セルフネグレクトの原因と対策|家族ができる支援と孤独死を防ぐための「つながり」の作り方
「実家の親が片付けをしなくなった」
「身だしなみを気にしなくなった」
……それは単なる不摂生ではなく、セルフネグレクト(自己放任)のサインかもしれません。
近年、セルフネグレクトは一人暮らしの高齢者を中心にその割合は増加しており、周囲が放置してしまうと孤独死を招く深刻な問題に発展します。
背景には精神疾患や認知機能の低下が隠れていることも少なくありません。
本記事では、セルフネグレクトの早期発見のため、診断目安や家族ができる対策を解説します。
※この記事は供養を通じて多くのご家族に寄り添ってきた「霊園墓石のヤシロ」の視点から、大切な人の健やかな毎日を守るヒントをお届けします。(2026年2月18日公開)
セルフネグレクトとは?その意味と現状(予備軍の実態)
セルフネグレクトとは、生活環境や自らの健康を顧みなくなる「自己放任」を指します。周囲が気づかないまま進行しやすいため、正しい知識を持つことが重要です。
自己放任や環境の「放置」が招く心身の状態と周囲への影響
セルフネグレクトに陥ると、食事や入浴、掃除といった最低限のセルフケアを放棄してしまいます。
● ゴミが溜まった不衛生な環境を放棄することで、心身の状態は急速に悪化し、病気や転倒のリスクが高まります。
また、悪臭や害虫の発生など、近隣住民とのトラブルに発展するケースも少なくありません。
本人が助けを拒否することも多いため、周囲が「ただの不摂生」と見過ごさないことが大切です。
セルフネグレクトは、なぜ増える?現代社会における背景と統計データ(割合)
近年、セルフネグレクトの割合が増加している背景には、地域社会や家族との人間関係の希薄化があります。
● 上述の研究報告でも指摘されている通り、セルフネグレクトは孤立死(孤独死)の強力な要因となっています。
特に一人暮らしの高齢者が社会から孤立し、誰にも頼れなくなることで深刻化する事例が目立っており、現代社会の大きな課題となっています。
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セルフネグレクトに陥る主な原因・要因と特徴
セルフネグレクトは、単なる本人の性格の問題が要因ではなく、心身の深刻な変化が原因となるケースがほとんどです。
きっかけはストレスや疲れ?「精神疾患」との関連を解説
大きなライフイベントによる強いストレスや、慢性的な心身の疲れをきっかけに、意欲が著しく低下することがあります。
● 背景に精神疾患が隠れていることも少なくありません。
例えば、うつ病による無気力状態や、統合失調症による認知の歪み、アルコール依存症などが原因で、日常生活を維持する気力(セルフケアの意思)が失われてしまうのです。
親の認知症や加齢に伴う判断力の低下
◇ 高齢の親に多いのが、認知症の進行や加齢による身体機能の衰えです。
・「汚れている」という自覚はあるものの、体が動かず片付けを諦めてしまう。
・認知機能の低下により「ゴミを捨てる」という判断ができなくなる。
…こうした変化は家族でも気づきにくく、発見が遅れる一因となります。
[合わせて読みたい|親のひとり暮らしへの不安を解消]
セルフネグレクトは男性に多い?社会的孤立が招くリスク
性別で見ると、特に退職後の男性にセルフネグレクトの傾向が強く見られるという指摘もあります。
仕事中心の生活で地域社会との繋がりが薄かった場合、配偶者との離別や死別をきっかけに急速に社会から孤立し、自分を律する理由を失ってしまうためです。
こうした背景から、周囲の目が届きにくい「家の中」で静かに進行していくのが、この問題の恐ろしさでもあります。
【セルフネグレクトのチェックリスト】早期発見の症状と診断目安
セルフネグレクトは、本人が困りごとを隠したり、助けを拒否したり(援護拒否)する傾向があるため、周囲による早期の気づきが欠かせません。
親や家族に現れるサイン(身だしなみ・部屋の様子)
離れて暮らす親や家族に以下のようなサインが現れたら、注意が必要です。
● 身だしなみの異変:
季節外れの服を着ている、髪や爪が伸び放題、体臭が強くなった。
● 住環境の悪化:
部屋にゴミが溜まっている、異臭がする、郵便物がポストに溢れている。
● 健康管理の放棄:
薬を飲まなくなる、極端に痩せる、怪我や病気を放置している。
これらは単なる「加齢によるズボラ」ではなく、セルフネグレクトの深刻な兆候である可能性があります。
【家族の体験談】
「離れて暮らす父を久しぶりに訪ねると、郵便物が溜まり、家の中に異臭が漂っていました。
本人は『大丈夫だ』と言い張りますが、以前の父とは明らかに違う。これがセルフネグレクトの始まりだったのだと、後になって気づきました。」
(50代・女性)
[参照]
ただの「片付けられない」とセルフネグレクトの決定的な違い
性格的な「片付けの苦手さ」とセルフネグレクトには、決定的な違いがあります。それは、健康や生命を維持する意欲があるかどうかです。
単に片付けができない人は、不便を感じて誰かの助けを借りようとする意思が残っています。
● しかし、セルフネグレクトに陥ると、不衛生な環境で生活し、健康を損なうことに対しても無関心(自己放任)になります。
専門的な診断名ではありませんが、国の有識者会議等でも「孤独死・孤立死」の要因として用語の整理や実態把握が進められており、単なる性格の問題ではなく、支援が必要な状態であると定義されています。
【当事者の実例】
妻に先立たれた後、セルフネグレクト状態に陥ったある男性は「最初はただ気力が湧かないだけだったが、次第に『ゴミの中で死んでも構わない』と思うようになった」と語っています。
単なる「だらしなさ」ではなく、自分への関心を完全に失ってしまうのが、この問題の深刻な実態です。
セルフネグレクトへの対策と解決に向けたステップ
セルフネグレクトの解決には、本人だけの努力ではなく、外部の専門機関による適切な介入が不可欠です。
どこに相談すべき?行政・地域包括支援センターの活用
◇ まずは、お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談しましょう。
ここは高齢者の暮らしを支える総合窓口であり、セルフネグレクトのような複雑な問題に対しても、保健師や社会福祉士がチームで対応してくれます。
本人が拒否する場合でも、周囲からの相談として受け付けてもらえるため、早めに現状を共有することが第一歩です。
[参照]
医療機関(精神科・病院)での受診と適切なケア
◇ 背景に精神疾患や認知症が疑われる場合は、医療機関の受診を検討します。
セルフネグレクトは「病気ではない」と誤解されがちですが、うつ病や認知機能の低下を治療することで、少しずつ生活の気力を取り戻せるケースもあります。
本人が受診を拒む場合は、まずは家族だけで精神保健福祉センターなどの専門機関へ相談し、対応のアドバイスをもらうことも有効です。
[参照]
福祉サービス・介護保険による介入の進め方
◇ 身の回りのことができなくなっている場合、介護保険制度を活用した支援を検討します。
訪問介護(ホームヘルプ)による清掃や食事の介助、デイサービスでの入浴や社会交流などを通じて、生活環境を整えることができます。
介護認定を受けるための申請手続きも、前述の地域包括支援センターでサポートを受けることが可能です。
[参照]
家族や周囲にできるセルフネグレクト改善と予防
セルフネグレクトの解決には、無理やり環境を変えることよりも、本人の「自尊心」を傷つけない慎重なアプローチが求められます。
無理に片付けさせない「対応」のポイントと人間関係の再構築
◇ 最も注意すべきは、良かれと思って勝手にゴミを捨てたり、厳しく説教をしたりすることです。
セルフネグレクトの状態にある人は、強い不安や孤独を抱えていることが多く、強制的な介入は激しい拒絶や関係の断絶を招きかねません。
まずは「片付け」をゴールにせず、世間話や体調を気遣う言葉がけから始め、少しずつ信頼関係を再構築することが大切です。
本人が「この人なら頼ってもいい」と思える心の余裕を作ることが、状況改善の鍵となります。
ゴミ問題や通報に発展する前にできること
近隣からの苦情や行政への通報に発展する前に、まずは前述した地域包括支援センターや民生委員など、地域の「見守りの目」を増やすことが有効です。
● 家族だけで抱え込むと、共倒れになったり、感情的になって状況が悪化したりすることがあります。
第三者が介入することで、本人の「家族には見せたくない」という意地が和らぎ、福祉サービスを受け入れやすくなるケースも多々あります。
早期に周囲のサポートを仰ぎ、孤立を防ぐ体制を整えましょう。
【ヤシロからの提案】孤独死を防ぎ、心を整えるための「終活」
セルフネグレクトやその先にある孤独死を未然に防ぐために、私たちが今からできる最も前向きな活動が「終活」です。それは死への準備ではなく、これからの人生をより豊かに生きるためのステップでもあります。
家族との「つながり」を確認することが最大の予防策
◇ セルフネグレクトの根本的な原因の多くは、社会や家族からの「孤立」にあります。
だからこそ、日頃から家族や親しい友人とこまめに連絡を取り合い、現在の心身の状態や困りごとを共有できる環境を作っておくことが、何よりの予防策となります。
「何かあったらすぐに気づいてもらえる」という安心感は、自分自身を大切にするエネルギー(セルフケアの意欲)に直結します。
もしもの時の安心を。生前整理と供養の備えが「今」を豊かにする
もしもの時に備えて身の回りを整える生前整理や、自身の供養について考えておくことは、残された家族への思いやりであると同時に、自分自身の不安を解消するプロセスです。
不要なものを手放し、これからの人生に必要なものだけを選ぶことで、生活環境が整い、心にゆとりが生まれます。
死後の備えを万全にすることは、実は「今」という時間を不安なく、自分らしく過ごすための知恵なのです。
[合わせて読みたい|おひとりさま老後への備え]
まとめ:セルフネグレクトの克服は「孤立」を防ぐことから
◇ セルフネグレクトは、誰の身にも起こりうる「心の叫び」ともいえる状態です。
本人の怠慢や性格の問題と決めつけず、その背後にある精神疾患や、社会的な孤立という背景に目を向けることが解決への第一歩となります。
もし、ご自身の親や身近な人にセルフネグレクトの兆候が見られたら、一人で抱え込まずに地域包括支援センターなどの専門機関へ相談してください。
適切な介入と周囲の温かい見守りがあれば、再び自分自身を大切にする生活を取り戻すことは十分に可能です。
孤独死という悲しい結末を防ぐために。そして、誰もが自分らしい人生を最期まで全うするために。「つながり」を絶やさない社会を、私たち一人ひとりの小さな気づきから作っていきましょう。
※本記事の監修・運営について
このコラムは、墓じまいや供養のプロである「株式会社霊園・墓石のヤシロ」が運営しています。公平な情報提供を心がけていますが、専門家としての知見を活かした自社サービスのご案内も含まれます。
【監修者メッセージ】
セルフネグレクトは、誰にでも起こりうる「心の孤立」が原因です。日々多くの終活相談をお受けする中で感じるのは、自分や家族だけで抱え込まないことの大切さです。
「終活」は人生の終わりを待つ準備ではなく、今をより自分らしく、前向きに生きるためのステップです。住まいや供養の備えを整えることは、心の安心にも繋がります。一人で悩まず、これからの暮らしをより良くするための相談相手として、私たちを頼ってください。
【執筆・監修:永代供養ナビ編集長】
株式会社霊園・墓石のヤシロ 営業本部長 藤橋 靖雄
1998年入社。 お墓販売、商品企画を経て、多様化する供養の形に応えるサービス・霊園プロデュースだけでなく、営業企画、WEBマーケティングなど幅広い埋葬、葬送事業を担当。 また、墓じまいや終活に関する各地域の終活イベント・セミナーにも講師として登壇し、終活のお悩みごとを解決するトータルアドバイザーとしても活躍中。
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