
貸金庫の相続で起きるトラブルとは?開ける際の手順や注意点も解説

「相続財産を調べていたら貸金庫があった」
「相続人が故人の貸金庫を開ける手続きを知りたい」
このように、相続手続きをしている人の中には、貸金庫の相続について疑問を持つ人も少なくありません。
本記事では、相続人が貸金庫を開ける際の手順や注意点、貸金庫を相続した場合のポイントを紹介しています。
この記事を読むことで、相続人が貸金庫を開ける際に必要な書類や手続きの流れ、貸金庫の相続で起きうるトラブルと対処法を知ることができます。その知識をもとに貸金庫を開けられるため、相続手続きをスムーズに進められるでしょう。
貸金庫の利用を検討している方や、貸金庫の相続について知りたい方はこの記事をチェックしてください。
貸金庫は相続税の対象になる?
貸金庫とは、銀行などに設置されている貸し出し用の金庫です。料金はかかりますが、安全な場所で保管したい貴重品を保管できます。
相続税の対象は金銭に見積もれる経済的価値のあるすべての財産であり、貸金庫に保管されているものがその定義に該当すれば相続税の対象となるため、貸金庫の利用者が故人(被相続人)となった際には注意が必要です。
貸金庫の相続方法
前項目では相続税の観点から貸金庫が対象になるのか解説しましたが、民法上、相続開始により相続人が承継するのは、被相続人の財産に属する一切の権利義務です。
つまり、貸金庫を借りていたという被相続人の契約(貸金庫)は相続財産として相続人に引き継がれることになります。
ここでは、貸金庫の相続方法について「遺言がある場合」と「遺言がない場合」に分けて紹介します。
遺言がある場合
遺言がある場合は原則として、遺言書に記載されている遺言者の意思に従った遺産の分配がなされます。
遺言書の方式は主に公正証書遺言と自筆証書遺言があり、公正証書遺言と法務局において保管されている自筆証書遺言以外は家庭裁判所での「検認」が必要です。
なお、兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」という最低限の取り分が確保されており、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害請求」ができます。
出典:遺言書の検認|裁判所
遺言がない場合
遺言がない場合は相続人が相続財産を承継しますが、誰が何を相続するのかを決めるために遺産分割協議を行います。
遺産分割協議は相続人全員の合意によって有効に成立するため、まずは「相続人の調査」が必要です。また、分割する財産を把握するため、事前に「相続財産の調査」を行い、分割協議では法定相続の割合に関わらず遺産を分割できます。
遺産分割協議を行った場合、協議結果を対外的に証明するために作成されるのが遺産分割協議書です。
相続人が貸金庫を開ける際の手順
被相続人が貸金庫を借りていた場合、金庫の中には相続手続きを左右する品が保管されている可能性が高いため、できる限り早急に金庫を開けて中身を確認する必要があります。
相続手続きを左右する重要な品が保管されているという事情から、相続人が貸金庫を開ける場合にはいくつかの手順が必要です。
ここでは、相続人が貸金庫を開ける際の手順について紹介します。
金融機関に連絡して予約を取る
相続人全員が立ち会える日を決めてから、金融機関へ予約の連絡を入れます。希望日時で必ずしも予約が取れるとは限らないことを考慮して、候補日や時間を複数決めておくと良いでしょう。
また、金融機関によっては必要書類が異なるため、予約の際に金融機関から説明される必要書類を書き留めて、書類を準備しておくことも大切です。
必要書類を揃える
金融機関へ行く日までに必要書類を揃えます。書類に不備があると金庫を開けてもらえないこともあるため、不備のないように揃えることが大切です。一般的な必要書類は下記のとおりです。
・被相続人の除斥謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・貸金庫契約時の届出印
・貸金庫の鍵もしくはカード
・貸金庫開扉申請書(金融機関所定の開庫手続きの書類)
相続人が立ち合い貸金庫を開ける
必要書類に不備がないことを確認後、金融機関の行員と相続人が立ち合いのもと貸金庫が開けられます。
貸金庫を開ける際は内容物の不正な着服や隠ぺい行為の防止のため、行員によって「立会人全員の名前」「貸金庫の内容物」が記録されます。
中身を確認し解約手続きをする
貸金庫の中身を確認後は解約手続きをします。貸金庫の料金は口座から引き落とされますが、契約者が故人となった後は口座が凍結してしまうため、口座凍結後から解約日までの料金清算が必要です。
一般的には現金での支払いとなるため、事前に清算額を確認しておくと良いでしょう。
相続で貸金庫を開ける際の注意点
相続で貸金庫を開ける際は、原則相続人全員の立ち合いが求められますが、さまざまな理由により全員の立ち合いが難しい場合があります。
ここでは、相続人全員が立ち合えない場合をふまえ、相続で貸金庫を開ける際の注意点について紹介します。
相続人全員の同意と立ち合いが必要
相続で貸金庫を開ける際は高齢者であったり、遠方に住んでいたりと全員の立ち合いが難しいケースがあるため、日程の調整には注意が必要です。
ただし、どうしても立ち合えない相続人がいる場合は、委任状にて同意を得ることで対処できます。委任状の書式については金融機関に書式があるため、問い合わせしてみると良いでしょう。
遺言執行者がいるとスムーズ
遺言で遺言執行者が指定され、かつ、遺言執行者に貸金庫の手続きに関する権限を付与している場合は、遺言執行者が単独で貸金庫の手続きを行うことができます。
一方、遺言執行者が指定されているだけの場合は相続人全員の立ち合い、もしくは相続人全員の同意が必要となるため注意が必要です。対処すべき事項を一任できる遺言執行者がいると金庫を開ける手続きをスムーズに行えます。
貸金庫の相続で起きる4つのトラブルと対処法
相続が開始してから貸金庫の存在が発覚するというケースもあるように、貸金庫の相続では貸金庫特有のトラブルがあります。
ここでは、貸金庫の相続で起きる4つのトラブルとその対処法について紹介します。
1:貸金庫の鍵がない
貸金庫の鍵やカードが見つからない場合は、費用はかかりますが金融機関に再作成や再発行の依頼ができます。被相続人の貸金庫を開ける手続きには時間がかかるため、貸金庫の鍵がない場合は速やかに再作成・再発行を依頼するようにしましょう。
2:相続人と連絡が取れない
被相続人の貸金庫を開けるには相続人全員の立ち合いや同意が必要ですが、相続人と連絡が取れないというトラブルもあります。主な理由は「住所が分からない」「行方不明である」の2つで、それぞれの対処法は下記のとおりです。
・住所が分からない場合
住所が分からない相続人の「戸籍の附票」を取得することで住所を確認できます。戸籍の附票とは戸籍が作られてからの住所履歴が分かる書類で、複数回、引越しをしている人の住所をたどることができます。
・行方不明の場合
戸籍の附票を取得しても相続人の居場所が分からない場合は「不在者財産管理人の選任」を家庭裁判所に申し立てます。選任された不在者財産管理人は、行方不明の相続人の代わりに相続手続きに参加できるため、貸金庫を開ける手続きに参加してもらうことが可能です。
3:多額の現金が入っていた
被相続人の貸金庫を開けてみると多額の現金が入っていることがありますが、多額の現金は発見が遅れると思わぬトラブルの原因になることがあります。
たとえば、すでに終わった遺産分割協議を再度やり直すことになったり、相続税の相続財産の計上漏れにつながったりと相続人の負担を招くケースです。
特に多額の金額を加算したことで基礎控除額を超えた場合には、相続税の申告が必要になり、すでに相続税の申告を行っていれば修正申告の提出が必要になります。
出典:申告と納税|国税庁
4:遺言書が入っていた
相続人間で遺産分割協議が終わった後に被相続人の貸金庫が判明し、金庫の中に遺言書が入っていたというトラブルがあります。遺言書が見つかった場合、遺産分割協議後であっても遺言の内容が優先するのが原則です。
見つかった遺言書の内容によっては遺産分割協議をやり直す必要があること、また、発見された遺言が公正証書遺言以外の場合は家庭裁判所での「検認」が必要になることを認識しておきましょう。
出典:遺言書の検認|裁判所
貸金庫によく入っているものと相続方法
貸金庫によく入っているものとしては「預金通帳」「不動産関係書類」「保険証書」「貴金属」「思い出の品」などがあげられます。
それぞれに適した相続方法については下記のとおりです。
金庫に入っていた品 | 相続方法 |
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預金通帳 | 遺産分割協議で相続人・相続内容を確定後、解約手続きをする |
不動産関係書類 | 遺産分割協議で相続人・相続内容を確定後、相続登記をする |
保険証書 | 指定されている受取人が保険金の受取手続きをする |
貴金属 | 相続開始時の時価で計算し、遺産分割協議で相続人を決定する |
思い出の品 | 「形見分け」「処分する」などに分類し、引き継ぐ人を決定する |
貸金庫のトラブルを知って相続をスムーズに進めよう
貸金庫の目的上、金庫の中には相続に影響する品が入っている可能性が高いです。また、貸金庫の確認が遅れると相続手続きが遅れてしまうだけでなく、ここまで紹介したようなトラブルが起こることも考えられます。
相続開始後の相続財産の調査では、被相続人の口座から貸金庫の料金が引き落とされていないかなど、入念な下調べが必要です。
この記事を参考に被相続人に貸金庫がある場合のトラブルを知って、貸金庫の利用者が生前に対策をしておくことで、相続をスムーズに進められるでしょう。
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