任意後見人とは?手続きの流れから費用、法定後見との違いまで専門家が徹底解説|老後の安心を守るためのガイド
「将来、認知症になったらお墓や財産の管理はどうなるの?」
そんな不安に備えるのが任意後見人制度です。
元気なうちに、自分で信頼できる任意後見人を選び、公正証書で契約を結んでおくこの制度は、老後の安心を守る大切な選択肢となります。
本記事では、任意後見人の手続きの流れや費用の目安、法定後見との違い、メリット・デメリットまで、終活のプロが徹底解説します。後悔しないための遺言や、任意後見人を活用した相続準備のポイントも併せてお伝えします。
※この記事は株式会社霊園・墓石のヤシロ(墓じまい・供養のプロ)が、2026年2月時点の制度・法律に基づいて執筆しています。
最新の情報については専門家へご相談ください。(2026年2月17日公開)
任意後見人制度とは?成年後見に関連する法律の仕組み
将来、自分自身の判断能力が低下した際に備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を決めておくための法律上の仕組みが任意後見人制度です。
これは成年後見制度の一つであり、自分らしい老後を支えるための重要な柱となります。
任意後見制度の概要と目的
任意後見人制度の主な目的は、認知症などで物事の判断が難しくなった際に、本人の意思に基づいた適切な支援を受けることにあります。
自分自身で選んだ任意後見人に対し、財産管理や日常生活に関する事務について代理権を与える契約を、本人の判断能力が十分なうちに結んでおくことが最大の特徴です。
判断能力がある「今」こそ任意後見人を選ぶメリット
この制度を利用する最大のメリットは、本人の判断能力が確かなうちに、自分の将来を託したい相手(任意後見人)を自由に選べる点にあります。
契約内容も、自分の希望に合わせてカスタマイズできるため、将来お墓の管理を誰に任せるか、どのような介護サービスを受けたいかといった具体的な希望を任意後見人と共有しておくことが可能です。
法律に基づく法定後見制度と任意後見人の決定的な違い
成年後見制度には、法律に基づいて家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」と、本人が事前に契約を結ぶ「任意後見人制度」の2種類があります。
● 両制度の主な違い
・ 法定後見:判断能力が低下した後に、裁判所が適任者を選定する。
・ 任意後見人:元気なうちに、本人が契約で後見人を決定する。
また、任意後見人には原則として「取消権(本人が不利益な契約をした際に取り消す権利)」が認められていないという点には注意が必要です。そのため、本人の判断能力が衰え始める前に、信頼できる任意後見人としっかりとした準備を進めることが大切です。
※ 外部サイト参照
[参照]
将来、夫婦ともに判断能力が低下してしまう「認認介護」などのリスクを避けるためにも、元気なうちの備えが重要です。介護の限界を迎える前に知っておきたい解決策はこちら。
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任意後見人ができること|役割とサポート内容
任意後見人が将来、具体的に何をすることになるのかを把握しておくことは、契約前の大切な準備です。
支援の範囲は、契約時に結ぶ委任契約の内容によって決まります。
財産管理(預貯金の管理、支払い代行など)
◇ 任意後見人の主要な役割の一つは、本人の財産管理を代行することです。
預貯金の引き出しや家賃・公共料金の支払い、税金や保険料の納付手続きなどが含まれます。
本人が契約者となっている銀行口座の管理や、将来お墓の維持管理費を支払うための資金管理についても、任意後見人に委任しておくことで、判断能力が低下した後もスムーズに継続できます。
身上保護(介護契約、施設入居手続きなど)
◇ 身上保護とは、本人の生活や健康を維持するための手続き全般を指します。
具体的には、介護サービスの利用契約や病院への入院手続き、老人ホームへの入居申し込みなどが該当します。
任意後見人は、本人がどのような生活を望んでいるかを尊重しながら、医師や介護スタッフと連携して適切な療養環境を整えることが求められます。
【注意点】取り消し権がない点に注意が必要
任意後見人制度を利用する上で、必ず理解しておかなければならない注意点があります。それは、任意後見人には法律上の「取消権」が原則として付与されないという点です。
● 裁判所が選任する「成年後見人」であれば、本人が認知症に乗じた悪質な訪問販売などで不要な契約をした際にそれを取り消せますが、任意後見人にはその権限がありません。
そのため、不当な契約から身を守るには、いつから後見を開始するかというタイミングを見極め、見守り契約などと併用して取消権の不足をカバーする工夫が重要です。
任意後見手続きの具体的な流れと必要書類
任意後見人制度を実際に利用するためには、法律に定められた手順に沿って手続きを進める必要があります。
大きな流れは以下の4つのステップです。
ステップ1:任意後見人の選任(家族、弁護士など)
◇ まずは、将来自分の代わりに財産管理などを担う任意後見人を誰にするか決めます。
任意後見人に資格は必要ありませんので、信頼できる親族や友人、あるいは弁護士や司法書士といった専門家を自由に選ぶことができます。この段階で、将来どのようなサポートを希望するか、任意後見人となる候補者としっかりと話し合っておくことが大切です。
※ 外部サイト参照
[参照]
■ 供養の現場で見られる事例
運営元のヤシロには、将来のお墓の管理に不安を感じる方から多くの相談が寄せられます。
例えば、以前ご相談いただいた方は、ご自身が認知症になった際にお墓の手続きが滞ることを心配し、信頼できる親族と任意後見人契約を結ばれました。
事前に供養の希望まで細かく共有されたことで、その方は「これで将来の供養まで安心できる」と話されていたのが非常に印象的でした。
ステップ2:公正証書による任意後見契約の締結
◇ 次に、本人と任意後見人候補者が公証役場へ行き、公正証書によって「任意後見契約」を締結します。
この際、公証人が本人の意思を確認した上で契約書を作成します。
契約が結ばれると、その内容は公務員である公証人の手によって法務局へ登記されます。この登記があることで、将来任意後見人としての正当な権限を証明できるようになります。
ステップ3:本人の判断能力低下後、家庭裁判所への申し立て
契約を結んだだけでは、まだ任意後見人の仕事は始まりません。
● 本人の判断能力が低下した段階で、本人や配偶者、あるいは任意後見人候補者が、家庭裁判所に対して「任意後見監督人」の選任を申し立てます。
この申し立てが行われることで、いよいよ制度開始に向けた最終段階に入ります。
ステップ4:任意後見監督人の選任と業務開始
◇ 家庭裁判所によって「任意後見監督人」が選任されると、任意後見人の業務が正式にスタートします。
監督人は、任意後見人が本人のために正しく仕事をしているかをチェックする役割を担います。
これにより、任意後見人による財産の使い込みなどの不正を未然に防ぎ、本人の権利が守られる仕組みになっています。
任意後見人にかかる費用の目安
任意後見人制度を利用するにあたって、一体いくらの費用が必要になるのかは非常に重要なポイントです。
費用は大きく分けて「契約時にかかるもの」と「運用開始後にかかるもの」の2段階に分かれます。
任意後見人の契約時(公証人手数料、登録免許税など)
◇ 契約時に発生する費用は、主に公証役場へ支払う手数料です。
公正証書を作成するための基本手数料や、法務局への登記嘱託手数料、正本等の作成費用などが必要となります。
● 契約時の主な費用内訳(目安)
・公証人への手数料:11,000円
・登記印紙代(登録免許税):2,600円
・正本・謄本代:約3,000円〜
・書留郵便代:約500円
また、弁護士や司法書士などの専門家に契約書の作成サポートを依頼した場合は、別途「専門家へのコンサルティング費用」が発生します。
運用開始後(任意後見人への報酬、監督人への報酬)
本人の判断能力が低下し、任意後見人としての業務がスタートした後は、継続的なコストが発生します。
● 任意後見人への報酬
家族や親族が任意後見人を務める場合は「無報酬」とすることも可能ですが、専門家に依頼した場合は月額3万円〜6万円程度の報酬を支払うのが一般的です。
● 任意後見監督人への報酬
制度を開始した後は、必ず「任意後見監督人」が選任されます。この監督人への報酬は、管理する財産の額に応じて家庭裁判所が決定します。
目安としては、月額1万円〜3万円程度となることが多く、この報酬は本人の財産から支払われることになります。
任意後見制度のメリット・デメリット(問題点)
任意後見人制度には、自分らしい老後を実現できる大きな利点がある一方で、あらかじめ知っておくべき注意点や問題点も存在します。
メリット:自分の意思で信頼できる人を選べる
最大のメリットは、本人の希望に基づいて、最も信頼できる人を任意後見人として自由に指名できる点です。
● 希望が反映されやすい
あらかじめ委任する内容を詳細に決めておけるため、お墓の維持管理や供養の形式など、こだわりたい部分を明確に契約に盛り込めます。
● 安心感がある
家庭裁判所によって知らない専門家が選任される法定後見とは異なり、気心の知れた親族や、自分の価値観を理解してくれる専門家を選べるため、精神的な安心感が非常に大きくなります。
■ 専門家としての見解
墓じまいや供養のプロとしての視点で見ると、任意後見人制度は「自分らしい供養」を実現するために極めて有効な手段だと考えられます。
法定後見では、本人のこだわりや価値観を反映しきれない点も少なくありません。
自分の価値観や供養への想いを最もよく知る人を指名できるこの制度は、尊厳ある人生の締めくくりに欠かせない備えである、というのが私たちの確かな見解です。
デメリット:監督人への報酬などランニングコストがかかる
一方で、コストや運用の柔軟性に関するデメリット(問題点)も考慮しなければなりません。
● 継続的な報酬の支払い
…制度が開始されると、必ず「任意後見監督人」が選任されます。
この監督人への報酬は、本人の財産から継続的に支払われるため、長期間にわたるランニングコストが負担に感じられる場合があります。
● 取消権がないという制度上の弱点
…前述した通り、任意後見人には法律上の「取消権」がありません。
認知症を悪用した詐欺被害などへの対応能力が、法定後見に比べると限定的になってしまう点は、事前の対策として重要な問題です。
後悔しないために!任意後見人とあわせて検討したい「遺言」と「死後事務」
◇ 任意後見人の役割は、あくまで本人の生存中のサポートです。
本人が亡くなった後の事務手続きや供養については、別途「遺言」や「死後事務委任契約」を組み合わせて準備しておくことが、後悔しない終活のポイントとなります。
遺言書で指定する相続・遺産分割協議の準備
◇ 本人の死後、最もトラブルになりやすいのが相続です。
任意後見人は死後の相続手続きに関与する権限を持たないため、誰にどの資産を譲るかは「遺言書」で指定しておく必要があります。
● あらかじめ遺言で明確な意思表示をしておくことで、残された親族間での遺産分割協議がスムーズに進み、争いを未然に防ぐことができます。
任意後見人契約とセットで遺言を作成しておくことは、確実な相続対策として非常に有効です。
[遺言書の種類と選び方]
死後の見守り:葬儀・納骨(お墓)の手配まで考える大切さ
◇ 任意後見人制度だけではカバーできないのが、葬儀や納骨(お墓)の手配です。
本人の判断能力があるうちに、死後の見守りとして「死後事務委任契約」を結んでおけば、希望に沿った供養を確実に実行してもらえます。
● 死後事務委任で決めておけること
・葬儀の規模や形式の指定
・お墓への納骨や永代供養の手配
・遺品の整理や公共料金の解約手続き
特にお墓の問題(墓じまいや改葬など)は、専門的な知識を要する点が多いものです。
私たちヤシロのような供養のプロと任意後見人をうまく連携させることで、生前の安心だけでなく、死後の尊厳まで守ることができるようになります。
[死後事務委任契約について]
任意後見人とあわせて「遺言」を準備する際、すでに認知症の兆候がある場合は、遺言の有効性が問われることもあります。不安な方はこちらの記事も参考にしてください。
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まとめ:自分らしい終活の第一歩として
将来の認知症や判断能力の低下に備える任意後見人制度は、自分らしい老後を最後まで貫くための強力な味方となります。
本人の希望を尊重し、信頼できる任意後見人をあらかじめ選んでおくことで、お金の管理やお墓の問題といった漠然とした不安を「安心」へと変えることができるのです。
● この記事の振り返り
・ 任意後見人は、元気なうちに自分で選べる法律上の制度
・ 手続きには公正証書の作成と、家庭裁判所への申し立てが必要
・ 費用には契約時の手数料と、運用開始後の報酬がある
・ 遺言や死後事務委任と組み合わせることで、相続や供養までカバーできる
終活は、決して「終わりのための準備」ではなく、これからの人生をより前向きに、安心して楽しむためのステップです。
任意後見人の活用を含め、お墓のこと、相続のことなど、少しでも不安を感じた際は、供養のプロであるヤシロへお気軽にご相談ください。
[参照]
[墓じまいの進め方と費用目安]
※本記事の監修・運営について
このコラムは、墓じまいや供養のプロである「株式会社霊園・墓石のヤシロ」が運営しています。公平な情報提供を心がけていますが、専門家としての知見を活かした自社サービスのご案内も含まれます。
【監修者メッセージ】
任意後見制度は、ご自身の尊厳を守り、理想のシニアライフを実現するための「安心の予約券」です。
決して後ろ向きな準備ではなく、最後まで自分らしく、そして大切な家族に負担をかけないための「前向きな決断」と言えます。お墓の管理や将来の備えに少しでも不安を感じたら、まずは私たちプロにご相談ください。
【執筆・監修:永代供養ナビ編集長】
株式会社霊園・墓石のヤシロ 営業本部長 藤橋 靖雄
1998年入社。
お墓販売、商品企画を経て、多様化する供養の形に応えるサービス・霊園プロデュースだけでなく、営業企画、WEBマーケティングなど幅広い埋葬、葬送事業を担当。 また、墓じまいや終活に関する各地域の終活イベント・セミナーにも講師として登壇し、終活のお悩みごとを解決するトータルアドバイザーとしても活躍中。
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