
任意後見制度で認知症になった親の財産を守る|手続き7つの手順と任意後見制度3つの種類

任意後見制度は、認知症になった親から財産や生活を守る有効な手段のひとつです。
認知症になると判断能力が弱まるので、詐欺にあってしまったり、余計なものに大金をはたいてしまう事例も少なくありません。
人生100年時代の今、親が安定した生活を送るためには財産を賢く使う必要がありますが、判断能力の低下が起きると財産の管理ができなくなってしまいます。
そこで子ども(など後見人)が親の財産管理を支援できる方法が、任意後見制度です。
そこで今回は、「任意後見制度」の利用方法や手続きの仕方などを解説していきます。
任意後見制度で認知症になった親の財産を守る|手続き5つの手順と任意後見制度3つの種類

任意後見制度とは?

「任意後見制度」とは認知などにより判断力が低下した時を想定し、事前に本人が援助者を任意で選ぶ制度です。
任意後見制度は人の財産を管理する重要な契約です。
そのため、任意後見制度の契約を交わす時には公正証人役場で、必要な書類の作成が、法律によって義務付けられています。
任意後見制度の効力が発生する条件
また任意後見制度は、契約したらすぐに効力が発生すると言うわけではありません。
(1)本人の判断能力が低下する
(2)家庭裁判所で任意後見監督人が選任される
任意後見監督人は、主に司法書士や弁護士の選任が多いでしょう。
文字通り、任意後見人を監督する人を差します。
任意後見制度の種類

任意後見制度には3つの種類があります。
この3つの種類と特徴を理解して、それぞれの家庭で適切な制度を選びましょう。
(1)即効型
(2)将来型
(3)移行型
一般的には(3)移行型の任意後見制度が多く取られますが、状況によっては即効型や将来型を選ぶケースもあるでしょう。
契約者本人の認知症や知的障害の状態を確認しながら、適切なものを選びます。
(1)即効型
「即効型」の任意後見制度では、法定後見における補助相当の場合、本人の意思があり、任意後見制度の契約を締結する可能な場合に、検討することです。
●契約者本人が軽い認知症や知的障害又は精神障害であったとしても、軽い症状で本人の意思がハッキリとしているのであれば、契約を締結することを検討できます。
そのため、即効型は契約者本人に認知症などの症状が現れてからでも検討できる点が特徴であり、大きなメリットです。
けれども契約者本人としては、認知症や知的障害の症状が現れてから、これらの制度を理解する必要があります。
そのため不利益を被る契約内容である場合、本人との間でトラブルになる可能性もあるでしょう。充分に注意をして契約を進めてください。
(2)将来型
「将来型」の任意後見制度では、本人の意思や判断力が低下する前、つまり健全でいる時に、任意後見制度の契約を締結します。
●契約者本人の意思や判断力がハッキリとしている時に、将来的な認知症や判断力の低下を想定し、予め自ら後見人を選定する種類です。
そのため任意後見制度の契約を交わしたからと言って、すぐに効力を発揮する訳ではありません。
その後、契約者本人が認知症や精神障害になり判断能力が低下し、財産管理が不十分になった時に、初めて任意後見監督人の選任を申し立て、任意後見を開始します。
(3)移行型
「移行型」の任意後見制度は、認知症などで契約者本人の判断能力の低下が見られる前から、適切に利用できて便利な制度なので、任意後見制度3つの種類のなかでも、最も多く選ばれる種類です。
●任意後見制度の締結をするとすぐに、後見人は委任契約の範囲内で財産管理や見守り事務などを行うことができます。
→見守り契約
・生活支援
・療養看護
→財産管理契約
・財産管理
・任意代理契約
・死後事務委任契約
…など。
そして契約者本人の判断能力が低下すると、任意後見制度に移行する仕組みです。
任意後見制度でできること

「任意後見人」とは、契約者本人との間で任意後見制度の契約を締結し、契約者本人の財産や医療介護に関する業務を行う人を差します。
任意後見人が行う業務は下記のような事柄です。
・生活費の管理
・生活のための財産購入
・年金など定期的な収入の受領
・定期的な支出の支払い業務
・金融機関との預貯金取引
…ですから自分の生活の全てを預ける存在となります。
自分の判断能力が低下した後で、自分の意思が通らないまま財産管理されるのは不安な人もいるでしょう。
そこで任意後見制度では、まだ判断能力があるうちから、自分の財産を託す任意後見人を選ぶことができます。
(1)自分で後見人を選ぶことができる
(2)自分が希望する生活ができる
年齢を重ねると、まだ判断能力があったとしても財産管理が大変になりますが、任意後見制度で移行型を選ぶ場合、元気なうちから信頼できる人に財産管理を任せることもできます。
(1)自分で後見人を選ぶことができる
契約者本人としてはまだ判断能力がある時点から、家族や専門的な第三者(弁護士や行政書士など)と言った、信頼できる人に自分の財産を託すことができる点がメリットです。
(1)身近な人
・家族
・友人
(2)専門的な第三者
・司法書士
・弁護士
・行政書士
…など。
自分にとってとても信頼がある、最適な人を選ぶことができます。
(2)自分が希望する生活ができる
任意後見制度は、元気なうちに自分の希望する生活ができる点もメリットです。。
例えば、将来的に自分が認知症になった場合、「〇〇みたいな生活を送らせて欲しい」と支援してほしい内容を事前に決めることができます。
任意後見制度の7つの流れ

任意後見制度の契約は、下記7つの手順で進めます。
公証役場で公正証書を作成するので手間暇は掛かりますが、その分、将来的に信頼できる契約になるでしょう。
反対に言えば、一度契約をするとその効力は強いため、契約者本人は充分に信頼できる人を選任しなければなりません。
(1)後見人を決定
(2)契約内容の決定
(3)任意後見契約及び締結、公正証書の作成
(4)後見登記の依頼
(5)監督人選任の申し立て
(6)監督人の選任
(7)後見人業務開始
前述したように監督人選任の申し立て以降の業務は、任意後見制度の種類や契約者本人の判断能力の状況によってもタイミングが変わってきます。
(1)後見人を決定
まず最初は、後見人の決定です。
任意後見制度では、この後見人を「任意後見受任者」もしくは「受任者」などと呼びます。
任意後見受任者はとても重要な役割があるので、信頼できる人を選任するとが大切です。
(2)契約内容の決定
将来支援してくれる受任者を決めたら、次に契約内容の決定をしましょう。
自分の判断力が低下して衰えた時に「何を・どのように」支援してもらいたいかをライフスタイル・ライフプランに沿って決定していきます。
(3)任意後見契約及び締結、公正証書の作成
任意後見契約及び締結をする際は公正役場に出向き、公正証書の作成・発行をしてもらいます。
(4)後見登記の依頼
次に任意後見契約を締結した後、公証人は法務局に後見登記の依頼をします。
(5)監督人選任の申し立て
本人の判断力が低下した場合は家庭裁判所で任意後見監督人を選任してもらうための申し立てを行います。
(6)監督人の選任
締結後、監督人の選任が家庭裁判所から決定通知が来た後、法務局に登記することになります。
(7)後見人業務開始
全ての手続きが終了したら後見人業務開始です。
最後に
以上、今回は任意後見制度の種類や役割、契約を交わす7つの手順をお伝えしました。
今、大阪では終活を進める人々が増え、終活を通して任意後見制度も注目されています。
65歳を過ぎた頃から契約を交わす人も少なくありません。
早い段階で任意後見制度を利用することで、将来を憂うことなく、安定して過ごすことができるでしょう。
若年性アルツハイマーなど、認知症にはさまざまな種類があるため、「私はまだ若いから…」と言っても、実はどのタイミングで症状が現れるかわからないというのが現状です。
このような「いつ・どのタイミングで認知症になるかわからない」ことを踏まえ、事前に対策を取る人が増えています。
まとめ
任意後見制度の基礎知識
●種類
(1)即効型
(2)将来型
(3)移行型
●役割
・財産管理(保管など)
・生活費の管理
・生活のための財産購入
・年金など定期的な収入の受領
・定期的な支出の支払い業務
・金融機関との預貯金取引
…など
●後見人になる人の例
(1)身近な人
・家族
・友人
(2)専門的な第三者
・司法書士
・弁護士
・行政書士
…など
●契約の手順
(1)後見人を決定
(2)契約内容の決定
(3)任意後見契約及び締結、公正証書の作成
(4)後見登記の依頼
(5)監督人選任の申し立て
(6)監督人の選任
(7)後見人業務開始
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