2025年から遺族年金が廃止?5年限定になるって本当?制度改正ポイントを知って対策
「2025年以降、遺族年金制度の改正内容は?」
「遺族年金が廃止されるって本当?」
「遺族年金は2025年から5年間限定の有期支給になるの?」
は2025年の年金制度改正で遺族年金が大幅に改正されます。夫婦共働き家庭を基準とした遺族年金の改正は、現役世代の50代以下の人々にとって、いざと言う時の影響も大きいでしょう。
けれども巷で噂されるように遺族年金が2025年から急に廃止される訳ではありません。「こんなはずじゃなかった!」と翻弄されないためには、2025年から行われる遺族年金改正の内容を理解することが先決です。
本記事を読むことで「改悪」と世間で言われる、2025年からの遺族年金改正の内容を理解して、いざと言う時にも翻弄されない適切な対策ができます。
そもそも「遺族年金」とは?
「遺族年金」とは、国民保険・厚生年金保険の被保険者(被保険者だった人)が亡くなった際、生計を維持していたご遺族を対象として支給される年金です。
家族の大黒柱が亡くなった時、遺された家族の生活を支えるためのお金と言えます。現行の遺族年金では、亡くなった被保険者の老齢厚生年金・報酬比例部分の4/3が支給される制度です。
・厚生労働省「遺族年金制度」
遺族年金の種類
遺族年金の2025年改正内容をお伝えする前に、大まかな現状の遺族年金制度の仕組みを分かりやすく解説しましょう。
遺族年金には国民全員がもらえる「遺族基礎年金」と、厚生年金に加入し働く会社員・公務員がもらえる「遺族厚生年金」の2種類があります。
2025年の遺族年金改正は後者「遺族厚生年金」が対象です。そのため18歳未満の子どもがいる家庭では、今後も「遺族基礎年金」が支給されます。
①遺族基礎年金
「遺族基礎年金」は、国民全員が関係する年金制度です。配偶者が亡くなった時、18歳未満の子どもがいる配偶者・子ども自身に支給されます。
国民年金加入者が対象です。(もともと国民年金は20歳~60歳は全員が加入しています。)
ただし遺族基礎年金は18歳未満の子どもがいた時に支給される遺族年金であり、子どもがいない配偶者には適用しません。
②遺族厚生年金
2025年遺族年金制度改正の目的は?
かつての日本では男性が家の大黒柱となり、女性が家内を守ってきました。そのため大黒柱となる男性が突然亡くなってしまうと、収入も途絶えてしまうでしょう。このような女性を支えるために支給された年金が遺族年金です。
けれども現代は共働き家庭が増えました。厚生労働省は、2040年には男性・女性の就業率が同等になることを想定しています。
今までの遺族年金の仕組みは?
これまでの遺族年金は受給者が女性か男性かで、遺族年金制度が大きく異なりました。特に年齢制限・年収制限に大きな差があります。(ただし子どもがいる場合、年齢に関係なく遺族年金を受け取れます。)
下記は今までの遺族年金の仕組みについて、男性と女性の年齢による違いを表にしたものです。
<今までの遺族年金制度> |
||
[女性] | [男性] | |
【配偶者の年齢】 (死亡時) |
・30歳以上…ずっと支給 ・30歳未満…5年間だけ支給 |
・55歳以上…ずっと支給 (支給開始は60歳以降) (年収850万円未満) |
【子どもがいない人】 (受給期間) |
・30歳未満…5年間だけ支給 ・30歳以上…ずっと支給 |
・55歳未満…もらえない ・55歳以上…ずっと支給 (支給開始は60歳以降) (年収850万円未満) |
従来の年金制度で女性は、配偶者を亡くした時に30歳を超えていたら、夫の厚生年金×3/4を一生涯もらえます。一方で男性は55歳以上(受給開始は60歳以降)・年収850万円未満でなければ、遺族年金自体がもらえません。
このように男性が社会で働き、女性が家を守ってきた日本家庭に対応した遺族年金制度では、配偶者を亡くした男性の負担が大きい現状があります。
この性差が、今回の遺族年金制度改正の目的です。
2025年遺族年金で「改悪」とされる改正点
2025年以降の遺族年金改正により最も大きく変わることは、遺族年金制度の男女差を無くすため、男女ともに年齢に関わらず有期給付になることです。
①5年間の有期給付
有期給付とは期限付きということで、5年間のみ遺族年金が支給されます。現行制度では配偶者が亡くなった時点で女性が30歳以上であれば、子どもがいない家庭でも遺族年金が一生涯支給されました。
今後は男性・女性ともに年齢に関わらず、遺族年金は5年間のみの支給です。この間に生活を立て直す必要がある家庭もあるでしょう。
②60歳以上の遺族年金
ただし60歳以上で配偶者を亡くした場合、遺族年金は今まで通りに一生涯支給されます。そのため今60歳以上の人々にとって、遺族年金の制度改正への影響はありません。
③中高齢寡婦加算の廃止
2025年遺族年金で「改善」とされる改正点
遺族年金の改正は男女差をなくすことを目的としているため、子どもがいる家庭では男性・女性に関わらず遺族年金が受給できるようになります。
また遺族年金は有期給付にはなるものの、給付額が上がる等の改善点も見受けられるでしょう。結果的にどちらの方が良いのかは、それぞれの状況で異なります。
①収入制限の撤廃
遺族年金を受け取るにあたり、今までの制度では年収850万円未満の収入制限がありました。けれども今後の遺族年金改正では、この年収制限が撤廃されます。
②5年間の遺族年金額が増額される
今までの遺族年金では、受給額が亡くなった配偶者の「老齢厚生年金×3/4」でした。けれども今後の遺族年金では、老齢厚生年金の満額が支給されます。
一例として亡くなった配偶者の老齢厚生年金が20万円だった場合、今までは「20万円×3/4=15万円」なので15万円が支給されました。けれども今後は満額(4/4)支給されるため、20万円が支給されます。
③死亡時分割の導入
2025年の遺族年金改正では「死亡時分割」制度が導入されます。「死亡時分割」とは、亡くなった被保険者の厚生年金を分割して、将来的に配偶者の老齢厚生年金に上乗せする制度です。
ただしずっと老齢厚生年金に上乗せされるのではなく、夫婦の婚姻期間(結婚~配偶者が亡くなった時点まで)のみ適用します。
・厚生労働省年金局2024年7月30日「遺族年金制度等の見直しについて」
遺族年金の改正はいつから?対策は?
遺族年金制度は2025年から約25年の期間を目安に少しずつ改正される予定です。25年の長い期間があると捉える人もいます。
特に現在60歳前後の人々の場合、遺族年金制度の改正による大きな影響は受けないでしょう。政府の見解としては、現在40歳以上の人々に大きな負担がかからないように進めるとされます。
けれども現役世代は遺族年金制度の改正に対応できるよう、対策を取っておくと安心です。
①夫婦で年金額を把握する
そもそも遺族年金は、亡くなった配偶者の老齢厚生年金を基準に支給額が算出されます。
いざと言う時、夫婦がお互いの年金額を把握していることによって、支給額がどれくらいになるかが分かるでしょう。
実際には「自分の年金額も分からない」と言う現役世代も多いですよね。現代はインターネットでも日本年金機構による「ねんきんネット」で年金額が確認できます。
もしくは毎年誕生日頃になると届く「年金定期便」を確認し、年金額を算出しましょう。
・日本年金機構「ねんきんネット」
・65歳からの年金はいくらもらえる?ねんきん定期便の見方を把握して、老後対策をしよう
②老後資金を少しでも貯める
夫婦共働きが増えたとは言え、子どもを育てる過程においては収入の男女差が生じる夫婦は多いでしょう。主に子育てを担う場合、ワークライフバランスから見ても、独身のようにバリバリと働くことは無理が生じます。
そのなかでいざと言う時の遺族年金が有期給付になる点を考慮すると、1歳でも若いうちから1円でも多くの資産を作る・投資等が対策になるでしょう。
今ではNISA制度が推奨されています。NISA制度とは個人の小額投資において導入された非課税制度です。本来は投資で利益が出ると20%課税されますが、NISA制度では一定額までこの税金がかかりません。
NISA制度で毎月コツコツと投資することで、いざと言う時に助けてくれる可能性があります。高齢化が進む今、50代・60代から始めても遅くはないでしょう。
・【老後に破産しない資金計画】NISAとiDeCo・つみたてNISA、老後資金に選ぶ3つの違い
③健康管理を心がける
高齢化が進む今の日本では、夫婦共働き・定年後も働く社会が広がりつつあります。今回の遺族年金改正もその流れのひとつでしょう。
年金受給開始が基本65歳へ延長されました。働きながら年金受給を行う「在職老齢年金制度」も、年収の壁が少しずつ緩和される方向に進んでいます。
毎年の健康診断・適度な運動を心がけ、あらゆる制度改正に対応できる体力・気力を養うことは、何よりの対策です。
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まとめ:2025年以降、遺族年金は有期支給へと改正されます
2025年から遺族年金制度は改正される予定です。遺族年金の男女差を解消することを目的とし、男女関係なく遺族年金が支給される制度へと変わるでしょう。
けれども男女関係なく5年間の有期支給となる点は、専業主婦を務めてきた女性にとっては対策が必要です。一方で5年間は配偶者の老齢厚生年金が満額支給されるため、いざと言う時のためにお互いがお互いの年金額を把握しておくと良いでしょう。
世界では遺族年金の男女差を撤廃する流れが40年前から起きています。この40年、世界で急速に進む男女平等の考え方が背景にあるでしょう。
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