【樹木葬の体験談⑤】独り身の兄が突然亡くなった時、先祖代々墓のカロートがいっぱいで…

●遠方に住んでいたため、麻衣さんは兄の病状に気付くことなく、突然訃報が届きます
 
定年退職後、再就職先として警備員の仕事をしていた兄の貴広(63歳・仮名)さんは、ある日心臓発作を起こして自宅で亡くなりました。
 
体力に合わない夜勤の仕事も引き受け、疲労困憊だったことを同僚から伝え聞きますが、日ごろ交わしていた挨拶などでは、麻衣さんは気付くこともありません。
 

 
慌てて遠方の兄の住まいへ飛行機で飛んだ麻衣さんは、警察からご遺体を受け取ってから一日葬まで3日間の日程で済ませ、兄の住居への清掃や遺品整理は専門家に託しました。
 
麻衣さんは56歳ではありましたが、まだ一番下が高校生、受験真っただ中だったため、兄との交流が少なくなっていたことを、後悔しています。
 

●実家の先祖代々墓は地盤が緩んで傾き、カロート内もいっぱいでした
 
樹木葬で独り身の兄を葬送すると決める前、麻衣さんは86歳と高齢のご両親、麻衣さん家族とともに実家の先祖代々墓に埋葬しようとしています。
 
けれども高齢のご両親が墓主をしていた当時の先祖代々墓は、経年劣化でカビやヒビがひどく、地盤の緩みで墓石が傾いているほどでした。
見ると周辺の墓石も劣化が進み、墓地自体に老朽化を感じます。
 

 
…以上のことから、実家の先祖代々墓への埋葬を諦めた麻衣さんご夫婦は、ご両親とも相談をして、樹木葬で独り身の兄を葬送することに決めたのです。
 

●納骨堂を検討しましたが「納骨後の管理をどうするか」が焦点でした
 
兄の遺骨を実家の先祖代々墓に埋葬しないとして、「お墓のいらない葬送」を検討した時、真っ先に浮かんだ対処法が納骨堂です。
 
けれども納骨堂を調べていくと、納骨期間は年間管理料が掛かることが分かります。
また一定期間の納骨後は、最終的に合祀墓に埋葬されることも知りました。
 

 
…独身の兄を葬送するにあたり、一時期的な費用は兄の遺産から出すことを決めています。
 
けれどもその後、年間管理料など定期的な費用が掛かること、5年後に再契約か合祀墓へ埋葬か、再度選択をする必要があることが気に掛かり、麻衣さんは一度、決定を保留しました。
 

●独身の兄を葬送するにあたり、合祀墓が最も安い選択肢でしたが、麻衣さんには抵抗がありました
 
「合祀墓(ごうしはか)」とは、ひとつの供養塔などの墓碑に、他のご遺骨とともに埋葬される葬送で、一度遺骨を埋葬すると二度と取り出すことができません。
 
先祖代々墓への埋葬をしない場合、独り身である兄の遺骨を埋葬するには、合祀墓が最も安く合理的でしたが、麻衣さんには抵抗がありました。
 

 
条件としては非常に良いものでした。
実際に今まで、実家の先祖代々墓でもカロートがいっぱいになると、寺院墓地の供養塔に合祀埋葬されてきたそうです。
 
けれども生涯独身で、いわゆる「孤独死」を遂げた兄に対して、合祀墓に埋葬することは、麻衣さんにとって申し訳ない気持ちになったと言います。
 

●個別のスペースで埋葬される樹木葬に出会い、独り身の兄の埋葬先にします
 
そこで霊園から提案された葬送方法が樹木葬です。
「樹木葬(じゅもくそう)」は、遺骨が土に還る葬送方法で、最初の費用だけで埋葬され、土に還る素材の骨袋や骨壺などで埋葬され、数年後には遺骨が土に還ります。
 
樹木葬にはいくつかの種類がありますが、なかでも個別スペースに埋葬される樹木葬を、独り身の兄の埋葬先に決めました。
 

 
樹木葬を独り身の兄に選んだ場合、埋葬時の一時期的な費用が約25万円と、納骨式の諸経費が掛かるのみでしたが、石碑に名前が彫刻され、その後も合同の供養台(花代と線香台)ではありますが、お参りも可能です。
 
また相談をすると予約制で、年忌法要など読経供養もできます。
樹木葬であれば独り身の兄でも、それぞれに遺族が手厚い供養ができるとして、麻衣さんは樹木葬を選びました。
 

●残された先祖代々墓は、墓じまいをしました
 
樹木葬で独り身の兄を葬送した後、麻衣さんご夫婦は高齢の両親と相談をして、残された先祖代々墓の墓じまいを決断します。
 
ご住職にも現状を素直に相談したところ、何の問題もなく離檀料(檀家から離れる際のお礼)も発生せず、スムーズに墓じまいを進めることになりました。
麻衣さんは「墓じまいパック」を利用します。
 

 
墓じまいパックの費用も、兄の遺産を相続した費用から出しました。
墓じまいを済ませることで、今後は高齢の両親がご住職へのお布施や、お墓の維持管理などで悩むことなく、身軽に過ごすことができます。
 

●麻衣さんご夫婦は、この機会に自分達夫婦も自然葬の生前契約をします
 
樹木葬で独り身の兄を葬送した後、一周忌や三回忌も両親と麻衣さんご家族のみの小規模でしたが済ませることができ、日ごろのお参りも気軽に行けることを知りました。
 
麻衣さんご夫婦自体は、旦那様が次男で実家の先祖代々墓に入る予定はなく、子ども達に供養をする心を育ませるためにも、ご両親や自分達のお墓は建てようと思っていましたが、樹木葬の良さを見出すようになったと言います。
 

 
麻衣さんが嬉しかったのは、ご両親とご夫婦の4人が、横並びで区画を生前契約できたことです。
 
樹木葬で先に埋葬された独り身の兄とは、墓地自体が少し離れてしまいましたが、同じ霊園で埋葬されるため、子ども達もそれぞれお参りができるでしょう。