人に定められます。
相続とは別ルール、民法で定められた承継の順位
◇祭祀承継は、民法897条という独立した条文で定められている
お墓や仏壇などの「祭祀財産」は、民法897条によって、通常の相続財産とは別の仕組みで承継されると定められています。
この条文では、承継者の決まり方について、次のような順位が示されています。
● 継承者が決まる順位
①被相続人(故人)が指定した人がいれば、その人が承継する
②指定がなければ、その地域の慣習に従って承継者が決まる
③慣習も明らかでない場合は、家庭裁判所が承継者を定める
つまり、お墓の承継者は「相続人の中から自動的に決まる」ものではなく、指定や慣習といった、通常の相続とは別の基準で決められる、という点が大きな特徴です。
継ぎたくない、でも拒否できない現実|放棄できない仕組み
◇祭祀承継者に指定されたら、原則、承継そのものは拒否できない
が多くの方にとって意外な点かもしれませんが、被相続人から祭祀承継者として指定された場合、原則としてその指定自体を拒否することはできません。
一般的な相続であれば「相続放棄」という手段がありますが、祭祀承継は相続とは別の制度のため、同じようには扱われないのです。
● ただし、「拒否できない」ことと「その後もずっと自分で管理し続けなければならない」ことは、必ず一致するわけではありません。
一度承継した後に、管理の権利を他の人に譲ったり、永代供養や墓じまいという形で負担そのものを軽くしたりする方法は残されています。
この点については、後ほど詳しくご紹介します。
祭祀承継者はどう決まる?指定・慣習・家庭裁判所の3つの決め方
遺言などで指定される場合
◇故人の指定があれば、それが最優先される
祭祀承継者の決め方には優先順位があり、最も優先されるのが「故人による指定」です。
指定の方法には特に決まりがなく、遺言書に明記する方法だけでなく、生前に口頭で伝えておく方法でも有効とされています。
ただし、口頭での指定は「言った」「言っていない」という食い違いが起こりやすいため、遺言書などの書面に残しておく方が、後のトラブルを避けやすくなります。
● 祭祀承継者を指定する際に書面に残す例
・「祭祀を主宰すべき者として、長男〇〇を指定する」
…など、承継者の氏名を明記する
・可能であれば、承継者になってほしい理由や想いも書き添える
・指定される本人の意向を事前に確認しておく
遺言の方式にはいくつか種類があり、それぞれ効力や作成方法が異なるため、確実に意思を残したい場合は、方式選びも含めて検討しておくと安心です。
[遺言書の種類とメリットデメリット]
「長男が継ぐ」という引き継ぎの慣習は今も有効?
◇「長男が継ぐ」は法律上のルールではなく、あくまで慣習
指定がない場合、次に判断基準となるのが「慣習」です。
日本では、慣習として長男がお墓を継ぐケースが多く見られますが、これは民法で定められた決まりではなく、あくまでその地域や家に根付いてきた習わしにすぎません。
● そのため、長男以外の子どもが承継者になることも、女性が承継者になることも、法律上何ら問題はありません。
近年は、長男が遠方に住んでいる、後継ぎを望んでいないといった事情から、慣習にとらわれず、実際に管理を続けられる人が承継者になるケースも増えています。
※ただし、この「慣習」がどこまで明確かは家庭や地域によって差があり、お墓の継承を誰が拒否できるかの判断が分かれることもあります。
[祭祀継承者には誰がなる?]
話し合いで決まらない場合は家庭裁判所が決定
◇指定も慣習も明らかでない場合は、家庭裁判所の判断に委ねられる
故人からの指定がなく、慣習も明らかでない場合、最終的には家庭裁判所が祭祀承継者を定めることになります。
● 家族・親族間の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることができます。
故人との関係性や、承継の意欲があるかどうかなどを踏まえて判断が下されるでしょう。
家庭裁判所が関わるケースは、実際にはそれほど多くはありませんが、
「誰も継ぎたがらない」
「複数人が対立している」
といった状況では、この制度が最終的な解決手段になります。
※ただし、お墓の継承に関する家庭裁判所の判断は、故人との関係性など個別の事情によって変わるため、一律には言えません。
[スタッフのマメ知識]
「長男が継ぐもの」というイメージが強いお墓の承継ですが、実際にご相談を受ける中では、娘さんや、故人と特に親しかった親族が承継者になるケースも珍しくありません。
また娘さんがお墓を継承して結婚した際には、夫婦それぞれの両親のお墓を建てて引越す「両家墓」の選択もあります。
慣習はあくまで一つの目安であり、法律上の縛りではないという点は、案外知られていないようです。
[両家墓など、入る人で違うお墓の種類について詳しく]
[参照]
・裁判所|相続に関する調停
相続放棄をすれば、お墓の継承も拒否できる?
相続放棄と祭祀承継はまったく別の制度(拒否できない)
◇「相続放棄をすればお墓も拒否できる」は誤解
「相続放棄をすれば、お墓の継承も拒否できるのでは」
と考える方は少なくありませんが、これは誤解です。
相続放棄は、預貯金や不動産といった一般的な相続財産を一切受け継がないための手続きであり、家庭裁判所への申述によって行います。
一方、お墓や仏壇などの祭祀財産は、民法897条によって相続財産とは別枠で扱われる仕組みのため、相続放棄をしても祭祀承継者としての立場には影響しません。
● 相続放棄と祭祀承継、それぞれの手続き先
・相続放棄
…家庭裁判所への申述
(相続開始を知ってから3か月以内)
・祭祀承継
…故人の指定、または慣習・家庭裁判所の判断で決まる
このように、財産の相続と、お墓の継承は法律上まったく別のルールで動いています。
「相続放棄をしたから、お墓も拒否できるはずだ」
という考え方では、思わぬ形で継承の立場が残ってしまうことがあるため、注意が必要です。
[遺産相続手続きの期限と流れ]
[参照]
・裁判所|相続の放棄の申述
財産を放棄しても、祭祀承継者に指定される(拒否できない)理由
◇祭祀承継者は「相続人」でなくてもなれる
祭祀財産が相続とは別制度で扱われているため、相続放棄をした人であっても、故人の指定や地域の慣習によって祭祀承継者に指定されることがあります。
● 祭祀承継者は、そもそも相続人であることが条件とされていないため、
「財産は継がないが、お墓は継ぐ」
という状態も法律上は成り立つのです。
実際に、遺産分割や相続税の負担を避けるために相続放棄を選んだものの、お墓の管理だけは引き続き担うことになった、というケースも見られます。
財産を受け継ぐかどうかと、誰がお墓を継ぐかは、別の問題として整理しておく必要があります。
[お墓を相続放棄したらどうなる?]
実際に「継ぎたくない」場合に取れる現実的な手段・方法
◇拒否できなくても、その後の負担を軽くする方法はある
相続放棄では祭祀承継そのものを避けられないとしても、「継ぎたくない」という気持ちに向き合う方法は他にもあります。
● 故人が生前に指定を検討している段階
自分以外の家族に承継してほしい意向を早めに伝えておくことが有効です。
● 承継者になってしまった後
・他の家族に権利を譲る
・永代供養や墓じまい
(日常的な管理の負担そのものをなくす)
という選択肢もあります。
「拒否できるかどうか」だけで考えると行き詰まりやすいですが、「その後、どう向き合うか」という視点に切り替えることで、現実的な解決策が見えてきます。
[スタッフのマメ知識]
「相続放棄をしたのに、お墓の管理料の連絡が来た」というご相談を受けることがあります。
多くの場合、相続放棄をした方がそのまま祭祀承継者になっているケースで、法律上は間違っていないのですが、ご本人にとっては予想外の事態ですよね。
財産と祭祀財産は別物だと、契約前に知っておくと対策が取りやすいです。
お墓を継いだ後、管理が負担になったときの選択肢
そのまま放置するとどうなる?無縁墓のリスクを解説
◇管理されないお墓は、最終的に「無縁墓」として撤去される
祭祀承継者になったものの、遠方に住んでいたり、事情があって管理が難しかったりする場合、お墓をそのまま放置してしまうケースもあります。
しかし、管理費の未払いや連絡不通の状態が長く続くと、霊園や墓地の管理者によって「無縁墓」と判断され、行政手続きを経たうえで墓石が撤去され、遺骨が合祀されてしまうことがあります。
● 放置によって起こりうること
・墓石が荒れ、周囲の墓地に迷惑がかかる
・管理者から無縁墓として扱われ、墓石が撤去される
・遺骨が他の方と合祀され、個別に取り出せなくなる
継ぎたくなかったお墓であっても、いったん承継者になった以上、「何もしない」という選択は、後々より大きな負担やトラブルにつながりやすいことを知っておく必要があります。
[お墓を放置したらどうなる?]
墓じまい・改葬(遺骨を引越す)という選択
◇管理が難しいなら、墓じまいで負担そのものをなくす
管理の負担が大きい場合には、今のお墓を撤去し、遺骨を別の場所に移す「墓じまい」という選択肢があります。
● 墓じまいの「改葬」手続き
・既存の墓石を解体・撤去する
・更地にして墓地の管理者に返還する
・遺骨は新たな納骨先(永代供養墓や納骨堂など)に移す
改葬には、
・移転先からの受入証明書の取得
・現在の墓地がある市区町村への改葬許可申請
など、いくつかの手続きが必要です。
相続や祭祀承継に関わる書類の準備も含めて、進め方に不安がある場合は、霊園や専門の業者に相談しながら進めるとスムーズです。
[スタッフのマメ知識]
「墓じまい」という言葉は、実は法律上の正式な用語ではありません。
もともとは民間の霊園や石材店などが使い始めた呼び方で、行政手続き上は
「改葬」
という言葉が使われます。
市区町村役場に相談・申請する際に「墓じまいをしたい」と伝えても問題はありませんが、申請書などの正式な書類上は「改葬許可申請書」という名称になっている点を知っておくと、手続きがスムーズです。
[大阪で相続が関わる墓じまい]
[参照]
・大阪市北区|改葬許可申請について
永代供養にすれば、継承後の管理・供養の負担がなくなる
◇永代供養なら、以後の管理・供養を霊園や寺院に任せられる
墓じまいをした後の遺骨の受け入れ先としてよく選ばれるのが、永代供養です。
● 永代供養では、遺骨の管理や日常的な供養を寺院や霊園に任せられます。
・以後、承継者が個別に管理を続ける必要がなくなるのです。
「継ぎたくなかったお墓の負担」
そのものを、この段階で解消できるのが大きな利点でしょう。
永代供養の費用は、墓じまいにかかる費用と合わせて発生するため、誰がどこまで負担するかを事前に家族で話し合っておくことも大切です。
墓地の管理や埋葬に関する制度は、厚生労働省の指針のもとで各自治体・霊園が運用しているため、進め方に疑問がある場合は、霊園や行政の窓口にも確認しながら検討すると安心です。
[スタッフのマメ知識]
無縁墓として撤去されるまでには、管理者による立札の掲示や官報への掲載など、一定期間の手続きを経る必要があり、いきなり撤去されるわけではありません。
ただ、その期間内に連絡が取れないと手続きが進んでしまうため、住所変更などがあった際は、霊園への連絡先の更新を忘れないようにすることが大切です。
[永代供養の費用は誰が払う]
[参照]
・厚生労働省|墓地経営・管理の指針等について
お墓の継承・拒否に関するよくある質問
継承者が誰もいない場合、お墓はどうなる?
◇継承者が誰もいなければ、最終的に無縁墓として扱われる
祭祀承継者になる人が誰もいない場合、お墓はそのまま管理者不明の状態となり、管理費が支払われないまま放置されると、無縁墓として扱われてしまいます。
● 継ぎたくない、継げる人が身内にいないという場合には、早めに永代供養へ切り替えると安心です。
個別の遺骨を残したまま、以後の管理を霊園や寺院に任せることができます。
「誰も継がない=諦めるしかない」わけではなく、終活の一環として選べる方法はいくつか用意されています。
[お墓の継承者がいない時]
継承を辞退する手続きはある?
◇一度指定された継承を、法的に「辞退」する制度はない
「拒否する手続き」ではなく、「継いだ後の負担をどう減らすか」という視点に切り替えることが、現実的な対応につながります。
● 継承後にできる現実的な対応
・他の家族・親族に、承継者としての権利を譲る(当事者間の合意による)
・永代供養や墓じまいによって、管理の負担そのものをなくす
・将来的な指定の場面では、故人が指定する前に自分の意向を伝えておく
祭祀承継者として指定された後に、その立場を法的に辞退する専用の手続きは用意されていません。相続放棄のように家庭裁判所に申述すれば済む、という話ではない点への対処法が必要です。
[スタッフのマメ知識]
「継承を辞退したい」というご相談は多いのですが、実際には「辞退」という制度上の言葉は存在せず、家族間で話し合って別の人に権利を譲る、というのが実務上の対応になります。
制度の名称と、実際にできることの間にギャップがある部分なので、混乱される方も少なくありません。
祭祀継承者のリスク|引き継いだ後、費用や負担は?
◇年間の管理費に加え、法要や修繕の費用がかかる場合も
お墓を引き継いだ後は、
・霊園や寺院に支払う年間の管理費
(目安として年間5千円~2万円程度)
・法要を行う際のお布施
・墓石の修繕
などの費用が発生することがあります。
● 管理費が未払いのまま一定期間が過ぎると、無縁墓として扱われるリスクがある点も、あらためて押さえておきたいポイントです。
費用や管理の負担が重いと感じる場合は、永代供養への切り替えによって、以後の管理費や法要の手配が不要になるケースが多く、負担を大きく減らすことができます。
[スタッフのマメ知識]
祭祀承継者が引き継ぐのは、お墓だけではありません。
仏壇や位牌も同じく祭祀財産にあたり、承継者は原則1人とされているため、お墓とあわせて仏壇・位牌も引き継ぐことになるのが一般的です。
近年は「仏壇じまい」として、位牌を寺院や霊園の位牌堂に永代供養してもらうケースも増えています。
永代供養といっても、すぐにお焚き上げを行うプランもあれば、一定期間は個別に安置し、その間に今後を検討できるプランもあり、内容は寺院や霊園によってさまざまです。
また、大きな仏壇を手放し、コンパクトなサイズの仏壇に買い替えることで、無理なく供養を続けるケースも増えています。
[お墓の継承で掛かる負担]
まとめ|継承拒否で悩んだら、放置せず永代供養も検討を
◇「継承拒否はできない」現実と、「負担は減らせる」現実、両方を知っておく
お墓の継承は、通常の相続とは別の「祭祀承継」という制度で扱われており、故人から承継者として指定された場合、原則としてその立場自体を拒否することはできません。
「相続放棄をすれば、お墓の継承も拒否できるのでは」
と考える方は多いのですが、これも誤解で、相続放棄をしても祭祀承継者としての立場には影響しません。
● お墓の継承拒否は、財産の相続とは切り離して考える必要がある、というのがこの記事を通しての結論です。
一方で、「継承を拒否できない」ことは、「その後もずっと自分だけでお墓を管理し続けなければならない」ことを意味するわけではありません。
● 承継そのものは拒否できなくても、
・他の家族に承継者としての権利を譲ったり
・墓じまい・改葬の手続きを経て永代供養に切り替えたりする
ことで、以後のお墓の管理や供養にかかる負担そのものを軽くすることができます。
※お墓とあわせて継承することになる仏壇や位牌についても、仏壇じまいやコンパクトな仏壇への買い替えなど、無理のない形に整理する方法が用意されています。
大切なのは、「お墓を継ぎたくない」という気持ちを一人で抱え込んだまま、継承したお墓を放置してしまわないことです。
放置は無縁墓のリスクにつながりますが、継承を拒否できない現実を受け止めたうえで、早めに家族で話し合い、永代供養という選択肢も含めて検討することで、後悔の少ない形に落ち着けることができます。
※ただし、慣習の有無や家族の事情によって、お墓の継承を拒否できるかどうかの判断はケースごとに異なります。
【執筆・監修:永代供養ナビ編集長】
株式会社霊園・墓石のヤシロ 営業本部長 藤橋 靖雄
1998年入社。お墓販売、商品企画を経て、多様化する供養の形に応えるサービス・霊園プロデュースだけでなく、営業企画、WEBマーケティングなど幅広い埋葬、葬送事業を担当。また、墓じまいや終活に関する各地域の終活イベント・セミナーにも講師として登壇し、終活のお悩みごとを解決するトータルアドバイザーとしても活躍中。
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