
遺産相続で起こりやすいトラブルの事例16選とその対処法は?揉めないための準備

「遺産相続問題ってどんな家でも起きるの?」
「遺産相続で揉めるのはどんなケース?」
「相続トラブルを避けるためにできることは?」
遺産相続のトラブルは、自分の家族には無縁だと思っている人も多いでしょう。しかし、ごく一般の家庭でも相続トラブルは起こっています。
この記事では、遺産相続で起こりやすいトラブルの事例とその対処法、遺産相続で揉めないためにするべき準備について解説します。この記事を読めば、相続問題で家族や親族が揉めやすい原因と、それに対処できる方法が分かるでしょう。
今後相続が待っている人はこの記事を参考に無用なトラブルを避け、スッキリとした形で遺産の分割を終えてください。
遺産相続でトラブルが起きる理由
遺産相続を機にこれまで良好だった関係が崩れてしまうことは、決して珍しいことではありません。また、相続財産総額が多くなくてもトラブルに発展するケースが往々にしてあります。
遺産相続でトラブルになる原因は1つとは限りません。原因となる事象が複雑に絡み合い、解決が難しくなるケースも見受けられます。
原因を理解していれば、問題が発生する前に対策を講じておくことも可能となるため、前もって考えておくことが重要です。
遺産相続で起こりやすいトラブルの事例16選とその対処法
血縁関係にあったり、もともと仲が良かったりした家族間・親族間においても、遺産相続に関わるトラブルは、さまざまな要因で起こりえます。
遺産相続で起こりやすいトラブルの事例とその対処法について見ていきましょう。
1:連絡のとれない兄弟がいる
遺産相続が開始する前から兄弟間が疎遠だったり仲が悪かったりすると、連絡すらとれないことがあり、話がまとまりづらいでしょう。
また、仲が悪いと話が噛み合わないことも多く、互いに主張を譲らず、泥沼にはまっていくこともあるため注意が必要です。この場合は、専門家や第三者に間に入ってもらうと良いでしょう。
2:相続人が複数人いるが相続財産が不動産しかなかった
複数の相続人がいるうえに、相続財産が不動産しかないもしくは相続財産の多くを不動産が占める場合もトラブルになりやすいでしょう。
現金や預貯金であれば相続人の数に応じて分割しやすいですが、家や土地などの不動産は平等に分割することが難しいからです。不動産は分割やその評価が難しいため、トラブルの原因となることが多いでしょう。
また、高価になりがちな家や土地を一人が相続すると他の相続人とのバランスがとれなくなるため、十分な話し合いが必要になります。
3:兄弟間の分配方法についてトラブルになっている
兄弟間での分配方法について揉めることもあるでしょう。親から子どもへの遺産だけでなく、兄弟の一人が亡くなったときに残された兄弟間でそのとり分について揉めることもあります。
仲の良かった兄弟が遺産相続を機に不仲になるというケースも多いため、被相続人の生前から遺産相続を想定して、互いのことを思いやりながら冷静に話し合っておくことをおすすめします。
4:被相続人に内縁の配偶者がおり遺産を要求している
被相続人の内縁の配偶者が遺産を要求する場合もあります。内縁の配偶者とは、共に生活して事実上は婚姻関係にあるものの婚姻届は出していないため、法律上配偶者として認められていない相手のことです。
内縁の配偶者の場合は相続権がありませんが、内縁の配偶者(被相続人)を突然亡くして生活に困ることもあるため、トラブルに発展するケースもあります。
こういう場合は、有効な遺言書を用意しておくことが大切でしょう。
5:分割協議後に遺言書が出てきた
遺産分割協議の終了後に遺言書が発見される場合があります。遺言書には被相続人の意思が反映されているため、形式が守られている遺言書であれば原則として遺産分割協議をやり直すことになります。
ただし、相続人全員が遺言書の内容に同意していたり、遺言書に記された遺贈分が放棄されたりするのであれば、遺産分割協議をやり直す必要はありません。
このような事態を招かないよう、遺産分割前にしっかりと遺言書の有無を確認しておく必要があるでしょう。
6:相続財産に負債が多い
相続財産に負債が多い場合は、通常の遺産相続が難しくなるでしょう。一般的には相続放棄を選択することになります。
相続放棄とは遺産のプラス・マイナスにかかわらず、すべての相続を拒否する手続きのことです。これにより、初めから相続人ではなかったとみなされます。
ただし、一度相続放棄をするととり消しはほとんど認められないことや、負の遺産の相続権が後順位の相続人へ移行する可能性が考えられるため、相続放棄についてはよく考えて決めましょう。
出典|参照:第三節 相続の放棄|e-Gov法令検索
7:相続人が多すぎて揉めている
相続人が多いと遺産分割協議がなかなかまとまらず、揉めたり話し合いが長引いたりする可能性が高くなります。
大人数での話し合いはさまざまな立場の人がいてまとまりがつかない、遠方に住む相続人がいてコミュニケーションがとりづらいなどの障害が起きやすいため、話し合いの方向性やまとめ役を決めておくなどの工夫が必要です。
8:遺言書はあるが内容が偏っているため揉めている
遺言書の内容が偏っていると、相続人の納得を得られずトラブルに発展することがあります。たとえば、遺言書で相続人の一人や相続人以外へ多くの財産を遺贈するような場合です。
遺言書における被相続人の意思は、基本的には尊重されます。しかし、相続人の遺留分を侵害している場合は他の相続人から遺留分を請求されるなど、争いに発展する可能性があるでしょう。
9:介護を一人でがんばったため寄与分を請求したい
民法の改正により、被相続人の介護を相続人の配偶者などが担っていた場合は「特別寄与料」を請求できるようになりました。
特別寄与料が認められると相続人のとり分が減ることになるため、遺産分割協議でトラブルになる可能性があります。特別寄与料を認めるのか、その金額をいくらにするのかなどは、よく話し合いましょう。
出典|参照:第十章 特別の寄与|国税庁
10:被相続人に認知している子どもがいて遺産を要求してきた
被相続人に離婚歴があり前妻との間に子どもがいる場合は、その子どもも法定相続人となるため他の子どもと同じように相続します。
突然認知された隠し子などが発覚し遺産のとり分を要求してくると、被相続人の配偶者やその子どもが拒否反応を示し、遺産分割協議を行おうとしても話し合いすらできない場合もあるでしょう。
前妻の子どもや隠し子が相続人となる場合は、生前に被相続人の意思を明確に伝えられるよう、遺言書を作成しておくことをおすすめします。
11:長男が遺産を独占しようとする
長男が被相続人と同居して財産管理をしていたり、古い家督制度を踏襲する考え方をとっていたりすると、「長男だから」と被相続人の主要財産のほとんどを譲られることがあります。
このようなケースでは他の兄弟などから不満が出て、トラブルにつながることもあるでしょう。そういったことがないように兄弟間などで日ごろから相続について話し合い、相続開始前に不満や疑問を解決しておくことが大切です。
12:相続人の中に物事を自己で判断するには難しい人がいる
認知症などにより判断能力を欠いている相続人がいる場合、遺産分割協議がスムーズに進まなくなります。遺産分割協議は、相続人全員で合意する必要があるからです。
このような場合は、認知症の相続人の代わりに後見人という代理人が財産を管理する「成年後見制度」を活用しましょう。後見人は家庭裁判所に申し立てをすることで、親族や専門家が選任されます。
また、被相続人の生前中に遺言書を作成しておき、遺産分割協議を行わなくても遺産分割が可能な仕組みを作っておきましょう。
13:兄弟の配偶者が財産分与を要求してきた
兄弟姉妹の相続問題に、その配偶者が口を挟むことで問題がより深刻になることがあります。
遺産のとり分は今の家族に関わるため、相続人の配偶者が出てきて財産分与の請求をしてくるケースも見られます。なお、被相続人の子どもの配偶者は、相続人とは認められません。
出典|参照:相続人の範囲と法定相続分|国税庁
14:あまりにバランスを欠いた生前贈与が行われていた
被相続人が特定の相続人に生前贈与として財産を渡している場合も、相続人の間で争いが起きやすいでしょう。
基本的に遺産相続は被相続人の意思が尊重されますが、遺留分を侵害している場合は納得できない相続人から遺留分侵害の請求を提起されることもあります。
生前贈与がある場合は、遺産分割の際に生前贈与分を「特別受益」として計算することで、バランスをとるようにしましょう。
出典|参照:民法(特別受益者の相続分)|e-Gov法令検索
15:母に対して亡くなった父が生命保険をかけていた
被相続人が生命保険をかけており、その受取人が相続人の一人であった場合もその生命保険金をめぐって遺産分割の争いになる場合があります。
しかし、原則として生命保険金は相続財産(遺産)の対象ではありません。そのため、被相続人が亡くなり、生命保険金の受取人に対して不公平感を抱いたとしても、それが法的に解消されることはないでしょう。
16:被相続人に子どもがいないため相続人がよく分からない
被相続人に子どもがいない場合は相続人がよく分からなかったり、相続人同士の関係が薄いことが多かったりするため、遺産分割がスムーズにいかないことがあるでしょう。
被相続人の配偶者は常に相続人となり、被相続人の父母や祖父母、次に被相続人の兄弟姉妹などが相続人となります。しかし、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、代襲相続となりその子どもが相続人となります。
相続人が分かりにくいうえ、それらの関係性によっては争いになったり、疎遠で話し合いが進まなかったりする場合もあるでしょう。
出典|参照:第三節 遺産の分割|民法
遺産相続で揉めないためにしておく7つの準備
ここまで説明してきたように遺産相続のトラブルにはさまざまな原因が考えられますが、ポイントを押さえて生前から準備しておくことで、トラブルに発展するのを防ぐことも可能です。
ここからは、遺産相続で揉めないためにしておくべき準備について解説します。残された人々の争いを避けるために、覚えておきましょう。
1:遺言書を作成しておく
前述したとおり、遺言書は被相続人の意思を表すものとして尊重されます。遺産相続で相続人同士が揉めることがないよう、生前に遺言書を作成し自分の意思を残しておきましょう。
ただし、遺言書の書き方は定められており、誤った形式で作成されたものは無効となるため注意が必要です。
また、遺言書が有効であっても、相続人の遺留分を侵害している場合は相続トラブルにつながるため、極端に偏った遺産分配をしないようにしましょう。
2:生前から相続について話し合っておく
被相続人の生前から遺産相続について話し合っておくことも大切です。相続人同士が疎遠だったり関係が悪かったりすると、遺産分割協議開始後に不満が出る可能性があります。
遺産分割協議の前から、お互いに相手の立場を尊重しつつ相続についての話し合いをしていれば事前に不満や疑問を解決しておけるため、トラブルも発生しにくくなるでしょう。
3:財産について記載したものを残しておく
相続対象となる被相続人の財産について記載したものを残しておくと、遺産分割協議がスムーズに進むでしょう。
相続が発生してから亡くなった被相続人の財産を調べるのは、相続人にとって大きな負担となります。預貯金や自宅などは分かりやすいものの、相続人がすべての財産を正確に把握するのは難しいでしょう。
生前に被相続人が財産目録を作成しておけば、突然相続が発生したとしても相続人は慌てることなく遺産分割協議に移れます。また、借入金などの債務がある場合は、速やかに相続放棄の手続きに入れるでしょう。
4:法定相続人を把握しておく
財産の所在や価値とともに法定相続人の数が把握できていないと、遺産分割協議を始められません。そのため、必ず法定相続人を明確にしましょう。
被相続人の配偶者は必ず法定相続人となります。さらに被相続人の子ども、子どもがいなければ直系尊属(父母や祖父母)、直系尊属もいなければ被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
また、前述したとおり前妻との子どもや認知済みの隠し子も相続人となるため、注意が必要です。
出典|参照:第二節 相続分|国税庁
5:法定上の遺産分配について把握しておく
相続に関するトラブルを避けるためには、相続税や遺産分割の方法を知っておくことも不可欠です。それらの知識なしに遺贈してしまうと、遺産を受けとった者に過度な負担をかけてしまったり、遺留分請求の訴えを提起されたりすることもあります。
相続税には「基礎控除」として課税されない相続分の金額が定められています。相続割合に応じた遺留分とともに、相続税の基礎控除についても確認しておきましょう。
出典|参照:民法 第三節 遺産の分割 | e-Gov法令検索
出典|参照:相続税の計算|国税庁
6:相続のトラブルについて専門家へ相談しておく
遺産相続の際、トラブルに発展しそうになったら専門家に相談しましょう。
基本的に遺産の分配は遺言書の内容に沿って行うか、相続人の協議によって決めます。しかし、遺言書の内容が適当でない場合や話し合いがうまくまとまらない場合などは弁護士に相談するのをおすすめします。
また、トラブルが発生していなくても、相続の手続きが煩雑だったり負担が大きかったりする場合は、用途に応じて司法書士や税理士、行政書士に依頼しましょう。
7:家族信託の利用を検討する
「家族信託」とは、家族に自分の財産を管理・運用・処分してもらう制度です。あらかじめ家族信託を利用しておけば、相続を円滑に行えます。
たとえば、被相続人が認知症になったときに財産管理をしてもらえるなど、相続トラブルを未然に防ぐことができます。信託に不慣れな場合は、弁護士や信託を扱う銀行などに相談してみましょう。
遺産相続で起こりやすいトラブルについて知っておきましょう
遺産相続ではトラブルが発生することも多いため、生前から準備しておくことが必要です。また、遺産相続で起こりやすいトラブルについて知識を得ておくと良いでしょう。
また、遺産相続の関係者となり得る家族や親族と日ごろからコミュニケーションをとり、相続の内容にも踏み込んで話し合っておくことも大切です。
遺産相続は自分の権利を主張するだけでなく、他の相続人の立場も思いやりましょう。
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