
遺留分侵害額請求権の時効はいつ?進行を止める方法や注意点も解説

「そもそも遺留分侵害額請求権ってなに?」
「遺留分侵害額請求権に時効ってあるの?」
「遺留分侵害額請求権を行使して取り分を請求したい」
このように、遺産相続の遺留分について気になる方もいるでしょう。
本記事では、遺留分とは何かを紹介しながら相続できる遺留分が侵害された場合に請求できる遺留分侵害額請求権とその時効について解説していきます。
本記事を読むことで、侵害された遺産はきちんとした手続きを踏むことで相続できることがわかるでしょう。
また、遺留分侵害額請求権の時効を中断する方法や注意点について紹介しているため、実際に権利を行使する際に気を付けたいポイントも把握できます。
さらに、遺留分侵害額請求権を行使する際に争われる事例についても5つ挙げていきます。遺言書などを作成する際の参考にもなるでしょう。
遺産相続や遺言書、遺留分について気になる方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
遺留分とは
遺留分とは、一定の相続人に対して確保されている遺産のことです。相続人の生活を保障する目的があるため、遺言書に記載されていても奪えないことが特徴でしょう。
また、遺留分の割合は、遺留分の権利を持っている相続人の数などによって変わります。
例えば配偶者や子どものみの場合には2分の1、親のみの場合には3分の1、配偶者と子どもがいる場合には4分の1などです。複数の子どもがいる場合には、定められた割合をさらに分割していきます。
さらに、遺留分を持っている法定相続人は配偶者や子ども、直系の父母や祖父母です。兄弟や姉妹、甥や姪には遺留分がないため注意しましょう。
出典:民法|e-Gov法令検索
遺留分侵害額請求権とは
遺留分侵害額請求権とは、遺留分権利者が定められた遺留分を受け取ることができなかった際、侵害された遺留分に相当する金額が請求できる権利のことです。
被相続人は遺留分権利者以外に財産を贈与、遺贈してしまったために、遺留分を侵してしまうことがあります。遺言書によって遺留分まで遺留分権利者以外に贈与する旨が記載され、相続が執行されてしまう例もあるでしょう。
遺留分が受け取れなかった場合には遺留分侵害額請求権を行使し、まずは当事者間での話し合いや家庭裁判所の調停手続きを利用しましょう。
遺留分減殺請求権との違い
遺留分減殺請求権は、遺留分の侵害を受けた相続人が贈与や遺贈された財産の返還を求める権利です。
遺留分減殺請求権では遺留分の侵害を受けた相続人の取り分について、現物の返還を求める点が特徴でしょう。遺留分相当額の支払いは例外という位置づけになっています。
しかし、不動産や自社株の相続などの場合には相続がスムーズに進まない事例も多く、2019年の民法改正によって遺留分侵害額請求権に一本化されました。
遺留分侵害額請求権の時効
遺留分が侵害されていることを知らずに相続が進み、ほかの人に遺産が渡ってしまっても相当額の請求ができるのが遺留分侵害額請求権です。しかし、一定期間を過ぎてしまうと権利がなくなってしまうため注意しましょう。
ここからは、遺留分侵害額請求権の時効の成立時期について詳しくみていきましょう。
遺留分の侵害を知った時から1年
遺留分侵害額請求権の時効は1年です。相続が発生した場合には葬儀やさまざまな手続きに忙殺されることも多いため、気付いたら時効が成立している可能性があります。
遺留分権利者が遺産の取り分を侵害されていることがわかった際には、1年以内に相手方に請求の意思表示をしましょう。
侵害された遺留分の請求は当事者間で話し合いをするほか、家庭裁判で調停を申し立てる方法もあります。話し合いで折り合いが付かなかった場合や、話し合いができない場合には利用してみるのも良いでしょう。
相続の開始から10年
遺留分侵害額請求権の時効が10年となるのは、相続が開始された時点です。遺留分権利者が取り分の侵害を知らなくても、相続が開始されてから10年が経過すると時効が成立します。
また相続が発生した後、遺産分割協議で合意してしまうケースもあるでしょう。この場合、遺留分侵害額請求権の時効前であっても、遺留分の受取については再度相続人全員の合意が必要になります。遺留分については、事前によく確認しておくことが大切です。
遺留分侵害額請求権の時効を止める方法と注意点
遺留分侵害額請求権を行使することで、時効の成立が防げます。まずは、侵害された相手方に申し立てをしましょう。
ここからは、遺留分侵害額請求権の時効を止める際に注意しておきたいポイントを紹介していきます。
通知書を配達証明付内容証明郵便で送る
遺留分侵害額請求権の時効を止めるためには、相手方に意思表示する必要があります。相手方への意思表示は、配達証明付き内容証明郵便などを利用して通知書を発送しましょう。
裁判所へ申し立てるだけでは、意思表示とならないため注意が必要です。
相手方への意思表示は口頭でも可能です。しかし後に調停や訴訟まで進んだ場合には、通知の有無が証明できるため、内容証明郵便を利用するのがおすすめです。
遺留分侵害額請求権行使後の金銭支払請求権の時効
遺留分侵害額請求権を行使した後には、金銭支払請求権の時効が発生します。相手方に通知しただけでその後何もしなければ、一定期間後に時効を迎え金銭の請求ができなくなってしまうため注意しましょう。
金銭支払請求権の時効は5年です。しかし法改正があったため、2020年4月1日より前の遺留分侵害額請求権行使であれば10年となっています。
金銭支払請求権の時効を止める場合
交渉がまとまらず時効が成立しそうな場合には、裁判を起こして時効を中断するのも方法の1つです。
金銭支払請求権の時効の中断は、内容証明郵便などで返済請求をし、その後6か月以内に調停や訴訟の手続きをすれば可能です。裁判が確定した場合にはそれまでの時効が停止し、新たな時効が発生します。
また、相手方が金銭を支払うことを了承した場合や、該当する遺産の一部を支払った際にもリセットされます。しかし支払いがされなかった場合には、リセットされてから5年後に再び時効が成立してしまうため注意が必要です。
出典:民法|e-Gov法令検索
遺留分侵害額請求で争点となる事項例
遺族の関係が良く円滑な協議が進めば、遺留分で揉めることも少ないでしょう。しかし、主張の対立や複雑な背景があった場合には、スムーズな遺産分割が難しくなると言えます。
ここからは、遺留分侵害額請求権で争点となる原因について紹介していきます。
遺言書の無効
遺言書によって不平等な遺産分配が指定されている場合には、遺言書の無効を訴えて遺族間で揉める原因になる可能性があります。
例えば、1人の相続人に対してすべての財産を譲ると記載された遺言書は、遺留分を侵害していても有効です。一方、遺産を受け取れなかった遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権の行使ができます。
そのため、遺言内容に納得できなかった場合には遺留分の相続と共に遺留分を侵害している遺言書の無効が争われることもあるでしょう。
贈与・特別受益
被相続人が生前に特定の相手に多額の贈与をしていた場合には、遺産相続の際に特別受益の持ち戻しを訴えられる可能性があります。
特定の相手に対し特別に財産を遺贈、贈与していたために、遺産分割が不平等になると考えられるためです。
特別受益を受遺していた場合には、相続が発生した時点での遺産と贈与の額と合算して算定した相続分から遺贈、贈与された分を控除した額が相続分となります。
出典:民法|e-Gov法令検索
使途不明金の存在
特定の親族が被相続人の財産を自分のために使用していた場合には、使途不明金があるとして相続の争点になることがあります。
特定の親族が使い込みをしてしまったために遺産が少なくなり、ほかの遺留分権利者の取り分が減ってしまったと訴えられるケースです。使途不明金を使った親族に対し、遺留分の増額が請求される可能性があるでしょう。
養子縁組の無効
相続対策として養子縁組をしていた場合には、無効が争われる可能性があります。特定の相手への遺産を増やすために、その家族を養子縁組するケースです。
ほかの遺留分権利者の取り分を少なくし遺留分の請求を阻止する目的である場合には、遺留分侵害額請求権が訴えられ、養子縁組の無効が争われることがあるでしょう。
不動産の評価額
相続財産の中に不動産があった場合には、評価額が争われる可能性があります。遺留分の割合は法律で定められていますが、不動産の評価額は算定結果が変動することがあるためです。
ほかにも売却の有無や、売却しない場合にはだれが権利を持つのかなど、不動産についてはさまざまな争点で争われるケースがあるでしょう。
遺留分侵害額請求権の時効について把握しておこう
ここまで遺留分侵害額請求権について、時効や争点となる事例を挙げて紹介していきました。
遺留分侵害額請求権の時効は遺留分の侵害を知ってから1年、または相続が開始されてから10年です。しかし、相手に通知してから何もアクションを起こさなければ、支払いの請求権も時効を迎え、遺留分の相続は難しくなるでしょう。
遺留分とは、遺留分権利者の持つ相続の権利です。遺留分が侵害された際には、遺留分侵害額請求権を行使できるように、内容を把握しておきましょう。
お電話でも受け付けております
