
相当の地代とは?意味と計算方法や借地権にかかる権利金の認定課税との関係を解説

「土地を子どもに譲りたいが、相続税はかかるの?」
「親族に土地を貸す場合は、権利金を受け取らなくても問題はない?」
「借地権にかかる税金はどう計算するの?」
自分の持っている土地をあげたり貸したりする際の税金について、よく知らないという方もいるでしょう。
本記事では借地権と権利金、さらに権利金の認定課税や相当の地代などについて解説しています。
この記事を読むことで、土地の貸借においてどのようなケースであれば課税されないのか、また、課税される場合の計算方法について理解できるでしょう。
家族に土地を譲る予定のある方や、土地の貸借における税金について知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
借地権と権利金
ここでは、土地を貸している方や借りている方であれば耳にしたことがある「借地権」と「権利金」について解説していきます。これから土地を貸す予定がある方は、用語の意味を知っておくと契約の際に役立つでしょう。
借地権とは
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことを言います。借地権には財産的価値があり、相続税や贈与税の課税対象です。
借地権の評価額は、更地としての価額に借地権割合を乗じて計算されます。また、借地権割合は路線価図や評価倍率表に表示され、国税庁のホームページで確認可能です。
借地契約では借地人が地主から借地権を取得し、地主の持つ底地に対して地代を支払っていきます。
権利金とは
権利金とは建物の所有を目的として土地を貸し付けた場合に、借地権を設定する際の対価として一般的に借地人から地主に支払われる一時金のことです。この権利金を支払うことによって、借地権を得られると言えます。
権利金の金額は地主と借地人の交渉・合意により決定されますが、金額についての要件は国税庁のホームページでご確認ください。
権利金の認定課税と相当の地代
親族間などで土地の貸し借りを行う場合、権利金を受け取らないケースが中にはあるでしょう。そういったケースは、税金に関係してくるのでしょうか。
以下では、権利金を受け取らなかった場合に発生する権利金の認定課税と、認定課税されない相当の地代について解説します。
権利金の認定課税
通常であれば、権利金を受け渡す慣行があるにもかかわらず、権利金の受け渡しをしない場合、借地人に権利金を贈与したとみなし認定課税となります。これは地主が個人ではなく、法人の場合に地主に課される税金です。
相当の地代
権利金を支払っていない場合は、底地部分に加え借地権に相当する金額を地代に上乗せすることで借地人は土地全体を使用できます。権利金がなくても地代を上乗せしている場合は、相当の地代として権利金の認定課税は行われません。
通常の地代と相当の地代の関係
相当の地代を受け取っていれば権利金の認定課税はないとお伝えしましたが、通常の地代と相当の地代はどう違うのでしょうか?
以下では、通常の地代と相当の地代の意味や計算方法を解説していきます。
通常の地代の意味と計算方法
借地権に対する権利金の支払いは契約時に済んでいますが、底地部分の地代を賃料とする必要があります。この底地に対する地代を「通常の地代」と言います。
通常の地代は土地の価額の6%程度と言われ、計算式は以下の通りです。
・土地の価額×(1-借地権割合)×6%
相当の地代の意味と計算方法
底地部分である通常の地代とは違い、借地権部分を上乗せしている地代のことを相当の地代と言います。
相当の地代の額は原則として、その土地の更地価額(その土地の時価)の年6パーセント程度です。計算式は以下のようになります。
・土地の価額×6%
ただし課税上弊害がなければ、近辺の似た土地の公示価格などから計算した価額、またはその土地の相続税評価額かその評価額の過去3年間の平均額でも認められます。
地代と相続税における借地権評価の関係
相当の地代についてお伝えしましたが、この地代の金額によって借地権の評価額が変わることはご存知でしょうか?
ここからは、相当の地代を基準とした3パターンの課税について、さらに土地の無償返還に関する届出書について詳しく解説していきます。
通常の地代未満は使用貸借とみなされる
借地人と地主という貸借関係が個人間で行われ、通常の地代未満、または地代と権利金が発生しないというケースもあります。
国税庁によると、無償もしくは通常の地代未満で土地を借りている使用貸借では、使用権の価額は零とされています。一方、地主側は自用地評価となります。
相当の地代未満は借地権割合を調整
相当の地代未満しか払っていない場合、控除した金額に相当する利益を贈与として取得したものとされます。以下の計算式によって借地権割合を調整します。
・自用地としての価額×借地権割合×実際に支払っている金額と相当の地代などから算出した比率
一方、地主側は自用地評価額から上記で算出された借地権評価額を引いたものが、底地の評価額です。
相当の地代以上のときは認定課税はない
借地人は相当の地代以上を支払っている場合、評価額が零になり課税されません。ただし、通常支払われる権利金未満の額を支払っている、または特別の経済的利益を供与していないなどの要件を満たす必要があります。
一方、地主は建物が建っていることを考慮され、底地の評価額が20%減ります。
土地の無償返還に関する届出書
土地の無償返還に関する届出書とは、法人または個人が所有する土地を貸し出し、借地権の設定に関わる契約書において、将来借地人が無償で返還することが定められている場合に届け出るものです。
この届出書を提出すれば評価額が零になり、認定課税はなくなります。ただし、貸借関係が個人同士であると届出書は提出できません。
地代の認定課税は地主・借地人が法人か個人かで異なる
借地権に関する課税は、地主と借地人が法人か個人かで取扱いが大きく異なります。権利金の受け渡しがなく、相当の地代に満たないケースについて説明しましょう。
地主が法人で、借地人がその法人の役員であれば役員報酬、従業員であれば給与または賞与、その法人とは関係のない個人または法人の場合は寄付という扱いとなり、地主側に益金として権利金相当分が法人税の対象となります。
地主が個人の場合、課税はありません。ただし、借地人が法人であれば法人は受贈益として課税され、個人間での使用貸借とみなされれば課税されません。
また、無償返還の届出書を提出している場合、地主が個人であれば認定課税はありませんが、法人の場合は相当な地代と実際に支払われている地代の差額分に対して課税されることとなります。
このように、借地権の課税は個人か法人かで異なっていて、認識を間違えると多額の税金が課される可能性があります。
相続税額に影響する相当の地代の意味・計算方法を正しく理解しておこう
土地の貸借契約を結ぶ際に受け取る権利金や、相当の地代についてお分かりいただけたでしょうか。
権利金の受け渡しがなく、さらに相当の地代未満の賃料になっている場合は認定課税される可能性があります。これは、地主と借地人が個人なのか法人なのかによって大きく変わってきます。
解説した内容を参考に、相続税に影響する相当の地代の意味や計算方法を正しく理解しておきましょう。
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