
【相続対策】遺言で代償分割を指定すれば家を残せる?相続で住まいを残す3つの分割方法

生前に遺言で「代償分割」を指定することにより、不動産を現金化することなく、住まいを残した財産分割が可能です。
遺言書で行う「代償分割(だいしょうぶんかつ)」とは、不動産など分割できない遺産を相続した人が、他の相続人に対して相応の現金(代償金)を支払う、財産の分配方法となります。
配偶者やまだ成人していない家族など、住居を残したい家族がいる時には、遺言で代償分割を指定することで、家族の住まいを残すことができるでしょう。
遺言書で代償分割を指定すれば家を残せる?相続で家族の住まいを残す3つの分割方法とは

相続の基本

被相続人が亡くなられた後、一般的にそれぞれの法定相続人の相続財産の取り分は、法律の規定で決まっています。
この取り分が「法定相続分」となり、民法が定めている配分基準は以下です。
<法定相続分の配分基準> | ||
(1) | 配偶者のみが相続人の場合 | 2分の1 |
(2) | 子のみが相続人の場合 | 2分の1 |
(3) | 直系のみが相続人の場合 | 3分の1 |
法定相続分はあくまで基準なので、相続人同士で話し合い分配する相続を決めていきます。
反対に言えば、法定相続分はあくまでも取り分で揉めないためのガイドラインであり、相続人同士が納得しているのであれば、法定相続分に従う必要はありません。
遺言で代償分割を行う理由
遺言で代償分割を指定する場合、法定相続分が定める配分基準通りに、きれいに分割できない相続財産を、揉めずに残したい理由がほとんどです。
例えば実家が5千万円・残る預貯金が3千万円あった場合、実家を売却して現金化した方が、等分に分割しやすいでしょう。
けれども実家を売却することで、自分亡き後に残る配偶者や未成年の末の子どもなど、住居を失う可能性も出てきます。 このような事態を回避するために、被相続人が予め生前に遺言で代償分割を指定する場合が多いでしょう。
住まいを残す3つの方法

仮に遺言による代償分割の指定がない場合、不動産や車などの相続財産は、主に3つの方法でそれぞれの法定相続人に分割されます。
<住まいを残す、3つの分割方法> | |
代償分割 | 不動産を相続した代わりに現金で支払う |
現物分割 | 不動産などの現物をそれぞれ分けて相続する |
共有分割 | 不動産の権利を分割、共有して相続する |
相続財産を単純に分割する方法としては、この他、不動産財産などを売却などで現金化する「換価分割」もありますが、前述したように、これでは住まいが残らないため、ここでは入りません。
代償分割とは
遺言で指定されやすい「代償分割(だいしょうぶんかつ)」とは、法定相続人の1人が不動産を取得し、他の法定相続人には代わりに現金(代償金)を支払う分割方法です。
例えば、実家が残された時、弟が「不動産を受け継ぎたい」、兄が「売却して現金にしたい」と意見が分かれた場合に、弟が実家を相続し、兄に代償金を支払います。
遺言による代償分割が決まっても、不動産を相続した側は銀行などから借金をしてでも何とか現金を揃えて、代償金を他の法定相続人に支払わなければならないからです。
そうなると返済が困難になり、遺言による代償分割でせっかく住まいが残っても、借金返済によって、その家を手放すことにもなり兼ねません。
また不動産価値が下落した場合、返済が困難になり破産する可能性もあります。
現物分割とは
遺言書で指定する分割方法は代償分割だけではありません。他の方法としては(1)現物分割や(2)換価分割の2種類です。
<現物分割と換価分割> |
||
(1) | 現物分割 | 不動産を現物のまま分割 |
例えば、長女には不動産・次女には自動車・三女は現預金など、相続人同士で話し合い、納得すればそのまま遺産を相続できます。 | ||
(2) | 換価分割 | 相続遺産を売却した現金で分割 |
金銭的に平等分配できるため親戚間での争いが少なくなります。 |
しかし不動産を売却するには時間と手間がかかります。この手間を誰が負担するかは問題になる可能性があるでしょう。
手続きする時の名義を誰にするか・共同名義にするかなどで、課税率が変動する恐れがあります。
※ 築年数が古い実家を売却して現金化したいものの、なかなか売れない事例もあるでしょう。相続した不動産を売却したい場合は、下記にて詳しく解説しています。
共有分割とは
「共有分割」とは、相続する権利を共有する分割方法です。例えば実家を相続する場合、実家全体を10割としたら、配偶者7割・息子に3割のように設定して共有します。
遺言によって代償分割のように指定もできますが、被相続人としても共有分割は心配の種にもなるため、あまり共有分割を遺言で指定する事例は多くありません。
● 「共有分割」は、相続した持ち分をどちらも主張ができるので、ご自宅を処分することもありませんが、将来的に揉め事の原因となる可能性が高いためです。
例えば不動産の維持や売却には、全ての共有者の同意が必要になります。「不動産を売却したい」と意見が一致したとしても、「時間をかけても高値で売りたい」「安くてもすぐに売却したい」など、詳細で揉めることもあるでしょう。
このように考え方の違いで揉め事の対象になってしまうため、安易に選択しないように注意する事が大切です。
配偶者であれば「配偶者居住権」を利用できる

被相続人が生前にできる家族の住まいへの配慮として、遺言による代償分割の指定がありますが、相続発生後に配偶者が今まで住んでいた家に住み続けたい場合、「配偶者居住権」の利用も可能です。
「配偶者居住権」は2020年4月から施行された制度で、被相続人の配偶者が他の法定相続人に対してこの権利を主張すると、不動産財産の(1)居住権(2)所有権に分けた分割ができます。
●例えば、母親と子ども1人が法定相続人、相続財産は3,000万円の実家のみだったとします。この場合、本来は母親1,500万円・子ども1,500万円が法定相続分です。
→配偶者居住権によって居住権と所有権に分けた場合、下記のような分配が可能になります。
・母親 … 実家の居住権、1,500万円
・子ども … 実家の所有権、1,500万円
現実的に母親は今まで住んでいた実家に住み続けることはできますが、所有権は子どもに移る形です。
配偶者居住権を利用すれば、遺言で代償分割を指定しなくても住まいは残ります。不動産財産の権利で分けるので、預貯金財産が充分にない場合にも助かる方法です。
まとめ
遺言により代償分割を指定することは可能ですが、その内容によっては法定相続人全員の納得を得ることができません。
そうなると相続を受けた本人が、相続した不動産財産を名義変更する相続登記などの段階で、他の法定相続人の協力を得ることができずに、苦労をするかもしれません。
※詳しくは別記事「【不動産の相続】車や実家を相続した時の名義変更、必要書類と費用・手続き5つの手順とは」などをご参照ください。
また、何らかの事情で残された家族に家賃収入が入る不動産財産を相続させたい人もいますよね。このような場合は、相続した後に青色申告が必要です。
家賃収入のある不動産を相続した後の青色申告について、別記事「【不動産の相続】家賃収入がある不動産など、相続後に確定申告が必要な4つのケースとは」に詳しいので、コチラをご参照ください。
まとめ
家族に住まいを残す3つの方法
<住まいを残す分割方法>
・代償分割
・現物分割
・共有分割
※現金化する方法は換価分割
<配偶者居住権>
・所有権と居住権に分ける方法
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