
遺産相続に期限はある?必要な手続きやスムーズに終わらせるポイントを紹介

「遺産相続には期限があるの?」
「遺産相続で期限が決まっている手続きにはどんなものがある?」
「遺産相続が期限以内に終わらない場合はどうなるの?」
このように、遺産相続の期限がいつまでなのか知りたいという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、遺産相続で期限が決まっている手続きの内容やその期限、遺産相続で期限がない手続きなどを紹介しています。この記事を読むことで、遺産相続の手続きの具体的な期限について把握できるでしょう。
また、手続きが期限内に終わらないとどうなるのかについても紹介するため、必ず遺産相続を期限以内に行わなければいけない理由がわかります。
遺産相続の期限について知りたい人は、ぜひ本記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。
遺産相続で期限が決まっている10個の手続き
相続の手続きの中には期限が決められている手続きが多いです。期限以内に手続きが完了しなければ不利益を被ってしまうこともあるでしょう。事前に遺産相続で期限が決まっている手続きの内容について把握しておき、計画的に手続きを進めていくことが大切です。
手続きの期限は、相続が発生したことを知った日を起点にカウントします。ここでは遺産相続で期限が決まっている10個の手続きを紹介するため、どのような手続きがあるのか参考にしてみてください。
死亡届・火葬許可申請書(1週間以内)
死亡届を提出するのは、死亡の事実を知った日から7日以内です。なお、国外で死亡した場合は、死亡の事実を知った日から3ヶ月以内とされています。
役所に死亡届と共に火葬許可申請書を提出すると、火葬に必要な火葬許可証を交付してもらえます。
出典|参照:死亡届|法務省
各種健康保険の資格喪失・世帯主変更(2週間以内)
健康保険の加入者が亡くなった場合、亡くなった日から2週間以内に健康保険の資格喪失の手続きを行う必要があります。国民健康保険資格喪失届を役場に届け出て、保険証を返却しましょう。
世帯主が死亡した場合、国民健康保険であれば新しい保険証が発行されるため、その世帯分全員の保険証を返却する必要があります。また、健康保険の資格喪失手続きだけでなく、世帯主変更届を提出する必要があります。
年金受給停止(2週間以内)
国民年金を受給している人が亡くなった場合は、2週間以内に届け出を行う必要があります。ただし、日本年金機構にマイナンバーが紐づけられている場合は、原則として届け出は不要です。
届け出を行う場合は、死亡届に必要事項を記入し、亡くなった人の年金証書、亡くなった人の戸籍抄本や住民票の除票など死亡したことがわかる書類を年金事務所に提出します。
相続放棄・単純承認・限定承認(3ヶ月以内)
相続放棄、単純承認、限定承認ができるのは、自身に相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内です。基本的に3ヶ月以内に承認もしくは放棄を決定する必要があるため、3ヶ月を過ぎてしまうと相続放棄はできません。
また、限定承認は相続したプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐもので、相続放棄、限定承認のいずれも家庭裁判所に申立てを行う必要があります。単純承認は手続き不要ですが、3ヶ月の間に相続放棄を行わなければ単純承認とみなされます。
準確定申告(4ヶ月以内)
準確定申告とは、被相続人の代わりに相続人などが被相続人の確定申告を行うことです。準確定申告は、相続が開始したことを知った日から4ヶ月以内に管轄の税務署へ申告する必要があります。
ただし、被相続人にもともと確定申告の必要がない場合、準確定申告は不要です。
相続税の申告と納付(10ヶ月以内)
相続税とは相続が発生した際に課せられる税金で、相続の総額が基礎控除を越えた場合に発生します。相続税の申告と納付の期限は、相続の開始を知った日から10ヶ月以内です。
基礎控除が3,000万円となるため、遺産の総額が3,000万円を超える場合、10ヶ月以内に相続税の申告を行い、納付する必要があります。
出典|参照:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁
出典|参照:No.4152 相続税の計算|国税庁
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された場合に遺留分を取り返すための請求です。遺留分とは、被相続人の配偶者や子供などの法定相続人に最低限相続が保証されている財産の割合を指します。
遺留分侵害額請求の期限は、相続の発生、遺留分の侵害を知った日から1年以内です。また、遺留分が侵害されていることを知らなかった場合でも、相続が開始してから10年が経過すると遺留分侵害請求はできなくなります。
出典|参照:遺留分侵害額の請求調停 | 裁判所
死亡保険金の請求
生命保険の死亡保険金の請求期限は、被保険者が亡くなってから3年です。かんぽ生命の場合は5年が期限となります。
亡くなってから3年が経過すると保険金請求権が消滅するため、被保険者が亡くなった場合は請求期限以内に生命保険会社に連絡し、保険金を受け取りましょう。
出典|参照:死亡保険金の請求|三菱UFJ銀行
相続税の還付請求
還付請求が可能な期間は、相続が開始されると認識した翌日から5年10ヵ月が原則です。また、一部では、事由が生じたことを認識した日から4ヵ月以内のケースがあります。
相続するものを高評価してしまったことにより、相続税を多く支払ってしまった場合、相続税の還付請求を行うことで支払い過ぎてしまった相続税が返ってくる可能性があるでしょう。
出典|参照:相続税の還付請求|三菱UFJ銀行
不動産相続登記(3年以内)
現時点では不動産相続での不動産の名義変更には期限はありません。しかし令和6年4月1日より義務化される予定になっており、相続登記の期限は3年以内と定められる予定です。
施行された際には、相続によって土地や建物を取得した場合、3年以内に相続登記を行わなければ過料が課せられることになるため注意が必要です。
遺産相続で期限がない手続き
遺産相続で必要な手続きの中には、特に期限が定められていないものもあります。しかし期限は決まっていなくても、時間がかかると不利益が発生する可能性があります。
そのため、たとえ期限が決まっていなくても、後回しにしないことが大切です。ここでは遺産相続で期限がない手続きを紹介していくため、参考にしてみてください。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人全員で話し合い、合意の元、遺産の分け方を決定することです。遺産分割協議には期限はないため、相続が開始してから何年経過していても遺産分割協議は有効ということになります。
出典|参照:①遺産分割協議|税理士法人レガシィ
銀行口座の名義変更
銀行口座の名義人が死亡した場合、金融機関はその口座を凍結し、使えないようにします。銀行口座の名義変更にも法律上の期限はないため、預貯金の解約や名義変更といった手続きに関しては、すぐに行う必要はありません。
ただし、銀行口座は10年以上使用されていない場合、休眠口座になるため注意が必要です。
手続きが期限内に終わらないとどうなる?
遺産相続の手続きには期限が定められているものが多いため、場合によっては間に合わないケースもあります。しかし相続の手続きが期限以内に終わらなかった場合、さまざまな不利益を被る可能性があります。
それでは、具体的にどのようなデメリットが考えられるのでしょうか。ここでは、手続きが期限内に終わらないとどうなるのか紹介していきます。
新たに相続が発生するケースもある
相続の手続きがなかなか終わらない場合、相続人が亡くなってしまう可能性もあります。このようなケースでは、相続手続きの最中に新たな相続が発生してしまうことになります。
1つ目の相続が完了しないうちに相次相続が発生すると、相続の手続きが余計に複雑になってしまうでしょう。そのため、相続の手続きは期限以内に終わらせることが大切です。
各種税金が軽減されない
相続税の申告、納付の期限は、相続が発生したことを知った日から10ヶ月以内です。相続税の申告、納付が期限以内にできない場合、税金の軽減制度が利用できなくなるというデメリットがあります。
具体的には、「小規模宅地等の特例」、「配偶者の税額軽減」、「農地等の納税猶予の特例」、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」、「相続税の物納」などが利用できなくなります。
出典|参照:No.4205 相続税の申告と納税|国税庁
相続税の延滞税の発生
相続税の申告、納付が期限前に完了できない場合、ペナルティとして相続税の延滞税を支払わなければならなくなるでしょう。延滞税は納付期限翌日から、相続税を完納する日まで発生します。
また、期限までに完了できなかったケース以外に、期限までに申告したものの納付が遅れたケースや、修正申告を行ったケース、税務調査で更正処分を受けたケースなども延滞税が課税されるため注意が必要です。
出典|参照:No.9205 延滞税について|国税庁
期限までに遺産相続を終わらせる方法は?
遺産相続の手続きを期限までに終わらせなければ、さまざまなペナルティが課せられることになります。しかし遺産相続の手続きは遺言書がないケースや自筆証書遺言があるケース、公正証書遺言があるケースなど、ケースごとで対応が異なります。
いずれにしても、まずは遺言書を確認する必要があるでしょう。ここでは最後に、パターンごとの期限までに遺産相続を終わらせる方法を紹介していくため、参考にしてみてください。
遺言書がない場合
遺言書がない場合は、まずは財産の調査を行い、財産目録を作成して相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。しかし実際には、遠方に住んでいる相続人が参加できないなど、相続人全員の合意を得ることが難しいケースもあります。
このようなケースでは、遺産整理を専門家に依頼するという方法もあります。遺産整理を依頼することで、さまざまな手続きをまとめて、負担を軽減することができるでしょう。
自筆証書遺言がある場合
自筆証書遺言がある場合、家庭裁判所で遺言書の検認を行う必要があります。検認を実行する日には相続人全員が集まり、遺言書の内容を確認することになります。
遺言書が封印されている場合、検認の際に初めて開封されることになるため、検認前に勝手に開封するのはNGです。検認後、遺産相続の手続きに利用することができるようになります。
公正証書遺言がある場合
公正証書遺言がある場合、家庭裁判所での検認をする必要なく、すぐに遺産相続の手続きに利用することが可能です。
公正証書遺言の場合は他の相続人に通知がいくということもないため、遺言書を預かっている相続人に全ての財産を譲るという内容であれば、1人で全ての手続きを進めることができます。
ただし、公正証書遺言は公正役場に問い合わせれば内容がわかるため、全てを隠し通すことはできないでしょう。
遺言書があるかどうかがわからない場合
遺言書があるのかないのかわからない場合は、心当たりのある場所を順番に探っていく必要があります。被相続人に自宅や病院、施設など、身の回りに遺言書がないか一つずつ探していきましょう。
また、公正証書遺言であれば公正役場に問い合わせることで遺言書の有無を確認することができるため、確認してみると良いでしょう。
遺産相続は期限を守ってトラブルを防ぎましょう
遺産相続が期限に間に合わない場合、さまざまなトラブルにつながる可能性があります。ぜひ本記事で紹介した遺産相続で期限が決まっている手続きの内容や、手続きが期限内に終わらない場合のペナルティなどを参考に、相続の手続きは期限に間に合うように進めるようにしましょう。
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