
連れ子に義理親の遺産を相続させる4つの方法とは?知っておくべきことも紹介

婚姻届を出せば夫と妻は法律上の夫婦、家族として認められます。しかし、基本的に婚姻届を出すだけでは、連れ子は再婚相手と法律上の家族にはなりません。
連れ子の権利を守るために必要な法律上の手続きについて、深く考えたことがなかったという方も多いのではないでしょうか。
実態としては、「お父さん」「お母さん」と呼び、家族として暮らしていても、法律上でも家族になる手続きをしておかないと、新しい親との間に権利や義務が発生しません。
本記事では、連れ子と再婚相手である義理親との間で相続が可能になる方法について解説しています。本記事を参考にすることで、相続のような法律手続きにおいては、実態上の家族であるというだけでは足りないということを理解できます。
相続手続きが必要になってから、手続きに不足があってあわてたり、手遅れになったりすることのないよう、連れ子と義理親の間で相続をするために必要な手続きを覚えておきましょう。
連れ子の相続権
通常、親が亡くなった場合は子どもに相続権がありますが、親子として暮らしていても連れ子には相続権がありません。連れ子と再婚した義理の親との間に血縁がない場合は、「養子縁組」により法律上の家族として認められて初めて、連れ子と義理親の間に相続権が発生します。
相続権を含め、法律的にも家族関係を構築するためには、親の再婚時には、連れ子と再婚した義理親の間で法律上親子と認められる手続きをしておくことが必要です。
出典:民法|e-Gov法令検索
連れ子に義理親の遺産を相続させる方法4つ
連れ子に連れ子婚相手の財産を相続させる方法は複数あります。連れ子婚の種類によって、法律手続きが異なる場合もあります、また、連れ子と義理親の間に法律上の親子関係を発生させずに、財産を引き継ぐことも可能です。
ここでは、連れ子が義理親となった人の財産を引き継ぐ方法について解説します。
1:市役所へ認知届を提出しておく
連れ子で結婚する場合、結婚相手が子どもにとって実親というケースも少なくありません。この場合、親の婚姻によってあらたに親となった者は、子どもを「認知」することで、法律上も実親として認められます。
一般的に、認知届が受理されれば、父と子の間には法律上も血縁上も親子関係が発生し、相続権も認められます。認知届は、父もしくは子の本籍地、または届出人の所在地の市役所に提出可能です。
2:養子縁組をしておく
親が結婚しただけでは、義理親と連れ子の間に法律上の親子関係は発生しません。義理親と連れ子の間で養子縁組をすることにより、法律上でも親子として認められます。法律上の親子となれば、血縁上の親子同様に親子間で相続権や扶養義務、親権なども行使できるようになります。
義理親に実子がいる場合でも、相続開始時には実子と養子は同等に扱われるため、相続割合にも違いはありません。
3:生前贈与をしておく
相続税をなるべく抑えて、連れ子に財産を残す方法として生前贈与も有効です。生前贈与は連れ子だけでなく、実子へ財産を引き継ぐためにも活用できます。
毎年非課税となる範囲内で生前贈与を行っておけば、相続が開始したときに相続対象となる財産の価額を圧縮することができるため、相続税対策にもなります。
4:遺言書を作成しておく
遺言書として、相続や遺贈の方法を記しておけば、民法に定められた相続人や相続割合と異なる財産分配をすることが可能です。遺言書は、民法で定められた遺言書の方式に則って作成することが必要です。
遺言書が定められた方式で作成されていないと無効となってしまい、故人の意思がかなえられないこともあります。公正証書遺言として作成しておけば、相続開始後に検認という手続きを必要としないため、確実に意思を伝えることができます。
出典:遺言書の検認|裁判所
連れ子がいることによる相続トラブルを避けるには?
相続開始時に、連れ子の立場が明確でないと、相続の権利を巡ってトラブルになることもあります。遺産相続のトラブルを避けるためには、相続人を確定できる資料を集め、遺産分割協議を行うために必要な相続人を明確にしておくことが必要です。
故人(義理親)の除籍謄本から、血縁関係や養子縁組などをたどれば、相続人を確定させられます。相続人の確定が難しい場合は、弁護士や司法書士など、法律の専門家に頼ることも検討しましょう。
連れ子の相続で知っておくべきこと
連れ子がいる場合の相続では、思い込みと法律上の定義に隔たりがあるというケースも少なくありません。
自分の思い込みだけで進めてしまうと、法律では認められない内容を主張してしまったり、逆に法律で認められている権利を知らずに主張せずに終わってしまったりする危険性もあります。
ここでは、連れ子がいる場合に知っておきたい相続関連の知識について解説します。
養子にすると相続税の基礎控除の人数に含まれる
連れ子と養子縁組してあれば、実子同様の扱いとなるため、相続税の基礎控除の対象となります。養子は基礎控除の対象となるためには人数制限が設けられていますが、連れ子が養子の場合は、人数制限なく基礎控除の対象に含めることが可能です。
連れ子と養子縁組をしていない場合は、相続人になり得ないため生前贈与や遺贈により財産を受け渡すことになりますが、贈与の扱いであるため税金の控除対象にはなれません。
普通養子縁組をしても生みの親の財産を相続できる
普通養子縁組では、実親との親族関係も維持されるため、実親が亡くなった場合は、連れ子の相続権を主張できます。
たとえば母の連れ子として、義理の父と養子縁組をしている場合は、義理の父の相続人にも、実父の相続人にもなれるということです。もちろん実母である母の相続もできます。
生前贈をする場合は贈与契約書を作成する
贈与は、贈与する者と受ける者の口約束でも成立しますが、安易に撤回されることがないよう書面契約しておくことをおすすめします。生前贈与の際は、贈与契約書を作成しておきましょう。
贈与契約書として書面にしておけば、撤回されないという利点だけでなく、遺産分割協議でも贈与の事実を証明でき、相続税の税務調査でも贈与の証明として提示できます。
法定相続人でないと相続税が2割加算されることがある
遺贈には、遺贈先が法定相続人のケースもあれば、法定相続人以外に財産を譲渡するケースもあります。遺贈先が法定相続人の場合は、実質的には相続と変わらず、相続税も抑えられますが、法定相続人以外への遺贈は2割増しの相続税が課されることがあります。
連れ子を養子にせず、遺贈として財産を譲ろうと考えている場合は、相続税が2割増しになる点も考慮しておきましょう。
手続きをしていなくとも連れ子が遺産を相続できる2つのケース
一般的には、養子手続きや遺言などの手続きをしていないと、夫の連れ子、後妻の連れ子など、親の再婚相手の連れ子に財産を相続させることはできません。
しかしながら、必ずしも不可能というわけではなく、相続のタイミングや亡くなる前の状況などによって相続分が発生することもあります。
ここでは、連れ子が遺産相続をできるケースについて解説します。
1:遺産分割協議中に配偶者である連れ子の実親が亡くなった場合
父の連れ子として義理の母とは養子縁組をしていないケースを考えてみましょう。父母はお互いに「配偶者」という地位で相続権を有しています。子どもは母が亡くなっても相続権はありませんが、父が亡くなった場合は実親であるため相続人となります。
このケースで、母が先に亡くなり、遺産分割が終わる前に父が亡くなった場合は、連れ子が父の代わりに遺産分割協議に参加しなければなりません。
父は配偶者であるため、相続分があり、父が相続した財産は実子である連れ子に相続されます。
2:連れ子が義理親の介護をした場合
配偶者の連れ子が長く義理親の介護に携わっていた場合は、「特別寄与料」として遺産の一部を受け取れる可能性があります。基本的に特別の寄与料を受け取れるのは、法定相続人以外の親族であるため、配偶者の連れ子も対象になる可能性があります。
基本的に特別寄与料は、介護の期間や貢献度などの条件を考慮したうえで認められるものであるため、確実に受け取れるとは限りません。
連れ子がいる場合は相続について考えておきましょう
お互いに連れ子の状態で再婚したり、結婚したあと兄弟となる子どもが生まれたりすると、相続時の連れ子の位置づけがわかりづらく、トラブルに発展することも少なくありません。
自分や配偶者が亡くなったあとで、連れ子が原因となるトラブルが発生することのないよう、連れ子にどのような形で相続させるのかをあらかじめ考えておきましょう。考えた結果、手続きが必要な場合は早めに対処しておくことをおすすめします。
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