婿養子は婿入りと何が違う?相続や養子縁組についてのメリットデメリットも解説!
「婿養子は婿入りとは違うもの?」
「婿養子にと言われているけど、婿養子になって何がどう変わるのか知りたい」
相手の親から婿養子になって欲しいという話がでた時に、このような疑問をもつ人は少なくありません。
本記事では、婿養子とはどんな存在なのか、婿入りとの違いや婿養子になることのメリットやデメリット、必要な手続きなどを紹介しています。
この記事を読むことで婿養子になることでどのような影響があるのか、良いことも悪いことも把握できます。婿養子を検討する際に確認しておきたいポイントも紹介しているため、正しい知識を得て婿養子になるかどうかを検討できるようになるでしょう。
婿養子の話がでたけれど詳しいことが良く分からないという方は、ぜひこの記事を参考にしてみて下さい。
婿養子とは?
婿養子とは、結婚相手である妻の両親の養子になることです。妻にとっての父親、母親と、夫との間で養子縁組の手続きをすることで、妻の両親と夫も親子関係になることを婿養子と言います。
戸籍上、妻の両親の養子となるため、苗字が妻側の姓に変わることに注意が必要でしょう。また婿養子と似たものとして婿入りがありますが、婿養子と婿入りはまったく違うものです。
婿入りとの違い
従来は女性が男性の家に嫁に行くことを嫁入りと言い、一般的に行われていました。婿入りは嫁入りの男性バージョンで、男性が結婚して女性の家に入ることを意味しています。
婿養子と婿入りは、妻の両親と夫が養子縁組しているかしていないかで違いがあります。婿養子は妻の両親と養子縁組しますが、婿入りでは養子縁組を行いません。
女性が嫁入り後に夫の苗字へ変わるように、婿入りした男性は妻の苗字を名乗るようになります。婿養子になっても苗字が変わるため、この2つは混同されることがあるのでしょう。
婿養子の5つのメリット
婿養子になることで、婿入りだけでは得られないメリットを受けられることがあります。
ここでは、婿養子になることで得られる5つの代表的なメリットを紹介します。婿養子になるかどうか迷っている、悩んでいる人は、これらのメリットがあることを認識しておきましょう。
1:婿養子は実子同様の相続権を得られる
婿養子は、妻の両親と養子縁組して養子になることを言います。そのため、万が一妻の両親のどちらかあるいは両方が亡くなった際には、実子である妻と同様に遺産の相続人となり、相続権を得られるでしょう。
民法第八百九条(嫡出子の身分の取得)において、養子は縁組した日から、養親の嫡出子になるとされています。養子であっても実子と同じ立場になるため、婿養子になった場合は妻の両親から実子同様の相続権を得られるのです。
では婿養子になっていなかった場合はどうでしょう。その場合、婿入りしていたとしても妻の両親の子ではないため、婿に相続権は発生しません。
出典:民法第八百九条(嫡出子の身分の取得)|e-Gov法令検索
2:婿養子は代襲相続もできる
婿養子として養子縁組していた場合、代襲相続の対象にもなるというメリットがあります。代襲相続とは、被相続人が亡くなった際に相続人になるべき人が先に亡くなっていた場合、亡くなった相続人の子が代襲して相続することです。
出典:4 代襲相続|国税庁
3:婿養子は実親の相続もできる
婿養子の場合は、養親となった妻の両親の相続人になれます。またそれと同時に、婿養子になったとしても実親との関係がなくなる訳ではないため、実親からの財産も相続できるというメリットがあります。
簡単に言えば、婿養子になれば実の両親の相続だけでなく、養子先の養親たちの遺産も相続できるということです。婿養子になったとしても、実親との親子関係がなくなった訳ではありません。
4:相続税の非課税枠を増やすことができる
婿養子する目的の1つに、婿を養子にして相続税の非課税枠を増やせることがあります。
相続の際には相続税が発生します。しかし法廷相続人の数が増えれば基礎控除を増やせるため、結果的に相続税を節約できるでしょう。基礎控除は法廷相続人1人につき600万円であるため、婿入りではなく婿養子にしていれば600万円基礎控除が増える計算になります。
ただし、法廷相続人に含められる養子の数は決まっています。被相続人に実子がいた場合は1人まで、被相続人に実子がいなければ2人までとなっているため注意しましょう。
5:嫁姑間のトラブルを軽減できる可能性がある
婿養子になれば女性を嫁にもらったという意識になりにくいため、嫁姑間のトラブルが起こりにくくなる、軽減できる可能性があることがメリットでしょう。
結婚後によくあるトラブルとして、嫁と母親の間のトラブルで夫が板挟みになることが知られています。時には、離婚の原因になることもあると言われるほど嫁姑関係のトラブルは根深い問題ですが、婿養子になることで軽減できる可能性があるなら、十分メリットと言えるでしょう。
婿養子の5つのデメリット
妻の両親と養子縁組して婿養子になることには、金銭的な面や妻と自分の親との関係といった面でメリットが多いでしょう。しかし、婿養子になることはメリットばかりではありません。
ここでは婿養子になることで生じる可能性のある、5つのデメリットについて紹介します。婿養子になることを決断する前に、メリットと共にデメリットも押さえておきましょう。
1:妻以外の実子と相続トラブルになる可能性がある
妻の両親に妻しか子どもがいなければ心配はないのですが、もしも他にも実子がいて妻に兄弟などが存在した場合、婿養子になっていることが相続トラブルの元になる可能性があります。
婿養子には、実子と同じように養親の遺産の相続権があります。そのため妻以外の兄弟にとってみれば、両親が婿養子を迎えたことで自分に残される遺産が減ることになります。
これが相続の際にトラブルになったり、相続を見越して婿養子になることを反対されたりする可能性があるでしょう。
2:養親と実親両方の扶養義務が発生する
婿養子になると妻の両親の財産、自分の両親の財産を相続できますが、妻の両親である養親と自分の両親の扶養義務のどちらも発生することがデメリットになるでしょう。
妻側の両親と養子縁組をした場合、養親に対する扶養義務も発生してしまいます。また血縁関係にある実の両親とも関係が切れた訳ではないため、実親の扶養義務も残っています。養親と実親、4人の親の扶養義務が発生する可能性があることに注意して下さい。
出典:民法|e-Gov法令検索
3:マイナスな資産を相続する可能性がある
婿養子になれば、妻の両親と自分の両親の財産を相続できる可能性がありますが、その中にマイナスな資産があった場合、マイナスな遺産相続が発生する可能性があることに注意しましょう。
マイナスの遺産であっても同じ扱いであるため、婿養子ならマイナスの遺産相続がないとは限りません。相続の際は、プラスの遺産ばかりではないことに注意しましょう。
4:死別したとしても養子縁組は自動解消されない
結婚して婿養子に入った後で、妻が亡くなり死別してしまったとしても、養子縁組は自動で解消されないことがデメリットになる場合があります。
養子縁組が自動解消されないということは、死別した妻の親の相続権は残っていますが、同時に扶養義務も残っています。これらの権利や義務を放棄するには、妻の親との養子縁組を解消しなければなりません。
妻と死別したとしても、手続きしない限り養子縁組は解消されないことに注意しましょう。
5:離婚する際の手続きが増える
婿養子になった後で離婚することになった際は、離婚手続きに加えて養子解消手続きをしなければならないため、離婚時に必要な手続きが増えるというデメリットがあるでしょう。
婿養子で妻と離婚したとしても、妻の親との養子縁組は自動解消されません。結婚と養子縁組の手続きは別になっています。そのため、通常の離婚の手続きと同時に、妻の親との養子縁組を解消する手続きもする必要があるでしょう。
養子縁組に必要な手続き
養子縁組する際には、養子縁組のための手続きをする必要があります。結婚するだけなら婚姻届だけですみますが、婿養子になる場合には婚姻届に加えて養子縁組の手続きをしましょう。
以下で養子縁組に必要な届出や、必要な書類などを紹介しています。養子縁組の手続きをスムーズに進めるためにも、必要なものは余裕をもって用意しておきましょう。
養子縁組届を提出する
養子縁組するには、まず市区町村の役所から養子縁組届の用紙をもらってくるか、市区町村が開設しているホームページから用紙をダウンロードして記入し、提出する必要があります。
婿養子の場合は養子になる人が15歳を超えていますので、本人が届出人になれます。また2人の証人が必要となるため、誰に証人になってもらうか相談しておきましょう。婚姻届にも証人が必要なため、同じ人に頼んでもよいでしょう。署名・押印は自筆で行う必要があります。
養子縁組届に必要なもの
養子縁組の届出時には、記入した「養子縁組届」・養親と養子になる人の「戸籍謄本」・届出を持参する人の「本人確認書類」が必要となります。
なお、養親と養子の戸籍謄本は、養子縁組を届出るのが本籍地であった場合は不要になります。書類を市役所に提出する人は、運転免許証やマイナンバーカードといった本人確認書類を持参することを忘れないようにしましょう。手数料はとくに必要ありません。
婚姻届と同じタイミングでの提出もできる
婿養子になる際は、婚姻届と同時に養子縁組の届出を提出できます。同時に提出したとしても、役所側で先に養子縁組、その後に婚姻届が受理されるため、問題ありません。
また婚姻届と同時に提出する以外で、養子縁組を提出するタイミングは2つあります。婚姻届の前に養子縁組するケース、婚姻した後で養子縁組するケースです。いずれのタイミングで提出しても、問題はないでしょう。
婿養子を検討する場合に確認したいポイント
養子縁組すると様々なメリットがありますが、デメリットも存在します。そのためメリットだけを見てすぐに養子縁組すると決めるのは、早計でしょう。
ここでは、婿養子を検討する際に確認しておきたいポイントをまとめています。婿養子になるかどうか迷っている人や悩んでいる人は、まずはこれらのポイントについて確認しておきましょう。
養子縁組はいつでも可能
養子縁組の話がでたといっても、基本的に焦る必要はありません。養子縁組はいつでも可能なため、焦らずにじっくり考えて、結論を出してからでも遅くはないでしょう。後から揉めないように、家族間でしっかり話し合っておきましょう。
養子縁組は解消することも可能
養子縁組は解消することもできます。
スムーズに養子縁組を解消するためには、養子と養親双方の合意が必要になりますが、調停離縁や判決離縁で養子縁組を解消することも可能です。養子縁組したら解消できない、ということはないことと、状況が変わった際でも養子縁組を解消できることを覚えておきましょう。
相続を視野に入れた養子縁組は何人でも可能
相続のことを考えて養子縁組する場合は、養子の数に制限はないため、養子縁組は何人でも可能だということを知っておきましょう。
例えば、妻に兄弟がいてその兄弟の配偶者も妻の親と養子縁組していた場合、養子になっている配偶者はみな、相続の対象となります。この場合は、養子にする人数にとくに決まりはありません。養子となった人は実子と同じように扱われるでしょう。
相続税の非課税枠の計算に入れられる人数には制限がある
養子縁組に人数制限はありませんが、相続税の節税目的の場合は人数制限があることに注意しましょう。
相続税の計算では、法廷相続人の数が多ければ節税になります。しかし被相続人の養子を法廷相続人として数える場合、被相続人の実子がいる場合は養子は1人まで、実子がいない場合は養子は2人までと決まっています。
養子を増やせば増やしただけ相続税の非課税枠が増えるという訳でありません。
婿養子について理解を深めよう
婿入りすることと、婿養子になることにはかなり大きな違いがあります。婿養子になる場合、妻の親の養子となることで様々なメリットを得られますが、そのことで発生するデメリットもあります。
婿養子になるかどうか決めるには、婿養子についてしっかり理解を深めておく必要があるでしょう。今回紹介した内容を元に、婿養子について検討してみましょう。
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