
精進料理とは?特徴や使ってはいけない食材など、精進料理を3分で分かりやすく解説!

「精進料理を振る舞いたいけど、特徴はなに?」
「精進料理で使う食材、タブー食材は?」
「精進料理のおすすめレシピは?」
精進料理は仏教の教えに基づいた料理になるため、考え方やタブー食材がヴィーガンとは少し違います。日本では通夜振る舞い等、法要後の会食「お斎」で扱う料理です。
精進料理を振る舞う時・いただく時にもマナーがあるため、慣れないお斎の席では緊張する方も多いですよね。
本記事を読むことで精進料理の特徴、タブー食材やおすすめレシピの他、精進料理をいただく時の基本マナーが分かります。後半ではお斎で振る舞うマナーも解説していますので、どうぞ最後までお読みください。
精進料理とは?

精進料理は修行の一環として仏教の教えに倣い、殺生を連想させる肉・魚類を使用せずに調理する食事です。主に大豆・野菜・果物・海藻・山菜・果物・穀物を調理してきました。
現代において精進料理は主に通夜振る舞い・精進落とし等、法事での会食「お斎(おとき)」で振る舞う料理として出されています。
本来は「精進潔斎(しょうじんけっさい)」、修行僧が仏道修行に励むために酒・肉類等の刺激を断った料理です。
本来は仏教の戒律に基づき、人を惑わせる煩悩を戒めるための料理、殺生を避けた料理です。精進料理の「精進」は、仏道に至る修行「六波羅蜜」のひとつでもあります。
①精進料理の「精進」とは?
「精進(しょうじん)」とは在家信者が行う仏教修行「六波羅蜜」のひとつで、雑念を除き一心に仏教修行に励むことです。
ビジネスでしばしば用いる言葉「精進致します」は、今後も引き続き仕事や勉学等に励み業績・成績をあげる意気込みを表します。
ひとつのことに集中して懸命に励む精進のため、刺激を抑制し雑念を払う食事が精進料理です。六波羅蜜について詳しくは下記コラムをご参照ください。
②日本の精進料理の歴史
精進料理は仏教とともに中国から伝来しました。995年~1001年頃に清少納言が書いた「枕草子」において精進料理の存在があることから、平安時代には原形があったのでしょう。
ただし平安時代の精進料理には魚・鶏肉等が使われていた文献もあります。
一方、現代のような精進料理が確立した時代は、禅宗が広まった鎌倉時代です。禅宗が広めた精進料理では肉・魚等、動物由来の食材が避けられました。
③精進料理とビーガンの違い
精進料理は修行僧が仏教の教えに基づいた結果、肉や魚を使わない料理になりました。
そのため基本的に動物由来の食材は使用しませんが、殺生された時を見ておらず、自分のために殺生されていない肉・魚は使用しても良いとする宗派も見受けます。
また精進料理は修行僧が修行に集中するため、刺激の強い食材もタブーです。例えばネギ・ニラ等の香りが強く煩悩を刺激する食材も禁じられています。
一方、ヴィーガンは菜食を徹底した結果であり、いつ・如何なる状況下でも動物の殺生は許されません。
精進料理でタブーの食べ物

精進料理は仏教の教えに倣い、修行僧がいただく料理ですので、仏教の教えに倣ったタブーの食材は数多いです。
国や地域・宗派によって細かくは異なることがありますが、基本的な精進料理で食べてはいけないタブー食材をご紹介します。
①動物性の食べ物
仏教の教えに基づく精進料理では、殺生をイメージする動物性由来の食材はタブーです。肉類・魚類の他、厳密にはチーズ等の・動物性由来の食材も避けます。
ただし自分のために殺生していない肉・魚類は良いとする宗派・地域もあるでしょう。
②刺激の強い香り
刺激の強い香りを持つ食材も、人間の煩悩を刺激するとして精進料理においてはタブー食材です。刺激が強く避けるべき食材を精進料理では「五葷(ごくん)」と言います。
五葷は基本的にニラ・ネギ・ラッキョウ・野蒜(ノビル)・にんにく等のネギ類となり、薬膳料理の考え方では陰性の気が強く、五臓(内臓)や精神に負担がかかりやすいとされてきました。
精進料理にのみタブーとされる食材なので「オリエンタルヴィーガン」とも呼ばれ、仏教では色欲・怒りを刺激するとして、避けるべき食材にあげています。
③精進料理にお酒は禁忌?
精進料理の調理作法

精進料理を広めた曹洞宗(禅宗の一派)の開祖「道元」の書物「典座教訓」では、食材や調理道具に敬意を表し整理整頓を心がけ、手間を惜しまず調理することを説くとともに、三心(さんしん)の教えがあります。
・老心(ろうしん)…心配り
・大心(だいしん)…おおらかな心
肉類・魚類の動物性由来の食材を使わない精進料理では、四季折々の植物性食材を彩り鮮やかに盛り付けて季節を感じ、自然の恵みに感謝する調理法が好まれるでしょう。
また本来の精進料理では「五味五色五法」が決まり事です。
①調理方法
調理法を表す「五法」は、生・煮る・蒸す・揚げる・炒めるの5つの調理法となり、それぞれの食材の旨味を凝縮し、栄養価を最大限にいただく調理法を選びます。
・生…サラダ・生野菜等
・煮る…煮物・おでん等(効果的に栄養を採る)
・焼く…焼き野菜等(旨味を凝縮)
・蒸す…茶碗蒸し・おこわ等(食材の栄養価を逃さない)
・揚げる…天ぷら・大豆肉のから揚げ等(油が絡み食感を良くする)
法事の会食「お斎」では季節の野菜を揚げた「精進揚げ」が人気です。季節の野菜を用いて食材の持ち味をふんだんに生かすことがポイントとなるでしょう。
②味付け
味付けを表す「五味」は、甘・酸・辛・苦・塩です。さらに精進料理は刺激を少なく五臓六腑に優しい味付けにするため、「淡味(たんみ)」を加えた六味となります。
・甘味…砂糖・みりん・あんこ・果物等
・酸味…酢・レモン・林檎等
・辛味…姜・唐辛子等(血行を促進する食材)
・苦味…ゴーヤ・苦瓜・レンコン等
・塩味…塩・昆布・かつお節等
食材の甘味・苦味等の持ち味を最大限に生かす味付けを心がけ、食材を一から十まで無駄にしない味付けが良い調理法です。
③献立
精進料理の献立「五色」は、赤・青(緑)・黄・白・黒の色鮮やかに整えます。
お供え物の御膳「御霊供膳(ごりょうくぜん)」は基本的な精進料理の献立と言えるでしょう。
お膳の上にご飯・汁物・三菜が基本です。ご飯・汁物・煮物・和え物・香の物の5品を並べます。
・親碗(飯碗)…ご飯
・汁椀(汁物)…もずくのみそ汁等
・平碗(煮物)…筑前煮等
・壺碗(和え物)…胡麻和え等
・高坏(香の物)…たくあん等
「高坏」は「たかつき」と呼び、少し背の高いお皿です。高坏に添える香の物は3切れは「身切れ」とし縁起が悪いため避け、2切れを添えます。
④もどき料理
現代では、植物性由来の食材を肉類や魚類に似せて調理する「もどき料理」が定評があります。この「もどき料理」は日本はもちろん、中国や台湾でも人気を見せています。
例えば、湯葉をベーコンやハム等の加工肉のように見せたり、刺身に似せたコンニャク、うなぎの蒲焼に似せて加工した豆腐料理「うなぎ蒲焼もどき」などがあるでしょう。
定番の精進料理レシピ

精進料理をいただくお彼岸やお斎では、肉類・魚類を避けながらもボリュームがあり豪華さを演出できる天ぷら料理が人気です。
春のお彼岸ではタラの芽等、季節野菜の天ぷらをふんだんにいただいて、春が訪れるお祝いとする家もあるでしょう。
①けんちん汁
けんちん汁は精進料理で良く調理される汁物です。
出し汁は昆布・干し昆布が一般的で、食材はゴボウ・ニンジン・豆腐・コンニャク等の他、厚揚げ等、ご家族の好みに合わせて自由に選びます。
精進料理のけんちん汁は薄味になりますが、最後の味付けに醤油・ごま油・昆布茶・塩等を加えるとコク深い味わいになるでしょう。
また、うどんを入れるとけんちんうどんになりお昼時にも活躍します。
②筑前煮
筑前煮の出し汁も昆布・干し昆布・干しシイタケ等が基本です。昆布は沸騰する前に取り出しましょう。
食材は一般的に、ニンジン・ゴボウ・昆布・レンコン・コンニャク・厚揚げ等です。ニンジンやゴボウは食材をひと口大に切っておきます。
コンニャクは灰汁取りのため湯がいた後、鍋で炒めて水分を飛ばしましょう。レンコンは酢水に晒します。
昆布を取り出し沸騰したら、下準備を済ませた食材を入れて煮たたせます。沸騰したらみりんを入れてアルコールを飛ばしましょう。
味付けは醤油とお砂糖です。精進料理では薄味「淡味」なので、煮詰めて味を濃くしないように注意をします。
③飛竜頭(ひりょうず)
精進料理の人気料理が「飛竜頭」です。豆腐に食材を混ぜて揚げた料理となりますが、多少の肉類があっても良いとするならば、鶏ひき肉を加えることで、より美味しく仕上がるでしょう。
木綿豆腐は食材がまとめやすいよう、水抜きをします。ペーパータオルで包んだ豆腐の上に小さなまな板・重しを乗せて、豆腐の厚さが半分になるまで水を出してください。
つなぎとして里芋等の食材が便利です。茹でて皮を剥いたらよく潰します。もしくは片栗粉等でつないでも良いでしょう。
併せる食材は、枝豆・コーン・芽ひじき・ニンジン・シイタケ等があります。ニンジンやシイタケは小さな賽の目に切りましょう。ひじきは水に戻し、具材は一度炒めても良いです。
豆腐と食材を混ぜ合わせたら、薄口醤油・塩・みりん等で味付けてタネを作ります。種はスプーンですくって丸く整えて、120度前後の中低温の油で揚げます。スプーンは食材をすくう前に油に少し通すと食材がくっつきにくいでしょう。
精進料理を食べるマナー

精進料理は目の前に提供される食べ物に感謝して、よく咀嚼してよく味わい、ご飯のひと粒も残さずいただくことを良しとします。
食べ物と向き合い「いただきます」「ごちそうさま」と御挨拶をしていただきましょう。最初に汁物をいただき、ご飯と交互にいただく流れです。
法事の席でいただくお斎では、僧侶や目上の方々が最初のひと口をいただくのを見届けてから、自分も口を付けます。
①正しい姿勢
お食事の席はいつでも姿勢を正しくいただくことは大切ですが、特に精進料理では姿勢を正すことを意識していただくことが修行の一環です。
目の前の食べ物と向き合うために背筋を伸ばし、お椀は両手で手に取ります。汁物をいただく時には、汚れた箸先を周囲に見せないために汁椀のなかに入れるのが作法です。
②ひと口ごとにお箸を置く
精進料理はひと口・ひと口、口に入れるごとに箸を置くとされます。お箸を置く時は不用意に音を立てないよう注意をしましょう。
お食事を口に入れて箸を置いたら、口に入れた食事に集中し咀嚼していただきます。しっかりと噛みしめて味わうことが大切です。
③食後にお茶・白湯を飲む
精進料理では最後にお茶や白湯をお椀に注ぎいただきます。一般的に食べ終わったご飯碗に、お茶や白湯を注ぐ方が多いでしょう。
普段はコップや湯呑み等を使うため、不思議に感じる方も多いですよね。これは椀に付いたご飯粒等を取って、一切の食材を残さずいただくことを目的としているためです。
ご飯碗に注いだお茶・白湯等を飲みながら、お椀にこびりついたご飯粒等をキレイに取りましょう。
法事における精進料理

法事で施主は、法要後に会食の場「お斎」を設けますよね。僧侶をお呼びして読経供養を行う仏式の法事ではお斎の料理も精進料理になるでしょう。
自宅・寺院・斎場の会場等を利用してお斎を振る舞うが、自宅等では仕出し弁当を手配することも多く、約数千円~3万円ほどが費用相場です。そのため参列者は、お斎の費用も考慮してお金を包む必要があります。
ただし近年ではコロナの影響もあり、お斎を振る舞わない法要も見受けるようになりました。日頃から会っている家族のみで執り行う法要等では、お斎の場を設けない選択もあるでしょう。
①「お斎」には誰を呼ぶ?
お斎を主催し、料理のお代金を負担するのは施主です。
施主は一般的に、いただいた香典をお斎を振る舞う費用に充てるため、基本的には参列者全員へご案内します。
お子様が同伴する場合は、お子様用の食事・椅子・飲み物・好き嫌い等に配慮しましょう。
②僧侶へお斎のご案内はする?
法事では読経供養を依頼した僧侶にも、お斎のご案内をするのが作法です。
ご案内したうえで、僧侶がお斎を欠席される場合には、お布施とは別封用で「御膳料」としてお金を包みます。
御膳料を包む時には、白い封筒の表書きに「御膳料」と黒墨の毛筆で記載し、お布施の下に添えます。御膳料の目安は数千円~2万円程、お斎1人分のお食事代金を目安に包みましょう。
・お斎(おとき)とは?精進落としとは違うの?お弁当でも良い?お斎の相場や準備を解説!
まとめ:精進料理は修行僧のための料理です

精進料理は本来、仏道に励む修行僧がいただく料理です。殺生を慎み、煩悩を刺激しない仏教の教えに基づき、肉類・魚類等の動物性由来の食材を控える精進料理が多いでしょう。
現代の日本で精進料理は専ら通夜振る舞い・精進落とし等、法要後に施主が振る舞う会食「お斎(おとき)」で扱う料理です。
仏教宗派や地域によってはお魚が出る精進料理も見受けます。殺生を慎むものの、自分のために殺生が行われていない・殺生を目撃していない食材は扱っても良い、とする宗派もあるためです。
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