
五輪塔とは?歴史・構造や一般のお墓と納骨や費用についての違いも解説

「五輪塔にはどのような意味があるの?」
「一般的なお墓と違いはあるの?」
「宗派関係なく五輪塔を建てられる?」
このように、納骨するにあたって五輪塔について疑問や悩みを抱える人もいるでしょう。
本記事では五輪塔の構造や歴史、塔に用いられている輪の意味についての他に、一般的なお墓との違いについて解説しています。また、五輪塔の宗派ごとの違いや似ていることから間違えられやすい宝篋印塔との違いについても紹介しています。
この記事を読むことで、納骨の際に五輪塔を取り入れるときの費用や納骨方法の疑問について解決できるでしょう。
五輪塔に納骨したい、自分に合った納骨方法を知りたいという人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
五輪塔とは?
五輪塔は3種類ある和型墓石のうちのひとつです。和型墓石は五輪塔の他に宝篋印塔と石塔があります。現在は供養塔として用いられることが多い五輪塔ですが、一般的なお墓のように建てることも可能です。
特徴的な形をしている五輪塔には、それぞれのパーツに深い意味が込められています。ここでは、五輪塔の特徴についてより詳しく解説していきます。
五輪塔の構造
五輪塔は一般的なお墓と比べると形が特徴的です。古くから伝わっている伝統的なお墓である五輪塔は、地面に近い方から方形・円形・三角形・半月形・宝珠形の5種類の形による石から成り立っています。
それぞれ5種類の形の石には意味が込められていますが、後ほど詳しく解説します。
五輪塔の歴史
和型墓石である五輪塔は、古くから受け継がれている伝統的なものということは前述しました。発祥はインドと言われていますが、いつ日本に伝えられたのでしょうか。
ここでは歴史についてだけではなく、現在の五輪塔の意味についても解説します。納骨する際に五輪塔を使用することを考えている人は、歴史だけではなく現在の五輪塔についても知る必要があるでしょう。
当初は身分の高い人のためのお墓
現在と違い、日本に伝わった当初は身分の高い人のためのお墓として取り入れられていました。日本に伝えられたのは平安時代末期と言われています。室町時代になると、庶民のために五輪塔が作られるようになりました。
江戸時代になると五輪塔を用いることが一般的になりましたが、時代の移り変わりとともに現在の和型墓石が一般的となります。
五輪塔のもとはインドの五大思想と言われています。五大思想を5つの輪に見立て、石塔の形にしたのが始まりです。
現在の五輪塔は供養塔
日本に伝わった当初は身分の高い人のお墓として、江戸時代には庶民の一般的なお墓として受け継がれてきた五輪塔ですが、現在は別の意味を持ち、ご先祖や特定できない死者の供養として建てられることが増えてきました。
五輪塔を建墓する際にも、形を省略した一石五輪塔という形も増えてきています。お墓の形や意味も、時代の移り変わりにより変化するのでしょう。
五輪塔の輪の意味
前述したように、五輪塔に用いられている5種類の石にはそれぞれ意味が込められています。
インドの五大思想をもとに作られている五輪塔ですが、地面に近い方から地・水・火・風・空を表しています。地・水・火・風・空は宇宙の構成要素を象る五輪塔に納骨することで、故人が極楽浄土に往生するという意味が込められているのです。
また宇宙構成要素としてだけではなく、足・胸・胸・顔・頭の人間の五体を表しているという説もあります。
ここでは、宇宙構成要素に基づいた5つの意味を解説します。
土輪
地面に近い部分にある直角の四角形の形をしている土輪は、五大思想の「地」を意味しています。土輪には地を表す梵字が刻まれていて「ア」と読みます。「地」の他に安定や個体を意味するのが五輪塔の土輪です。
水輪
五輪塔の中で地上から数えて2つ目にある円の形をしているのが水輪です。この水輪は血液や水など、形のないものを意味しています。この水輪にも梵字が刻まれており「ヴァ」と読みます。
火輪
続いて紹介する火輪は三角形の形をしています。「ラ」と読む梵字が刻まれている火輪は、地上から3番目にある石です。五大思想では火を表していますが、情熱や欲求、エネルギーなども意味します。
風輪
五輪塔の地上から4番目にある石が風輪です。五大思想で風を表している風輪は半月の形をしています。風輪が表す意味は呼吸、成長、自由、気圧などです。この石にも梵字が刻まれていて「カ」と読みます。
空輪
五輪塔の中で空に近い場所、地上からは5番目の場所にある石には「キャ」と読む梵字が刻まれています。空輪とされているこの石は宝珠形をしているのが特徴です。
名前からもわかるように、五大思想の空を表している空輪は無限に広がる空間を意味しています。他にも災難避けや、水を浄めるなどの意味合いもあります。
五輪塔と一般のお墓との違い
一般的なお墓と五輪塔の本質的な違いは特にありません。しかし、現在の五輪塔の意味としては供養塔として用いられていることが多いです。また、ご先祖や特定できない故人を祀る際にも用いられます。
本質的な違いはありませんが、納骨方法などが全く同じというわけではありません。次に、一般的なお墓と五輪塔の違いについて解説します。違いを知ることで、自身や家族に合った納骨方法を見つけやすくなるでしょう。
納骨方法
五輪塔と一般的なお墓の違いが納骨方法です。大きな違いとして挙げられるのが水鉢の有無となります。
一般的なお墓は水鉢を外してから納骨しますが、五輪塔にはありません。水鉢を外して納骨するイメージをしている人にとっては、戸惑ってしまうでしょう。
五輪塔には一般的に、拝石納骨と納骨蓋と呼ばれる2種類の納骨方法があります。それぞれの種類の特徴については後に詳しく解説していきます。
値段
一般的なお墓と五輪塔の値段の違いが気になる人もいるでしょう。基本的に五輪塔を建墓する際、一般的なお墓と値段に大きな違いはありません。サイズやデザイン、使用する石材の種類によって変わりますが、値段はおよそ30万~200万円と言われています。
値段は幅広く用意されているため、予算に合わせて選ぶことも可能です。
五輪塔の納骨方法
続いて五輪塔の納骨方法を紹介します。前述したように、五輪塔の納骨方法は拝石納骨と納骨蓋の2種類が一般的です。しかし、本質的には一般的な意味は変わりないため、見た目の違い以外に大きな差はありません。
また、一般的なお墓に用いられる水鉢に変わるものが五輪塔に当てはまるパーツはありません。五輪塔の建墓を考えている際には、次に挙げる納骨方法をぜひ参考にしてみてください。
拝石納骨
五輪塔の納骨方法のひとつとして一般的なのが拝石納骨です。五輪塔の香炉などがある板石部分が拝石と呼ばれています。この拝石を動かして納骨する方法が拝石納骨です。
拝石は比較的高い位置にあるため、納骨しやすいことがメリットのひとつです。また、しっかりと密封することで雨水などの浸水を防ぎやすいのも特徴でしょう。
納骨蓋からの納骨
続いて五輪塔の納骨方法として紹介するのが、納骨蓋から納骨する方法です。五輪塔には土台部分に納骨蓋が設置されているものがあります。その蓋を取り外して納骨する方法も一般的です。
納骨蓋から納骨する方法のメリットはとても簡単にできることと、多くの骨壷を納めやすいことの2点となります。
しかし、しっかりと密閉しないと雨水などが浸水しやすい点は注意した方が良いでしょう。それぞれの納骨方法において、メリット・デメリットを把握するのはとても大切です。
五輪塔の宗派ごとの違い
檀家になっていると、五輪塔を建墓する際の宗派ごとの違いが気になる人もいるでしょう。五輪塔が日本に伝わってきた当初は宗派ごとの違いはありませんでしたが、現在は少し変わってきています。
続いて、五輪塔を建墓する際の宗派ごとの違いについて解説します。
檀家となっている場合は特に、五輪塔を建墓する際の宗派ごとの違いは知っておいた方がよいでしょう。ぜひ次の内容を参考にしてみてください。五輪塔との関係だけではなく、宗派ごとに変わる教えについても触れています。
浄土真宗
浄土真宗は五輪塔を建墓しません。鎌倉時代に伝えられた浄土真宗では、故人はすぐに浄土へ行くと考えられているためです。しかし、開祖である親鸞聖人は五輪塔をお墓としています。
五輪塔は故人が極楽浄土へ行けるよう意味が込められています。それに対して、人の命の儚さや尊さを気づかせてもらうための場所と考えられているのが浄土真宗のお墓です。
開祖のお墓は五輪塔として知られていますが、浄土真宗では五輪塔を建てないとした方がよいでしょう。
日蓮宗
鎌倉時代に日本に伝えられた日蓮宗は、五輪塔を建墓します。しかし、五輪塔で使用している石に刻む文字は梵字ではなく「妙・法・蓮・華・経」が一般的です。
日蓮宗では「南妙法蓮華経」を信心して唱えることが仏となる道とされています。その日々唱えるお題目を石に刻むのが、日蓮宗の五輪塔の特徴と言えるでしょう。
「南妙法蓮華経」はお釈迦様の心を表現したものです。日蓮宗では日本へ伝わった当初は珍しく、差別なく平等に成仏できるという教えが説かれていました。
浄土宗
日蓮宗に続き、浄土宗も五輪塔を建墓します。五輪塔を建墓しますが、石に刻まれている文字は梵字を用いずに「南・無・阿弥・陀・仏」を彫るのが一般的です。
石に刻まれている文字に特徴はありますが、墓石の形・色に対しての決まりはありません。
浄土宗は鎌倉時代に日本に伝わりました。開祖は法然です。浄土宗では「南無阿弥陀仏」を唱え続けることで仏から救われ、極楽浄土へ生まれ変われるという教えがあります。
五輪塔と似ている宝篋印塔
五輪塔と宝篋印塔は似ていますが、歴史や意味が違います。五輪塔と同じように5種類の石により構成されていますが、「笠」と呼ばれているパーツの四隅に突起があるのが宝篋印塔の特徴です。
「笠」にある四隅の突起は隅飾(すみかざり)と呼ばれています。如来が集っているとされている宝篋印塔は、子孫繁栄の意味も込められています。この点も、五輪塔との違いと言えるでしょう。
また、およそ50年以上前のご先祖を祀るために五輪塔を用いるのに対し、宝篋印塔はおよそ100年以上前になくなったご先祖を祀るために用いられます。
五輪塔の納骨方法を覚えておこう
五輪塔は平安時代末期頃、日本に伝えられたと言われています。日本に伝わった当初と現在では変化していますが、故人を大切にするという思いに変わりはありません。
宗派によって五輪塔を建墓するかどうかは変わるため、檀家となっている場合には確認が必要です。五輪塔と一般的なお墓では本質的な違いはありませんが、納骨方法が変わるため把握しておくと良いでしょう。
自分に合った納骨方法を考える際には、ぜひ参考にしてみてください。
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