
不動産登記申請に委任状が必要な場合と書き方は?注意点とテンプレートも紹介

「相続で不動産を引き継いだが、登記は代理人に依頼できる?」
「不動産登記を代理人にお願いする場合、委任状が必ず必要になるの?」
「不動産登記を代理人に委任する場合の委任状の書き方が知りたい」
代理人に委任して不動産登記申請をしようとしている人の中には、このような疑問や不安があるのではないでしょうか。
この記事では、不動産登記申請で委任状が必要なケースや委任状に記載すべき事項と書き方、委任状を作成する場合の注意点などを紹介しています。この記事を読むことで、委任状の具体的な書き方が把握できるため、スムーズに委任状を作成できるようになるでしょう。
代理人に委任して不動産登記申請しようと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
不動産登記を代理人に委任する場合とは
不動産登記の手続きは基本的に誰でもできますが、登記に詳しくない人からすると書類も多く、登記簿の内容も良く分からないなど、難しいと感じる部分が多くあります。
素人が全てを自分で行おうとすると時間がかかるだけでなく、手続きに不備があるとやり直しが必要になるため代理人に依頼したいと考える人も多いでしょう。
不動産の登記申請は代理人でもできる
不動産登記とは、大切な資産である土地や建物といった不動産を守るために設けられているものです。不動産登記申請を行うと、土地や建物、所有者の情報が公の帳簿である登記簿に記載され、第三者にも分かるようになり、自分の権利を守れるようになります。
不動産の登記申請は、必ず本人がしなければならないというものではなく、代理人に依頼して申請を行ってもらうことも可能です。
法定代理人と任意代理人の違い
不動産の登記申請を行う代理人には、法定代理人と任意代理人の2種類があります。
18歳未満のものを監督保護する親権者や、18歳未満のもので親権者がいない場合などに後見となる未成年後見人、成年被後見人に代わって法律行為を行ったり補助したりする成年後見人が法定代理人です。
一方、任意代理人とは法定代理人以外の代理人のことを指します。不動産登記申請の場合、弁護士や司法書士が任意代理人となることが多いでしょう。
登記申請を代理人が行う場合は委任状が必要
不動産登記申請を弁護士や司法書士などの代理人に委任する場合には、代理人に権限があることが分かる書類である委任状が必要です。
本人が不動産登記申請する場合は委任状は必要ありませんが、代理人に申請をしてもらう場合には必ず委任状を用意しておきましょう。
不動産の登記申請に委任状が必要な場合
誰かに不動産の登記申請を依頼する場合は委任状が必要ですが、代理人の種類によっては委任状が不要のケースもあります。不動産の登記申請を代理人に依頼して行う場合は、まず委任状が必要か確認しましょう。
以下では、不動産の登記申請に委任状が必要な場合と不要な場合を紹介していきます。
司法書士などの代理人が登記手続きをする場合
家族や知人、司法書士、弁護士などの任意代理人に登記手続きを依頼する場合、代理人の権限を証明する「代理権限証明情報」というものを申請情報と共に提出しなければなりません。代理権限証明情報というと難しく聞こえますが、委任状がこの証明の役割を果たします。
受任者と委任者の情報が書かれた委任状あれば、司法書士などの任意代理人に登記申請を代理で行ってもらえます。
なお、報酬をもらって代理で不動産登記申請できるのは、司法書士などの法律で定められた人だけです。家族や友人に報酬を支払って不動産登記申請を行ってもらうのは法律違反になるため、注意しましょう。
共同相続人の代表者が登記手続きをする場合
相続で不動産を受け継ぐ場合、相続人が必ず一人とは限らず、複数の相続人がいる場合も少なくありません。
共同で不動産を受け継ぐ場合、相続人の内の一人が代表者として登記手続きしたり、司法書士や弁護士に依頼することになります。共同相続人の代表者や司法書士などが登記手続きする場合には、相続人全員の委任状が必要です。
なお、法定通りに不動産を分割する場合には、代表者以外の委任状は要りません。例えば、兄弟3人が3分の1ずつ法定通りに相続することが決まり、長兄が手続きをする場合には、長兄分の委任状だけで良いということになります。
ただ、委任状を提出しておくことで、登記識別情報通知書が代表者以外にも届くようになります。登記識別情報通知書は、不動産の名義人に発行される12桁の符号が書かれたものです。
登記手続きの際に必要になるものであるため、委任状を提出して相続人全てに届くようにしておいた方が良いでしょう。
委任状不要の場合もある
基本的には本人以外の第三者が不動産登記をする場合には委任状が必要で、本人が申請する場合には委任状が不要ですが、不動産登記の申請を代理で行う人が法定代理人である場合は例外です。
前述したように法定代理人には親権者、未成年後見人、成年後見人がおり、このような法律で代理権が認められた人が代理人であれば委任状は要りません。
委任状の記載事項と書き方
ここからは、委任状の記載事項と書き方について紹介していきます。
不動産登記申請の委任状には決まった形式はなく、誰が誰に委任するか明確認するなど要点を押さえておけば誰でも作成できます。
不動産登記申請を代理人にこれから依頼しようとしている人は、以下で紹介する内容を参考に委任状を作成してください。
受任者の住所と氏名
委任状では、誰が誰に委任するかということを明確にしなければなりません。委任状とタイトルを記載したら、まず受任者の住所と氏名を正確に記載しましょう。
住所は住民票に書かれている通りに記載した方が良いですが、番地は●●-▼▼とハイフンを用いて、簡単に書いても問題ありません。
登記申請を委任する旨
次に、登記申請を委任する旨を記載します。
受任者の住所と氏名を記載した後に、「私は上記の者を代理人と定め、次の登記申請に関わる一切の権限を委任する。」と記載しましょう。
登記の目的
登記申請を委任する旨の後に、登記の目的を記載しましょう。登記の目的に記載する内容は、相続する不動産が亡くなられた被相続人が単独所有していたものなのか、誰かと共有で所有していたものなのかで変わってきます。
単独所有していた不動産であれば「登記の目的 所有権移転」、共同で所有していた不動産であれば「登記の目的 ○○○○(亡くなられた被相続人の氏名)持分全部移転」と記載するようにしましょう。
不動産の状態が分からない場合は、登記事項証明書で確認してから記載してください。
登記原因
登記の目的の後に、登記原因を記載しましょう。登記原因とは、登記される原因となった事実や法律行為のことで、効力が発生した日付と共に記載します。
被相続人が亡くなられたことが原因で不動産を引き継ぐ場合、「登記原因 令和○年○月○日(和暦で記載) 相続」といったように記載しましょう。
この場合、効力が発生した日付は被相続人が亡くなれた日になり、分からない場合は戸籍謄本などで確認してください。
委任者の住所・氏名・持ち分
登記原因の後には、委任者の住所・氏名・持ち分を記載します。委任者とは、不動産登記申請を依頼する相続人のことで、持ち分とは相続する割合のことです。最初に、亡くなられた被相続人の氏名を記載し、2行目以降に相続人の持ち分・氏名・住所を記載していきます。
また、複数人が共同で不動産を相続する場合は、持ち分を記載するようにしましょう。
登記手続きを委任する不動産の表示
登記事項証明書や権利証などを見ながら、相続する不動産の情報を記載していきます。マンション以外の建物、マンション、土地で記載事項が異なりますので注意しましょう。
相続したものがマンション以外の建物は、「不動産番号・所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を記載します。土地は、「不動産番号・所在・地番・地目・地積」を記載しなくてはいけません。
マンションは、「不動産番号・一棟の建物の表示(所在・建物の名称)・専有部分の建物の表示(家屋の名称・建物の名称・種類など)・敷地権の目的である土地の表示(土地の符号・所在・地目など)・敷地権の表示(土地の符号・敷地権の種類・敷地権の割合など)を記載します。
相続した不動産が共同所有である場合は、持ち分も記載するようにしましょう。また、一度に複数の不動産を相続する場合、不動産の数だけ表示を記載しなくてはいけません。
登記申請に付随して必要な手続き一切の委任
ここからは、登記申請に付随して必要な手続き一切の委任に関する記載事項と書き方について紹介します。
不動産登記申請する場合、それに付随する手続きが必要になることもあります。付随する手続きについても委任状に記載しておかないと、登記申請以外のことは自分で行わなくてはならなくなるため、記載漏れがないように注意しましょう。
登記識別情報受領
登記識別情報受領に関する事項を入れておかないと、代理人が受領できず自分で受け取りに行かないといけなくなります。「登記識別情報を受領する権限の一切を委任する」という文言を委任状の中に入れておきましょう。
また、登記識別情報の受領には送付も選べるようになりました。送付を希望する場合は、申請書にその旨を記載し、郵便切手の提出が必要です。
復代理人選任
復代理人選任関する事項は、代理人が忙しいなどの事情で別の人に手続きを委任する場合に必要になるものです。「復代理人選任に関する一切の件」ということを委任状に記載しておくことで、代理人がさらに別の人に手続きを委任できるようになります。
もし、自分が選任した代理人以外に不動産登記申請にかかる手続きをしてほしくない場合には、この条項は削除しておくと良いでしょう。
原本還付請求・受領
不動産の登記手続きでは、被相続人の戸籍(除籍)謄本や住民票の除票、相続人の戸籍抄本や住民票、印鑑証明書など様々な書類を提出しなくてはなりません。原本還付請求しておくことで、これらの書類を返却してもらえます。
原本還付請求を行い、返却してもらう書類の受け取りを代理人にお願いしたい場合には、「原本還付請求及び受領に関する一切の件」という文言を委任状に入れておくようにしましょう。
登記識別情報受領に係る復代理人選任の件
「登記識別情報受領に係る復代理人選任の件」は、登記識別情報の受領を代理人がさらに別の人に依頼する場合に必要になる条項です。
復代理人の選任ができるのは、委任者の許諾がある場合とやむを得ない事情がある場合に限られます。復代理人選任の条項と同じように、委任者が代理人以外に権限を認めたくない場合には、削除しておくことをおすすめします。
登記申請の取下・登録免許税還付金受領
登記申請の取下とは、不動産の登記申請を取りやめに関する項目です。また、登録免許税還付金受領とは、登記申請の取下や過誤納により登録免許税の還付を受けるための項目になります。
「登記申請の取下及び登記に係る登録免許税の還付金受領に関する一切の件」と記載しておくことで、代理人に委任することが可能です。
日付・住所・氏名・押印
最後に、日付と委任者の住所・氏名を記載して押印します。
日付は、委任状を作成した日を、委任者の住所は住民票上のものを記載しましょう。また、氏名は直筆で書いた方が、偽造などのトラブルが起こらずに安心です。
登記の委任状の注意点
最後に、不動産登記申請に委任状を作成する場合の注意点を見ていきましょう。
委任状を作成することで代理人に、自分が持つ権原を委譲することができますが、そこにはリスクもあります。以下で紹介するポイントに注意しながら委任状を作成することで、自分の権利を守りましょう。
白紙委任状は危険
代理人や委任すべき事項が決まっていないなどの事情で、一部を空欄にして作成した委任状が白紙委任状です。
白紙委任状は、詳しい内容を決める前に作成できるため非常に便利ですが、委任者の意志に反した内容が記載されてしまう恐れがあります。空欄を勝手に埋められてしまうと、多大な損害を被ってしまうことも考えられるため、白紙委任状は作成しない方が良いでしょう。
書き間違えた場合は二重線を引き訂正印
委任状を作成中に書き間違いが生じた場合には、二重線を引きその上に訂正印を押して修正するようにしましょう。
訂正箇所が複数ある場合は、訂正印同士が重ならないように注意してください。また、訂正印に使う印鑑は、署名の所に押印した印鑑を使うようにしましょう。
認印でもよい
不動産を相続する場合の所有権移転登記の委任状に使用する印鑑は、実印ではなく認印でも問題ありません。実印が良いと感じる人は実印を押し、認印でも構わないというのであれば認印を使用しましょう。
捨印はしない
捨印とは、間違いが見つかった場合に速やかに訂正できるように、あらかじめ余白に訂正印を押しておくものです。
捨印は便利ではありますが、委任者の意向に基づかない内容に書き換えられるなどの悪用の恐れがあります。捨印は利用せず、間違いが見つかったらその都度、訂正印を押すようにしましょう。
複数枚になる委任状には契印する
契印は2枚以上の契約書などの書類がある場合に、連続した文章であることを示すために押されるものです。見開き2ページにまたがって印鑑を押すことで、連続したページであることを証明できます。
委任状が複数枚になる場合に、この契印が行われないと、委任状の一部を抜き取られたり、改ざんされたりする恐れがあるでしょう。
委任状が2枚以上の複数枚になる場合は、ホチキスなどで留めた後に必ず契印するようにしてください。
委任状を活用して登記申請をスムーズに進めよう
ここまで、不動産登記申請に委任状が必要な場合や書き方などを紹介してきました。本人及び法定代理人が不動産の登記申請する場合は委任状は不要ですが、それ以外の人が代理申請する場合には委任状が必要になります。
不動産登記申請を考えている人は、この記事で紹介したことを参考に委任状を作成し、手続きをスムーズに進めましょう。
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