
二次相続とは?財産分配のシミュレーションや対策ポイントを解説

「二次相続と一次相続の違いって何?」
「二次相続対策で今からできることは何?」
相続税の問題を考える時に、一次相続や二次相続という言葉を聞いたことはないでしょうか。
この記事では、相続税問題で重要な二次相続について解説し、分配方法別に見た相続税のシミュレーション結果や二次相続対策のポイントなどを紹介しています。
子が相続すると有利な財産や、相続における相続税以外の注意点についても合わせて紹介しています。この記事を読むことで相続について詳しく知ることができるでしょう。
相続対策について悩みのある人は、ぜひこの記事を参考にしっかりとした対策へ役立ててください。
そもそも二次相続って?
一般的に両親の片方、もしくは両方が亡くなることで相続が発生します。両親と子が2人いる4人家族を例に、「一次相続」と「二次相続」を解説しましょう。
まず、この4人家族の父親が亡くなると、残された配偶者の母親と子である2人の合計3人が相続人となる相続が発生します。これが「一次相続」と呼ばれるものです。
一次相続が完了し、母親も亡くなると再び相続が発生します。この相続は、母親が相続した父親の遺産に対する相続でもあります。「一次相続」を経験した家族の子が両親の遺産を相続する形で行われる相続が「二次相続」です。
二次相続の4つの特徴
二次相続は相続税の計算方法や利用できる控除などの制度が絡んでおり、それらの要因によって、一次相続と異なる4つの特徴を持っています。ここからは、二次相続の特徴について紹介しますので参考にしてください。
- 一次相続よりも相続税が増える
- 相次相続控除が使える
- 控除額や非課税枠が少なくなる
- 配偶者に対する税額軽減が適用されない
1:一次相続よりも相続税が増える
二次相続が一次相続より相続税が増える要因は、相続人の人数が関係しています。
前述した通り、二次相続は一次相続で相続した配偶者の財産を他の相続人が相続するものです。つまり、相続人の人数が減った状態で行われるため、計算式に相続人の人数が組み込まれている基礎控除額などに影響します。
2:相次相続控除が使える
相次相続控除は、二次相続の被相続人が一次相続で支払った相続税の一部を、被相続人から財産を取得する人の相続税から差し引ける制度です。この制度は二次相続でしか利用できず、加えて以下の3つの条件を満たす必要があります。
・二次相続の相続人である
・一次相続から10年以内に二次相続が発生している
・一次相続で相続税を納税している
つまり、相続権を放棄したり失っていたりするとこの制度は利用できません。また、この制度には、経過年数に応じて控除金額が10%ずつ減額されるという特徴があります。
3:控除額や非課税枠が少なくなる
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算され、1人減るごとに600万円減ることがわかります。また、死亡保険金と死亡退職金にある非課税限度額は、法定相続人1人あたり500万円です。
二次相続で相続人の数が減ることは、基礎控除額だけでなく死亡保険金と死亡退職金に設けられている非課税枠の減少にも関わっています。
4:配偶者に対する税額軽減が適用されない
配偶者控除は配偶者のみ利用できる特例で、大きな節税効果を持っています。課税対象額が「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分相当額」において、多い方の金額までならば相続税がかからないというものです。
しかし、二次相続はその配偶者が被相続人となるため、この特例を使用できません。
相続の税額シミュレーション
相続税対策は、二次相続の特徴を把握した上で一次相続の段階から戦略を立てることが大切です。
ここからは、一次相続での相続人を「母」1人と「子」2人の合計3人、相続する遺産額を「2億円」と仮定して、分配する割合別に相続税のシミュレーションを行った結果を紹介します。なお、この例での基礎控除額は、以下で示す通りです。
・一次相続時:(3,000万円+600万円×3人)=4,800万円
・二次相続時:(3,000万円+600万円×2人)=4,200万円
均等に分配する場合
均等に分配する場合の一次相続における課税価格は、母6,600万円、子1人につき6,700万円です。計算された相続税額は母891万円、子1人あたり904万5,000円となりますが、配偶者控除により母は0円です。実際の一次相続の納税額は子2人の合計である1,809万円とわかります。
二次相続は6,600万円を2人で分けるため、子1人あたりの課税価格は3,300万円となり、相続税額は1人あたり130万円で合計金額は260万円となります。
したがって、一次相続と二次相続を総合した納税額は2,069万円です。
法定相続分の通りに分割する場合
法定相続分通りに分割する場合の一次相続で取得する財産は、母1億円、子1人あたり5,000万円となります。相続税額は母が1,350万円、子が675万円ずつです。ここから配偶者控除で母は0円となり、一次相続の納税額は1,350万円となります。
二次相続では5,000万円ずつの相続となり、相続税は385万円ずつの負担となります。したがって、総納税額は1,350万円+385万円×2の2,120万円です。
配偶者が税額軽減を利用して分割する場合
まず、一次相続で母が取得する財産は配偶者控除の限度額である1億6,000万円です。子は2,000万円ずつの相続となります。計算される相続税額は、母が2,160万円で子が270万円ずつとなりますが、配偶者控除により一次相続での相続税は540万円です。
そして、二次相続では8,000万円ずつの相続となり、相続税は1,070万円ずつと計算されます。したがって、相続税の総額は540万円+1,070万円×2の2,680万円です。
二次相続対策のポイント
相続税対策は時間をかけて行うと効果が高まるため、一次相続の時から対策を行う方が効果的です。
二次相続がいつ発生するかは誰にもわかりません。ポイントは、二次相続が起きるまでに、財産をできるだけ被相続人から相続人に移すことと、小規模宅地等の特例などの相続税対策を使える状態を整えることの2つです。
下記に挙げる対策方法について、詳しく見ていきましょう。
- 生前贈与をする
- 財産を現金にしておく
- 配偶者が生命保険に加入する
- 一次相続で分配する財産の種類に注意する
- 二次相続で相次相続控除を活用する
生前贈与をする
生前贈与は、相続が発生する前に将来相続人となる人に贈与として財産を移すことです。ただし、生前贈与には贈与税がかかります。法改正などがあった際には贈与税のルールを確認しておくことが大切です。
生前贈与が相続税対策として有効な理由は、暦における1年間で110万円までの非課税枠があるためです。この非課税枠内で毎年贈与をすることで贈与税を抑え、節税へとつなげます。
財産を現金にしておく
一次相続で配偶者が取得した財産のうち、預金化できるものを全て現金化しておくのも二次相続対策の1つです。二次相続の相続税は一次相続よりも高額であるため、支払いに困らないように納税用のお金として用意しておく必要があります。
配偶者が生命保険に加入する
二次相続の納税資金として準備できる方法に、配偶者の生命保険への加入があります。
生命保険金は死亡保険金として支払われるお金であり、取得者に「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が適用されます。納税資金の確保と同時に相続財産を減らす効果を兼ね備えている方法です。
一次相続で分配する財産の種類に注意する
財産の中には、一次相続の時点で子に相続させる方が良いものもあります。
一次相続での相続税を軽減するために配偶者の特例などを活かしたいのは当然でしょう。しかし、財産の中には時間が経つにつれて値上がりが見込まれるものがあります。これらが二次相続の時に予想以上に値上がると、想定以上の相続税がかかってしまうからです。
相続する遺産は相続税の申告期限までに確定させれば構わないため、二次相続を見据えた財産の分配を行いましょう。
二次相続で相次相続控除を活用する
一次相続と二次相続の間が10年以内であれば、二次相続でしか使えない相次相続控除を忘れずに利用しましょう。この制度により、一次相続で発生した納税額の一定金額が二次相続の相続税から控除されます。
子が相続すると有利な財産
一次相続での配偶者の税額軽減と二次相続対策を考えた時に、全てを配偶者が相続するのではなく、子が相続した方が二次相続発生時に有利となる財産があります。以下で詳しく紹介するので、参考にしてください。
値上がりが見込まれる財産
一次相続で配偶者が相続した方が安くても、その財産が二次相続の時に大きく値上がりしていたら、二次相続での相続税の負担も大きくなってしまいます。
二次相続が発生するタイミングが不明である以上、値上がりが見込まれるものは先に子に相続させると良いでしょう。
特例を適用した宅地
小規模宅地等の特例が利用できる土地についても、子が相続した方が良いとされています。具体的には、被相続人の自宅がそれに当たります。
小規模宅地等の特例は、被相続人が居住していた土地の330㎡までの部分について、相続税評価額を80%減額できる制度です。
ただし、子がこの特例を利用するためには、両親との同居が必須です。早めに同居する以外にも、二世帯住宅にしたり、賃貸併用住宅にしたりすることで解決できるため、親世代が元気なうちに建て替えることも含めて検討してみましょう。
不動産などの家賃収入
家賃収入などによって財産が増える収益物件は、一次相続で子に相続させた方が相続税の負担軽減につながります。
一次相続で配偶者が家賃収入を得られる物件を相続して、一次相続での節税を行ったとしましょう。しかし、家賃収入によって年月が経つほど配偶者の財産は増加します。
二次相続で相続する財産が増えれば、子に発生する相続税も増えてしまい、総合的に節税とならないことに注意しましょう。
相続税の他にも!相続の注意点
相続税対策ばかりに気を取られていると、いざという時に意図していなかった問題に遭遇することがあります。相続に備える場合には、以下の点にも注意して家族間で話し合いをしましょう。
配偶者の生活費と住居について話し合っておく
小規模宅地等の特例で子に相続した場合、税金面では有利になるものの、高齢の配偶者の住む場所と生活費について問題になります。
住む場所の解決策の1つとして、配偶者には「配偶者居住権」があります。これは、配偶者が相続発生後であっても被相続人が所有していた建物に住み続けられる権利です。
配偶者居住権は、被相続人の遺言または遺産分割協議により取得させることができ、この権利で配偶者が住んでも二次相続の相続財産にはなりません。
相続税の有利不利ばかりでなく、配偶者の将来についても配慮した話し合いをしましょう。
予め遺産争い対策を行っておく
二次相続は一次相続と違い、兄弟姉妹間の対立を仲裁する両親がいないため、遺産争いが起こりやすくなります。争いを避けるためにも予め家族でよく話し合って、一次相続と二次相続で相続財産をどう分けるのか決めたり、遺言状を作成したりする方が得策でしょう。
二次相続について調べて事前対策しておこう
今回の記事では二次相続について取り上げましたが、これらはあくまで基本的なポイントに過ぎません。実際の財産でのシミュレーションは、一次相続と二次相続の間に起きる財産の減少度や価値の変動、税法の改正などの不確定要素が絡み合い複雑になります。
正確なシミュレーションを行う場合には相続税に詳しい税理士に依頼をし、遺産争いへの対策なども交えた話し合いを家族内で行いましょう。
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