御霊前・御仏前・御香典の違いは何?香典で表書きの意味・使い分け・包み方を詳しく解説
「御霊前と御仏前の違いは?」
「表書きで御霊前・御仏前の使い分け方は?」
「御霊前・御仏前の包み方・渡し方マナーは?」
通夜・葬儀・法要で参列者は香典を包みますよね。この際「御霊前」「御仏前」等の表書きを毛筆で記載しますが、宗旨宗派やお渡しするタイミングにより使い分けが必要です。
本記事では、香典の表書きで最も使われる「御霊前」を中心に「御仏前」との違い、「御香典」「御花料」等、その他の表書きとの使い分け方が分かります。
後半では香典「御霊前」「御仏前」の包み方・書き方、お渡しするタイミングやマナーも詳しく解説していますので、どうぞ最後までお読みください。
御霊前は香典の表書き
「御霊前」とは通夜・葬儀で参列者がお渡しする香典の表書きです。
家族・御親族の他、故人の知人・友人で通夜や葬儀に参列する際は、お悔やみの気持ちとしてお金を包みご遺族にお渡しします。
弔事で扱う御霊前は不祝儀袋に包みましょう。
不祝儀袋は文具店・コンビニ・百円均一等で市販される、白×黒の封筒です。水引は白×黒、もしくは双銀の結び切りを使用します。
「結び切り」とは結びなおすことのできない結び方です。出産祝い等の慶事で包む際の水引「蝶々結び」とは違い、二度と不幸が起きないよう結び切りを用います。
①御霊前の意味とは
御霊前は霊魂の前に差し出す金封やお供物を差します。
故人が亡くなってから四十九日目までを「忌中(きちゅう)」と呼び、故人は霊魂として冥土の旅に出ているためです。
四十九日目にしてあの世の行き先が決まると故人の魂は成仏して「仏」となります。そのため「御霊前」は四十九日の忌中に扱う表書きです。
②御仏前の意味とは
御仏前は「御佛前」とも書き、仏様を前に差し出す金封やお供物を差します。
故人は亡くなってから四十九日目に成仏し仏様となるため、四十九日以降の法要でお渡しする香典で扱う表書きです。
故人の魂が成仏する四十九日以降を「忌明け」とし、以後一周忌まではご遺族が喪に服す喪中となります。
③御香典の意味とは
四十九日法要は御霊前・御仏前のどっち?
「御霊前」の表書きを使う時期は四十九日法要前の忌中までです。
四十九日法要までは初七日から始まり、ニ七日・三七日・四七日・五七日・六七日の追善供養を執り行います。
故人の魂は四十九日の間に七日ごとの裁きを受け、四十九日目にしてあの世の行き先が決まるため、ご遺族・親族・知人友人は追善供養により極楽浄土への道を後押しする供養が「追善供養」です。
①四十九日法要では?
四十九日目にして成仏するため四十九日法要では「御仏前」の表書きを用います。そのため正確に「御霊前」の表書きは48日目までとなりますね。
四十九日法要では同日にお墓に遺骨を納骨する納骨式を執り行う家が多いです。この他、四十九日法要を目安に本位牌・仏壇を仕立て、魂を込める「開眼供養」を併せて執り行う家もあるでしょう。
②繰り上げ四十九日法要では?
四十九日法要は故人が亡くなってから49日目に執り行う法要です。
けれども忙しい現代では初七日に四十九日法要まで繰り上げて行う「繰り上げ四十九日法要」を執り行う家もあります。
また参列者が参列しやすいよう土日・祝祭日に日程調整する四十九日法要では、49日目よりも手前に移動しなければなりません。(沖縄県等、一部地域で例外もあります。)
故人が亡くなって49日目より手前で執り行われる四十九日法要であっても、表書きは「御仏前」と記載します。
宗旨宗派で違う御霊前マナー
故人が亡くなって四十九日目までを忌中とする考え方は仏教によるものです。また仏教であっても「忌中」の概念がない宗派では「御霊前」の概念もありません。
四十九日法要に参列する際には先方の宗旨宗派に倣った香典を準備します。
①キリスト教で御霊前は?
キリスト教で香典の表書きは花を献上するお金「お花料」「御花料」が適切です。またカトリックでは「御霊前」が使用できますが「御仏前」の概念はありません。
キリスト教において死=生命の終わりではありません。
カトリック・プロテスタントによって死生観に違いはありますが、人はこの世の生を終えることを「召天」「帰天」等と言います。
キリスト教では人が亡くなることは悲しむものではなく、天国の神様の元に召され、復活の日まで安息の日々が待っているのです。人々は成仏しないため「御仏前」の表書きは用いません。
②神道で御霊前は?
神道で香典の表書きは「御玉串料」・神様の御前に献上する「御神前」が適切です。神道においても霊(みたま)の存在はあるので「御霊前」も使用できます。
「御玉串料」は仏教のお焼香にあたる「玉串」代金との意味です。
神道では人が亡くなって50日目に行う儀式「五十日祭」をもって、故人の霊は家の子々孫々を守る守護神として迎え入れます。
神道においても四十九日目にして成仏する概念がないため「御仏前」は用いません。
③浄土真宗で御霊前は使わない
御霊前か御仏前か迷ったら?
四十九日法要に参列する際、先方の宗旨宗派が曖昧ならば「御香典」の表書きが安心です。宗旨宗派のない無宗教で行う「偲ぶ会」等では「御供物料」等でも良いでしょう。
また不祝儀袋を選ぶ際、宗旨宗派が分からなければイラストが描いてあるものは避けます。
仏教では蓮の花、キリスト教ではユリの花や十字架の描かれた不祝儀袋も使用できますが、神道では無地の封筒になるためです。
①御香典が安心な理由
「御香典」は故人へお線香等の香りを届けるお代金を差すため、どのような宗旨宗派でも失礼にはあたりません。四十九日法要であれば「御供物料」でも良いでしょう。
キリスト教ではあるもののカトリック・プロテスタントで迷う場合は「御花料」が共通です。プロテスタントで「御霊前」は使用しないため、迷ったら御花料としましょう。
②間違えてしまったら?
御霊前・御仏前を使い分けた香典の準備が適切ですが、間違えてしまっても気に病む必要はないでしょう。香典の表書きマナーは、地域によって異なるケースもあります。
なかには違和感を覚えるご遺族がいるかもしれませんが、ご遺族は時間を調整して参列してくれたことに感謝しているはずです。
御霊前の準備の仕方
弔事となる御霊前は白×黒、もしくは無地の不祝儀袋を選びます。
一般的には白×黒の水引きを掛けた不祝儀袋に包みますが、包む金額相場に比例して不祝儀袋の豪華さが変わるので注意をしてください。
包む金額が3千円以下であれば水引きがプリントされた簡易的な不祝儀袋です。包む金額が5千円~では白×黒の水引きが付いた不祝儀袋が適切です。
6万円~10万円未満の金額では豪華な中金封で水引きは双銀、10万円以上では大金封・特大金封の不祝儀袋を選びます。
①不祝儀袋の選び方
包む金額に比例して不祝儀袋を選ぶ他、宗旨宗派によっても水引きの色が異なります。特有の風習がある地域もあるので、思い当たる方は高齢の親族に確認するのも良いでしょう。
<宗旨で違う不祝儀袋> | |
①仏教 | ・水引き…白×黒、双銀 ・イラスト…蓮の花 |
②神道 | ・水引き…白×黒、双銀 ・イラスト…無地 |
③キリスト教 |
・水引き…なし ・イラスト…十字架、ユリの花 |
④無宗教 | ・水引き…白×黒、双銀 ・イラスト…無地 |
仏教・神道において関西では一部で黄色×白の水引きを用いる地域もあります。
無宗教の葬儀・法要等は包み方に特別な決まり事はありませんが、故人を偲びお悔やみの気持ちを表すために、一般的な不祝儀袋にお金を包む参列者が多いでしょう。
②表書きの書き方
「御霊前」「御仏前」等の表書きは包んだ表面の中央・上部に毛筆で記載します。筆ペンでも失礼にはあたりませんが、ボールペン等は簡易的な筆記用具ですので避けましょう。
故人が亡くなった悲しみの涙で墨汁が薄れるため、忌中の四十九日法要までは薄墨で書くとされてきました。
・御仏前(忌明け)…黒墨
無宗教の儀式では「偲ぶ会」等もありますが、目安としては突然の通夜・葬儀等の弔事では薄墨を使用し、四十九日法要等の日程調整をした弔事では黒墨で準備をすると良いでしょう。
表書きの下部分に記載するのは参列者の氏名、もしくは家名です。
③御霊前の中袋
御霊前に中袋がある場合、中袋の表面中央には包んだ金額を記載します。この際、金額は旧字体の漢数字を用いてください。
<旧字体の漢数字> | |
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
五 | 伍 |
十 | 拾 |
千 | 仟・阡 |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
金額の前には「金」後ろは「也」と書き入れます。例えば5千円を包む場合は「金伍阡圓也」、三万円は「金参萬圓也」ですね。
御霊前を包むにあたり旧字体の漢数字を使うのは改ざん防止のためです。
④中袋がない場合
御霊前を包む金額が3千円以下で水引きがプリントされた不祝儀袋等は、中袋がないものも少なくありません。
中袋がない不祝儀袋に包む御霊前では表面に表書き・参列者の氏名、裏面は左下に住所と氏名、その左側に包んだ金額を旧字体の漢数字で記載します。
⑤包む金額の金額相場
御霊前を包む金額は知人友人であれば一般的に5千円~1万円が相場ですが、故人との関係性や年齢によっても異なります。
ただし御霊前はご遺族へ向けた相互扶助の意味もあるため、金額相場より多く包む方もいれば、無理のない範囲内で抑えた金額を包む方もいるでしょう。
●家族・親族
・両親(子)…約5万円~10万円
・兄弟姉妹…約3万円~5万円
・祖父母…約1万円~3万円
・叔父叔母…約1万円~3万円
・親族…約5千円~1万円
●仕事関係
・上司…約5千円~3万円
・同僚…約5千円~1万円
・部下…約3千円~1万円
・関係者の家族…約3千円~5千円
・取引先…約5千円~1万円
●知人友人
・知人友人…約5千円~1万円
・知人友人の家族…約3千円~5千円
・地域の知人友人…約3千円~5千円
葬儀費用を出している喪主・施主・ご遺族、同居家族が亡くなった時の弔事はご遺族側になるため御霊前を準備する必要はありません。
御霊前の金額相場について、詳しくは下記コラムをご参照ください。
・香典の金額相場とは?実家や友人、親戚・義実家はいくらぐらい?家族で1つ包めば良い?
⑥お札の入れ方
お札は突然の訃報に急いで駆け付けたことを表すため、新札は避けて旧札を入れます。ただ、あまりくたびれたお札も失礼にあたるため、新札をひと折りしたお札が現代は一般的です。
弔事では肖像画が表面から見て裏側・封筒の底になる向きで納めます。弔事と慶事ではお札を入れる向きが正反対になるため、注意をしてください。
御霊前の包み方について、詳しくは下記コラムをご参照ください。
・【図解!】香典の正しい書き方・入れ方とは?表書きの違いや金額の書き方、渡し方も解説
御霊前の渡し方
参列者が多い一般葬では、受付を済ませた後に御霊前をお渡しします。
規模の小さな家族葬等は喪主やご遺族が受付で御挨拶をしていることもありますが、一般的には受付の方にお渡しする流れです。
喪主やご遺族は当日お忙しくしていますし、通夜や葬儀であまり多くを語ることは良しとされません。御霊前をお渡しする時は御挨拶を添えるのみとし、受付で速やかにお渡しして着席しましょう。
①御霊前を渡すタイミング
御霊前は通夜・葬儀のいずれか一方でお渡しして問題はありません。
通夜で御霊前をお渡ししたら、翌日はすでにお渡しした旨を受け付けにお伝えすれば良いでしょう。
②御霊前の持ち歩き方
御霊前は香典を入れる専用の包み「袱紗(ふくさ)」に入れて持ち歩きます。袱紗には慶事用もあるので、光沢のない黒・紫・草色等の落ち着いた色合いを選んでください。
袱紗がない場合は小風呂敷やハンカチ等でも大丈夫です。小風呂敷・ハンカチも袱紗と同じく、柄のない落ち着いた色合いのもので包みます。
袱紗に入れた香典は椅子に置く等は避けましょう。
③御霊前の渡し方
御霊前は受付を済ませた後のタイミングで、受け付けにお渡しします。袱紗を座布団のように香典の下に敷き、両手を添えてお渡しするのがマナーです。
香典の向きは表書きが相手から読める向きで差し出します。受け付けの前に向きを確認するとスムーズですが、出した時に向きが違うならば180度回転させてから前に差し出しましょう。
④お悔やみの言葉
御霊前をお渡しする際はお悔やみの言葉を添えます。ご遺族ではなく受け付けスタッフであっても、ひと言添えるよう注意をしてください。
「この度は誠にご愁傷様です」「心よりお悔やみを申し上げます」等の言葉が適切です。「御冥福をお祈りします」の「冥福」は仏教用語なので、キリスト教・神道では控えます。
⑤御霊前は郵送できる?
通夜・葬儀へのご案内を受けたものの参列できない等、事情があるならば御霊前の郵送も失礼にはあたりません。
御霊前は現金を郵送するため郵便局で現金書留で送りましょう。現金書留の封筒は、不祝儀袋を入れた状態で封入できる大きさを選んでください。
一般的に通夜・葬儀に参列できない時には、電報・供花等を送ります。電報には花やお線香等のお供物を添えて贈るプランもあるので、検討してみてはいかがでしょうか。
御霊前のQ&A
通夜・葬儀等へ参列する際、夫婦や家族・部署で香典(御霊前)を包む場合等、表書きや包み方に戸惑うことも多いですよね。「毛筆で書く自信がない」等の声も聞こえます。
ここでは香典(御霊前)を包む際に多い質問を集めたので、ご参照ください。
①香典辞退を受けた場合
喪主(施主)より香典辞退を受けた場合は、先方のご意向に従い御霊前を持参することは控えましょう。ムリに御霊前をお渡しすると、先方も香典返しの手配をしなければなりません。
代わりに果物や乾き菓子等のお供物、供花をお渡しする方が多いです。通夜・葬儀において3千円以内であれば香典返しを送る必要はないとされるため、3千円以内を目安に選ぶことをおすすめします。
なかにはお供物・供花も辞退する法要もあるため、この際も先方のご意向に倣うのがマナーです。
②夫婦で参列する場合
夫婦で参列する場合、御霊前は連名で包みます。表書きの下に夫の氏名・その左側に妻の氏名を並べて記載すると良いでしょう。
御霊前の金額目安も夫婦2人分として、約2倍の金額を包んでください。小さなお子様も一緒に参列するならば、約2.5倍ほどが包む金額の目安です。
ただし小さなお子様は法事の席への参列は控えた方が無難です。近しい親族等で参列しなければならない場合は、事前に喪主(施主)にご相談して許可を得てから参列しましょう。
③仲間・部署で参列する場合
サークルや会社の部署の代表として通夜・葬儀等に参列することもあります。この場合、複数人でお金をまとめて御霊前を包むケースも多いです。
複数人でまとめて御霊前を包む場合、ご夫婦と同じように表書きの下に氏名を記載します。立場や年齢順に上手が一番左・下手が一番右なので、参列者本人の氏名は一番右の位置です。
不祝儀袋の表書きに入らない3人以上の人数の場合、表書きには代表者の氏名のみを記載します。そして別紙の白紙にお金を出した人々の氏名を記載し、不祝儀袋に同封してください。
④学生だけど御霊前は必要?
参列者が学生の場合、基本的に御霊前を包む必要はありません。ご両親と共に参列するならば、ご両親の香典金額を多めに包みます。
高校生が友人・クラスメイト等と単身で葬儀に参列する場合でも、香典を包まなくても失礼にはあたらないでしょう。ただ対処法は多岐に渡り、正解はありません。
親の名義で香典を持参する・友人と連名で包む・友人と連名で供花やお供物を手配する、等の方法があるので、お悔やみの気持ちを伝えたい方は検討すると良いでしょう。
⑤表書きの印刷やスタンプはダメ?
文字が苦手だとして「御霊前の表書きを印刷・スタンプ等で代用したい」との相談も少なくありませんが、マナー違反にはあたりません。
お悔やみの気持ちを伝えるために手描きは丁寧な印象ですが、なかには印刷・スタンプでの表書きで準備する方もいるでしょう。
⑥香典返しを辞退したい
まとめ:「御霊前」は忌中の表書きです
通夜・葬儀で参列者が包むお金の表書きは、一般的に「御霊前」ですよね。これは仏教において故人がまだ成仏していない49日前に用いる表書きです。
通夜・葬儀では悲しみが癒えないタイミングとして、涙に濡れた薄墨で御霊前と記載します。四十九日法要に参列する際は、すでに成仏しているため表書きは「御仏前」です。
神道にも霊魂の考え方があるため「御霊前」の表書きでも良いのですが、キリスト教では「御花料」等が良いでしょう。また浄土真宗では通夜・葬儀から「御仏前」を使用します。
先方の宗旨宗派が分からない等、表書きが御霊前で良いか迷ったら「御香典」が最も通用する表書きです。
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