
【おひとりさま終活】同居シングル母が突然の要介護!独身一人娘の私は介護離職すべき?

独身女性のおひとりさま終活現場では、介護離職のご相談も多いですよね。自分が高齢になった時に備えると同時に、すでに高齢化している現代日本では、親の介護問題が重なることは少なくありません。
特に40代~60代のおひとりさま終活の場合、独身で親と同居している方も多いのではないでしょうか。なかには親ひとり子ひとり世帯も多く見受けます。そうなると現状ばかりではなく、おひとりさま終活で将来的な介護離職を憂う声が多いです。
今回は、独身で母親と暮らしている46歳舞さん(仮名)の事例を参考に、おひとりさま終活における介護離職リスクについてお伝えします。
【おひとりさま終活】同居シングル母が突然の要介護!独身一人娘の私は介護離職すべき?

母親と実家で二人暮らしの舞さん(46歳)

現在46歳の舞さんは、76歳の母親と実家で二人暮らし世帯です。43歳の弟がいますがすでに結婚して、遠方で暮らしているため、介護を期待することができません。
76歳の母親は足腰が悪く要介護1の状態です。認知などの深刻な症状はないものの、立ち上がりや一部の歩行は人の手を借りなければならず、舞さんは一時期ひとり暮らしをしていたものの、3年前から同居生活となりました。
ただ今まではほんの一部の補助を必要とするのみで、一日中家にいるものの、母親は毎日ある程度の家事や料理をしていましたが、最近では症状の進行を感じています。
そこで舞さんは、おひとりさま終活のセミナーで、介護離職を相談することにしました。
● おひとりさま終活セミナーは介護離職とは関係ありませんが、介護離職をすることで現在の収入が減額、もしくは絶たれてしまうため、将来的な老後の資金形成に影響が出るためです。
→ 舞さんは立派にキャリアを積み上げてきて、例えば50歳で退職をしたとしても1,500万円ほどの退職金が出ると言います。
さらに趣味で海外のチーズなどをネット販売しているため、収入源になるのでは?との相談でした。
介護離職で気になるポイント
現在実家に住んでいる舞さんは、母親亡き後、そのまま実家に住むとして老後計画を立てています。ここで気になるのは、下記の点ではないでしょうか。
● おひとりさま終活で介護離職の相談は多いのですが、「介護離職=収入源が絶たれる=老後資金の確保が困難になる」ことは理解しておきたいポイントです。
(1)退職金1,500万円と年金で老後資金計画が立つのか?
(2)趣味のネット販売での収入は役立つのか?
(3)今住んでいる実家は、相続発生後も自分のものになるのか?
(4)今住んでいる実家の築年数、修理修繕費用はどれくらい必要か?
(5)介護離職後、母親の介護費用はどこから賄うのか?
…以上が、おひとりさま終活に多い介護離職問題において、離職前に気になる事柄です。
また実家の相続については、老後の資金計画を立てるにおいて、「相続税がどれほど課税されるのか」まで、具体的な数字である程度の検討を付けた方が安心です。
※相続税の課税額については、固定資産税などでも割り出すことはできるでしょう。相続に関しては、下記記事を参考にしてください。
・【大阪の相続】実家とお墓を兄弟で一緒に相続・継承はできる?トラブルになるってホント?
・【大阪の終活】相続税の対策は一次相続より二次相続☆家じまいと墓じまいのタイミング
シニアシングル世帯の平均的な家計は?

ではおひとりさま終活を進める舞さんが介護離職を検討しているとして、50歳で退職金1,500万円、そして年金と預貯金で舞さん自身の老後資金が確保できるのか?と言う問題です。
● シニアシングル世帯の平均的な支出は約15万6千円/月とされていますが、60歳~65歳で定年退職した場合の平均的な公的年金による収入額は約11万1千円/月でした。(平成28年度、総務省家計調査報告より)
→ ちょっとした収入があるとして約1万円を見積もったとしても、月々3万5千円の赤字計算です。(※15万6千円-(11万1千円+1万円)として)
※ 対して平成28年度、日本における平均寿命は男性が80.98歳、女性では87.14歳となり、舞さんが介護離職を検討している50歳を差し引いても、残る年数は約37歳~38歳の計算になります。
毎月3万5千円の赤字として1年で42万円、50歳の定年退職後の38年間を考えると、合計1,596万円の計算です。
ギリギリの老後資金計画で大丈夫?
おひとりさま終活で介護離職について積極的に考えていた舞さんとしては、「副業を少し頑張れば、何とかなるんじゃない?」と思ったそうですが、2点問題があることに気付いた方も多いのではないでしょうか…。これは日本の「平均的な」数字と言う点です。
● 平均的な数字を基準に考えた時、ギリギリで決断して欲しくないのには、下記の理由があります。
(1)年金額が少なくなる可能性 … 一般的に定年退職年齢は60歳~65歳です。早くに退職をした場合、年金額がそれだけ少なくなる可能性があります。
(2)ゆとりある暮らしを基準にしていない … この数字はシングルシニア世帯の平均的な家計を基準にしていますので、老後にゆとりある(余裕のある)暮らしを望むのであれば、より支出が高くなるでしょう。
また、現在の日本は年々シニアへの待遇が少なくなっています。保険関係や年金も、今後はさらに支給額が少なくなる可能性がありますので、「ギリギリで」老後の資金計画を立てることはリスクが伴います。
またおひとりさま終活で介護離職を検討する舞さんの場合、副収入1万円/月を目途に入れていますが、少ない金額には設定しているものの、赤字になる可能性まで考慮するとプランが崩れる可能性も高いです。
● このようなことを考えると、おひとりさま終活であっても、極力介護離職を避けることをおすすめします。
※老後の資金計画については別シリーズでお伝えしていますので、別記事「【老後に破産しない資金計画】定年退職後のシングル・夫婦世帯、家計はどうなってるの?」などをご参照ください。
「実家を相続」の誤算

おひとりさま終活で、舞さんは介護離職を検討する理由について、「母親が亡くなった後は、実家を相続するため、家賃が掛からない」としていますが、果たして確実に相続される財産なのでしょうか。
残念ながら今の日本では、介護による相続の恩恵は微々たるものです。そのため一般的には、法定相続分通りに遺産分与を進めるでしょう。
母親が相当の財産を残しているならともかく、現代の日本では実家など不動産を中心とした相続が多いため、遺産分割協議でトラブルにもなりやすい事柄です。
● 確かに舞さんが母親の介護を献身的に行った場合、「寄与分」として請求することはできますが、判例によって寄与される財産はさまざまです。
→ そして現状では介護による寄与分は、その労力に対して、それほど期待できないことを前提として、老後の資金計画を進めた方が良いでしょう。
※ そのため、母親亡き後に実家を相続したい場合、予め兄弟に相談をして、母親の生前から実家の名義を自分に変えるなどの対策を取った方が安心です。
相続財産が実家など不動産のみ、もしくは大半とする場合、いくつかの解決方法がありますが、なかには家を売却して現金化し分割することもあります。
おひとりさま終活で介護離職を検討する時、実家に住み続ける老後資金計画を立てているのであれば、相続税も含めて、相応の対策を取るようにしてください。
築年数の古い実家
また、おひとりさま終活で介護離職を検討するケースで多いのが、両親亡き後に実家を相続して住み続ける老後資金計画ですが、例え実家を相続できたとしても、相続税はもちろん、将来的な修理修繕費まで検討しなければなりません。
● 高齢化が進む日本において、相続時に実家は築20年以上を迎えている不動産も多いです。そうなると必ずどこかのタイミングで大規模な修理修繕が必要となるでしょう。
→ また売却するとしても、築年数の古い不動産は家屋価値が残らない事例が多いです。土地を売却する場合は、選択肢はさまざまありますが、家屋を撤去・更地にする費用も掛かることになり、売却額も安くなることが多くあります。
※ 両親の生前に実家の修理修繕、リフォームを両親の財産で行うことで、相続税対策にもなりますが、高齢の両親に相続税対策の話を切り出すことは困難な家も多いです。
もしも両親の財産で生前に大幅な修理修繕が可能になるならば、バリアフリーを検討すると良いでしょう。両親の介護も楽になりますし、自身の老後にも役立ちます。
実家に住み続ける場合、相続税の課税額にも特別枠が設けられますので、相続税負担も軽減されますが、具体的な数字は確認したいところです。
実家の相続が無事終わり、自分名義の財産になった後は、その不動産を担保にリバースモーゲージローン(※)を組むこともできますし、売却した資金で老人ホームに入居するプランも選べます。
(※)リバースモーゲージとは、高齢者が不動産を担保に借りるローンの仕組みです。生前はローンの返済をする必要はなく、契約者亡き後に不動産が売却されて返済されます。
詳しくは別記事「【老後に破産しない資金計画】リバースモーゲージとは?仕組みやメリットデメリットを解説」をご参照ください。
仕事と介護を両立するプランニング

ここまで見て行くと、おひとりさま終活であっても介護離職は避けた方が良さそうです。人生100年時代と言われる昨今、長期高齢化が進む日本では、老後の保障が今後も今のまま続くとも限りません。
定年60歳どころか、65歳・70歳と「できるだけ長く働く」ことが、現在のおひとりさま終活で焦点となり、介護離職はリスクが高い選択のひとつです。
ですから舞さんの場合、おひとりさま終活をしているなら、介護離職を検討する前に、現在の仕事と母親の介護を両立できるケアプランを検討してみると良いでしょう。
● まず母親の介護資金ですが、これは母親の年金と預貯金でやりくりできる範囲でケアプランを決めます。そうしないと母親の介護の後に訪れる、自身の老後資金計画が崩れるためです。
ケアプランは仕事との両立のため、平日はディサービスなどを活用する方向で検討してみてはいかがでしょうか。
※ 介護については別記事のシリーズで掲載しています。「【老後に破産しない資金計画】公的介護保険でどこまでできる?要介護に備える5つの基本」でお伝えします。
いかがでしたでしょうか、今回はおひとりさま終活で相談の多い、介護離職の可能性についてお伝えしました。
おひとりさま終活で介護離職を考えやすい理由として、遠方に移住して結婚し、居を構えた兄弟に比べると、おひとりさまでるが故に小回りが利く、動きやすいことがあるでしょう。
けれども実際に介護生活を始めると、現実的に一人での介護の継続が難しいパターンが多いです。
ですから両親の介護が必要になった最初の段階から、介護保険を利用してケアマネージャーや兄弟との協力関係を視野に入れて、冷静なケアプランが必要になります。いくらおひとりさまであっても、ムリのある環境は決して続きません。
またおひとりさま終活を通して、介護離職リスクがいかに大きいかも気付く方が多いです。両親の介護とともに、自分の将来的な介護リスクまで見据え、できるだけ長期で健康に働き続ける道を模索してみてはいかがでしょうか。
まとめ
同居シングル、介護離職リスクとは
●自分の老後資金確保が困難
・年金額が少なくなる可能性
・今後の公的年金は不安定
・高齢化が進んでいる
・介護による寄与分は少ない傾向
・親の介護費用は親の年金と預貯金で
●実家に住み続ける
・実家が必ず相続できるとは限らない
・兄弟に相談して自分名義にしておく
・築年数が古いと修理修繕費用も必要
・親の生前にリフォームをしてしまう
※実家が残るなら…
・リバースモーゲージ
・売却して老人ホーム
●仕事と両立するケアプラン
・平日はディサービスなどを活用
・ケアマネージャーに相談
お電話でも受け付けております
