納骨の時に塔婆は必要？立てるタイミングや目的・注意点も詳しく解説

塔婆は、仏塔を意味する「卒塔婆（サンスクリット語の「ストゥーパ」）」を略した言葉で、塔のような形状をした縦長の木片です。「ストゥーパ」は本来、「仏舎利塔」と呼ばれるお釈迦様の遺骨を納めた塚を指しています。

しかし、分骨する遺骨が不足していたため、徳の高い僧侶の遺骨や経文を塔に納めることになりました。また、これらも同じようにストゥーパと呼ばれたことから、これをもとに塔婆が作られることになりました。

塔婆は一般的に、納骨式やお盆、お彼岸の墓参りなど、故人の追善供養を行う際に遺族がお墓の後ろに立てるケースが多いです。追善供養とは、「生きている人の善行が故人の善行になる」という考えをもとにした供養です。

そのため、人が亡くなるとすぐに極楽浄土へ導かれるという教義を基本とする浄土真宗では、塔婆を立てる習慣がありません。

前述したように、塔婆を立てる目的は追善法要であるため、塔婆を立てなければいけないタイミングというものはありません。しかし、供養の節目となる四十九日や一周忌、納骨式などの法要、命日、お盆、お彼岸などのタイミングで立てるのが良いと言われています。

また、立てる本数にも決まりはありませんが、一人の故人に対して塔婆1本という形で立てることが一般的となっています。その他、「○○家一同」というような形で家族でまとめて立てたり、塔婆の施主が一人で両親に対して1本ずつ立てたりしても問題ありません。

経木塔婆は、経木という薄い木で作成された小さな塔婆です。経木塔婆の使い方は宗派や地域によっても異なりますが、一般的な塔婆がお墓の後ろに立てるものであるのに対して、経木塔婆は戒名を書いて仏壇に祀ったり、お経や戒名を記して川に流したりといった方法で用いられます。

なお、経木塔婆は主に関西で行われる風習となっています。

塔婆の表側には梵字で「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5文字が書かれています。梵字は古代インド語を表しており、サンスクリット語を表記する際に用いられる文字です。

また、「キャ・カ・ラ・バ・ア」をそれぞれ漢字にすると、五輪塔の5つの要素を意味する「空・風・火・水・地」という意味の文字になります。塔婆の裏側にも梵字で「バン」という大日如来を意味する文字が記載されます。

種子（しゅうじ、しゅじ）とは、仏様を表す梵字です。「仏の種」という意味を持つ言葉で、年忌法要に関わる十三仏のうちのどれか1つを表す梵字が表側に書かれます。

十三仏とは、追善供養を司っている十三の仏様のことです。たとえば、不動明王であれば初七日、釈迦如来であれば二七日（14日）、文殊菩薩であれば三七日（21日）など、供養を行う日が決まっています。

そのため、一般的には供養する日に縁のある仏様が選ばれます。

塔婆には、故人の戒名（法名）や故人の年忌も記載されます。戒名は、仏様の弟子になった証として僧侶につけてもらう名前です。年忌の部分には「三回忌追善等」といった文字が記載されます。

戒名や年忌は、塔婆の表側の下の方に記載されます。

塔婆の裏側には、塔婆を立てた年月日が記載されます。多くの宗派では、塔婆の裏面の上部には梵字で「バン」という大日如来を意味する文字が記載されており、次に「○年○月○日」という形式で塔婆の建立年月日を記載します。

塔婆の裏側の下の方には施主名を記載します。施主とは塔婆を依頼した人のことで、依頼者の名前が記載されます。

なお、没年月日や経文を記載する、施主名を塔婆の表側に書くなど、塔婆に書かれる文字や書く場所は宗派や地域などによって違いがあるため、一例として押さえておくと良いでしょう。

塔婆供養の当日は、基本的に僧侶の案内に従って塔婆を立てます。遺族が塔婆を立てるケースもあるため、指示された場合は自分で立てるようにしましょう。

多くの場合は僧侶が塔婆を立ててくれるため、僧侶の指示を待つ形で問題ありません。

前述したように、寺院に塔婆作成を依頼する場合は塔婆料を支払う必要があります。塔婆料は事前に確認しておき、塔婆供養の当日に手渡しするケースが多いでしょう。

塔婆料の相場としては、3,000〜5,000円程度が目安になります。無事に塔婆を立てたら、「塔婆供養いただきありがとうございます」など、お礼の言葉と共に僧侶に塔婆料を渡しましょう。

浄土真宗は「他力本願他力念仏」という教義が基本となっており、人が亡くなると仏様の導きによってすぐに極楽浄土へ導かれるという考え方になっています。

このように、浄土真宗には「生きている人が追善供養を行うことで故人のためになる」という考えが当てはまらないため、塔婆を立てる必要はありません。

また、仏教以外の宗教の場合も塔婆は立てません。他にも、地域によっては塔婆を立てる習慣がないというケースがあるため、事前に自分の家のお墓に塔婆を立てる必要があるのかどうか確認しておきましょう。

塔婆料とお布施は異なるものであるため、塔婆料はお布施とは別にするようにしましょう。塔婆料は白い封筒に入れ、表書きには「御塔婆料」や「塔婆料」など、塔婆料であることがわかるように記載します。

なお、塔婆料の相場は塔婆1本につき2,000円〜10,000円程度となっています。封筒に中袋がない場合は、裏面に施主の名前や住所と共に金額も記載しておきましょう。

塔婆は木の板であるため、時間が経つことによってだんだんと朽ちていきます。古い卒塔婆をそのまま放置しているとお墓が汚れてしまう原因にもなるため、古い塔婆は処分するようにしましょう。

古くなった塔婆の処分時期は管理している霊園や寺院によっても異なりますが、塔婆供養のために用いるものであるため、追善供養の翌日には廃棄してしまって問題ありません。

また、塔婆は木製であるため燃えるごみに出すことも可能ですが、焚き上げ料を払ってお寺にお焚き上げ処分をしてもらう方が良いでしょう。