
遺言書で認められる11個の効力とは?無効になるケースについても紹介

「自分自身の人生の死後に、自分の財産をどうしたらいいの?」
「自分の死後、私の財産がもとで親族の争いごとが起きたらどうしよう」
このように、自分の死後の財産問題を心配している人は多いのではないでしょうか。
この記事では、心配の種を残さないために、効果のある遺言書の書き方や遺言書の種類、効力などを紹介していきます。
この記事を読めば、どういった遺言書が有効で、どのような遺言書が無効なのかを知ることができるでしょう。また、遺言書によるトラブルを未然に防ぐポイントなども紹介しています。
自分の死後に残された家族が、幸せな生活ができるように、また、親族間で争いを起こしたくない方もぜひこの記事を参考にしてみてください。
遺言書とは
「 遺言書」とは、自分が亡くなった後に財産をどのようにするのかを決めて記載する書面です。
遺言書の作成をする際には、法律の厳しい決まり事を守ることが大切です。要件が満たされてない遺言書を作成しても、法的な効力はありません。
遺言書の種類
「普通方式」の遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。その他にも、「特別方式」と呼ばれる遺言書もあるため、ここで詳しく見ていきましょう。
遺言書の種類について知りたい人はぜひ参考にしてください。
普通方式
一般的に、3種類の遺言書を「普通方式」の遺言書と言います。「遺言の作成方式」としては代表的なものです。それらは、法律で定められた方式で作成することにより初めて効力が生じます。普通方式以外にも、「特別方式」と呼ばれる遺言作成の方式があります。
特別方式は、普通方式による遺言をすることが困難な場合に認められるものです。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、本人の自書が必須です。加えて「作成日付」と「遺言者の氏名」を自分で書いて、遺言書に遺言者が押印することも必要です。
民法改正によって、遺言書に添付する財産目録に限っては自書の署名及び押印があれば認められようになりました。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、2人以上の証人が立ち合い、遺言者がそれら公証人に「遺言の内容」を口述し遺言を作成する方式のことです。
まず、公証人がその内容を書き留めて遺言書を作成します。次に遺言者と証人がその内容が正しいことを確認して各自署名押印し、公証人が法律に従って作成したことを認めて署名押印します。
公証人によって作成される公正証書遺言は原案は遺言者が考えるのですが、遺言書を作成するのは公証人ということになります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、作成した遺言書の内容を秘密にできるという方式のことです。
封印をされている状態であるため、遺言書の内容は公証人や証人でも見ることができず、完全に秘密にされます。ただし、家庭裁判所の検認手続き前に開封すると秘密証書遺言は無効となります。
遺言書の内容を全く秘密のまま作成できるため、ご自身が人生を全うするまで絶対に知られたくない場合にだけ使われる遺言方式です。
特別方式
思いがけない緊急な状態で、遺言書を作成する必要が生じた時には、「特別方式遺言書」を利用できる場合があります。
例えば、突然余命宣告をされてしまい、遺言書を作成する時間がないというケースもあるでしょう。そのような場合、緊急時に対応できる「特別方式遺言」を利用できることがあります。
一般危急時遺言
一般危急時遺言は、別名を一般臨終遺言と言います。病気などの緊急の理由で「死期」が差し迫っている時に認められる遺言方式のことです。署名押印ができない場合に、口頭で遺言を残し「証人」が代わりに書面化する遺言の方式です。
民法での一般危急時遺言では、証人3人以上が立ち会い、そのうちの1人に遺言の趣旨を伝え、口授を受けた証人が筆記します。
一般隔絶地遺言
一般隔絶地遺言は、遺言者が社会との交通手段を失い、「普通方式」による遺言が作成できない時に認められる方式です。それには「伝染病隔離者遺言」と「在船者遺言」があり、伝染病隔絶地遺言は、伝染病のため行政処分により隔離された人の遺言のことです。
警察官1人及び証人1人以上の立ち合いが必要で、遺言書を作成、遺言者、遺言書の筆者、立会人及び証人が、遺言書に署名、押印によって作成されます。
難船危急時遺言
乗船している船が遭難した際に、生命の危機が迫っている時に容認される遺言です。飛行機による遭難では認められません。遺言の方式そのものは「一般危急時遺言」と同等ですが、緊急性がより求められるため法律が緩められ、必要な証人数は2人となりました。
作成方法は遺言者自身が作成します。証人と船長または事務員1人、他に2人以上の人が立ち会い、遺言者による署名・捺印をします。
船舶隔絶地遺言
船舶隔絶地遺言とは、特別方式による隔絶地遺言のうちの1つです。隔絶地遺言には、一般隔絶地遺言と、船舶隔絶地遺言があります。どちらも隔絶地における遺言という点では類似していますが、船舶中であるか否かという点が異なります。
もしも船長1人に立ち会ってもらうことが可能ならば、事務員や証人の立ち会いはいりません。その場合、遺言者と船長の署名と押印を取得できると、船舶隔絶地遺言として効力を持つようになります。
遺言書で認められる11個の効力
亡くなった後に遺言書があると、相続のことで遺族達の言い争いの種にならないようにすることができます。
また自身の意思通りに遺産が分割されるよう指示することが可能です。方式・書式に誤りがあれば、無効になってしまうということには注意しましょう。
これから、遺言書で認められる効力について紹介します。
1:推定相続人を廃除できる
該当の相続人から被相続人に対し、虐待や多大な侮辱、ひどい非行があった場合のみ認められます。この場合、遺言書で遺留分を含めた相続権を失わせる「相続廃除」の意思を表示することが可能です。
相続人から相続権をはく奪することになるため、相続廃除の判断はかなり慎重になされます。相続人が被相続人を虐待していた場合などに適用されます。
2:相続分を自由に決めることができる
どの割合の相続分を、どれくらいの割合でどの相続人に与えるか、遺言によって指定できます。例えば、長男に2分の1、次男に6分の1、三男に6分の1、四男に6分の1という場合もあるでしょう。
他にもバリエーションはいろいろあり、例えば90%にしかならない遺言も考えられます。この場合には、通常残りの10%は、4:3:2の割合で分配されるのが妥当でしょう。このように、複雑な計算を要するものもあります。
3:相続人でない人に遺産を遺贈する
通常は、被相続人の相続財産は定められた「法定相続人」が引き継ぎます。しかし、相続人でない人であっても財産を遺したい場合は、「遺贈(いぞう)」という形での遺言としてその意思を伝えることで、相続させることができるようになります。
「遺言者」よりも先に遺言で財産を取得することになる「受遺者」が亡くなっている時は、その受遺者が受け取るべきであった部分は除外されます。
4:遺産を寄付することができる
ユニセフ等の慈善団体などに、遺言による寄付をすることも「遺贈」と言います。不動産なども寄付をすることができ、この場合、家族から相続した財産の一部でも寄付することが可能です。
その際には、その人がどのような資産(預貯金、株式、不動産など)が所有され、その資産をどのように遺されたいかを確認していることが大切です。できれば弁護士、司法書士などの専門家に相談するのがよいでしょう。
5:遺産分割方法の決定・分配の禁止ができる
どのような相続人にいかなる割合の相続分を与えるか、遺言によって指定することができます。例を挙げると、土地と家は奥さんに、貯金は長男に、骨董品は次男にという遺言を残した時は、その内容通りに遺産を分けます。
その内容は本人の自由に任せられますが、書式は法律にのっとったものとなります。
6:後見人の指定ができる
残された子どもが幼い場合は、親権者が必要です。この場合、親権者による監護養育や財産管理を代わりに行う後見人を遺言で指定できます。最後の親権者が遺言で指定したり、残された未成年者本人や親族が家庭裁判所に申し立てて選任したりすることができます。
子どもの不安を考慮すると、遺言による「未成年後見人」の指定は役に立つと言えるでしょう。
出典:民法|e-Gov法令検索
7:共同相続人間で担保責任を負う
複数の相続人を「共同相続人」と言い、問題を有する財産を相続した相続人は相続の平等を守るために、問題ある財産を相続した相続人が他の共同相続人に対して、損害賠償を求めることができます。
共同相続人は、それぞれの相続分に応じて担保責任を負います。問題のある財産を相続した人は、損害賠償を請求することもできますが、請求には期限があるため注意が必要です。
8:遺言執行者の指定または指定の委託ができる
相続人の代表者として遺言内容を執行していく人のことを「遺言執行者」と言いますが、遺言執行者が必要となるケースとして、第三者に相続不動産を遺贈する場合(遺贈登記)があります。
遺言執行者は遺言によって指定することが可能です。さらに遺言執行者を指定してもらう人を遺言で指定することも可能でしょう。また、遺言者自身で決めなくても、第三者に遺言執行者の指定を決めることもできます。
9:非嫡出子を認知することができる
財産をどのように継いでほしいのか「遺言者」の願いを実現するのが遺言書です。非嫡出子の人が、平等な相続をしてもらうために非嫡出子であると認知することができる場合があり、相手の人とのトラブルで認知がかなわない場合は、「強制認知」という方法が使えます。
非嫡出子である子どもから、父親である相手の人に対し認知を要求する方法です。
10:特別受益の持ち戻しを免除できる
相続人が被相続人から受けた優先的な遺贈あるいは贈与を意味する「特別受益」は相続人の間の不公平をなくすための制度です。 遺贈や贈与によって有利に扱われた相続人と、そうでない相続人の間には、財産の引継ぎに関して不平等が生じるおそれがあり、これを正すための制度です。
特別受益の持ち戻し免除は、被相続人の意思表示によって行うことができます。意思表示の方法は、口頭による持ち戻し免除が認められます。
11:祭祀承継者を指定できる
家系図である「系譜」や「祭具」及び「墳墓」といった祭祀財産や遺骨を管理し、祖先の祭祀を主宰すべき人である「祭祀承継者」は指定することができます。祭祀承継者は、分かりやすく言うと、一族のお墓等を引き継いで管理する人のことで一族の代表のようなものです。
祭具とは、仏壇・神棚・位牌のことで、 墳墓(ふんぼ)とは、墓石・墓碑などのことです。 お墓の管理や仏壇の管理そして「檀家」として管理費の支払いやお布施、寄付などを代表して行います。
遺言書が無効となるケースは?
遺言には無効となるケースがあります。例えば、遺言書を複数回作成している場合です。基本的に、遺言を書く人が何回も遺言書を作り直した場合、前回書き入れた部分に矛盾する部分は、最新のものが効力を持つと言われています。
また、公正証書遺言の保管期間を過ぎた場合も無効となるでしょう。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言の場合は、書き方を間違えると無効になるおそれがあります。また「日付」と「氏名」を自分自身で記入し、「捺印」しなければ無効になってしまいます。捺印も必ず要求される条件で、印を押していない自筆証書遺言は無効になります。
このように加筆や修正のやり方には厳しい規定があり、守っていない場合その部分が無効になるため、できれば「すべて書き直すこと」をおすすめします。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言はご自身の意思で決める必要があります。しかし、遺言者が痴呆などになっている場合は無効となります。遺言書を作る時には、家族が干渉することは認められていません。
公正証書遺言を作成する際には、やるべきことがたくさんあります。そのような時には、ご家族の手を借りたくなりがちですが、遺言書作成の際にはご家族が関わらないよう注意が必要です。
遺言書で効力が認められるケースは?
遺言書は、「財産の分け方を決められる」と思う人がほとんどではないでしょうか。しかしそれだけではなく、遺言書を使用すると、財産を分ける方法の他にも多種多様なことを決定できます。
基本的に、遺言書によって決められた内容は、遺産相続において「被相続人自らの遺志」として尊重されます。
ここでは、遺言書が発揮する効力を解説します。遺言は死者の臨終の最終意思であるため、遺言書に書いてある通りに相続するのが原則です。
検認を受けていない場合
秘密証書遺言や、自宅等の法務局以外で保管されていた自筆証書遺言を発見した相続人や遺言書の保管者は、検認をすることなしに遺言を執行したり、家庭裁判所外の場所で開けたりすると、罰金を支払わせられるケースがあります。
また、検認をせずに遺言書を偽造・変造・破棄、隠蔽した相続人は「相続欠格」とみなされ、相続権を失効することになります。
勝手に開封されてしまった場合
遺言書に封印がされている場合、家庭裁判所において開封しなければなりません。間違って開封してしまった場合でも、それが原因で遺言自体が無効になるわけではありません。
しかし、勝手に開けてしまった場合には罰金を払わされる事があるため、遺言書を見つけた時は、開けたい衝動は控えて、検認手続きの過程で開けるようにします。
遺留分を侵害する内容が書かれている場合
遺留分を侵害する内容の遺言書という理由で、遺言書に効力がなくなるようなことはありません。遺留分というものは相続人が最低限の財産を得ることができる権利であるため、遺言書そのものを無効にするものではないのです。
遺留分を侵害している者に請求をすることで、遺留分侵害額の相続財産を「金銭」で受け取れます。遺留分額の返還を請求するかは本人の意思次第で、相続人(遺留分権利者)が請求をしない時は請求する必要はないのです。
実際に存在する遺産内容と異なる部分がある場合
遺言は人生を終える人の最後の意思のため、これを尊重し、遺言書に書いてある通りに相続させてあげましょう。しかし遺産を相続人に相続させる遺言には、その相続人が相続放棄の手続きをとらない限りは、権利移転の効力の否定は不可能だと言えます。
遺言書の内容と異なる遺産分割は、有効となる場合も無効となる場合もあります。このような場合、いくつかの事例に分けて検討する必要がありますが、遺言執行者がいるかいないかで判断することができます。
遺言書がずっと昔に書いたものである場合
遺言書には有効期限はありません。何年も前に書いた遺言書でも、基本的にはずっと効力があります。ただし、ずっと昔に書いた遺言書をそのままにしてしまうと、問題が生じる場合があります。
例えば、相続人に指定した人物が先に亡くなってしまった場合や、遺言書に記載した預貯金を、生前に使ってしまっていたりした場合などに、いざ相続が発生した際にトラブルになりかねないため、定期的に見直しをして書き換えた方がよいと言えるでしょう。
遺言書によるトラブルを未然に防ぐポイント
遺言書でのトラブルを防ぐポイントは、まずは「正しい書き方」をするということです。しかし、遺言書は自分でも簡単に書けるのかどうか疑問が残ります。
自筆証書遺言をする場合は、証人の必要がなく、費用もほとんどかからないでしょう。紙とペンと印鑑さえあれば作成できるため、とても簡単な方式だと言えます。
公正証書遺言で作成する
「公正証書遺言」というのは、遺言者が伝えた内容を「公証人」が紙面に作成する遺言のことです。自分の力で作成できる「自筆証書遺言」と比較すると作成までの手続きに手間と時間がかかるでしょう。
遺言書が無効になりにくいことや遺言内容が適法・正確になること、さらに公証役場で保管してくれることなど多くのメリットがあります。
遺留分を侵害しない内容にする
遺留分を侵害しない内容にするには注意が必要です。例えば、遺留分を侵害することが書かれた遺言書を目にした相続人が、先において遺留分侵害額請求を行う可能性があるという場合です。
こういったことが起きないように、どこから遺留分侵害額請求をするのかを指定したり、遺留分侵害額請求をする財産の順番を指定したりします。
専門家に相談する
専門家からは遺言書の書き方についてのアドバイスや遺言書の開封手順、遺言書の効力についての正しい知識が得られます。
相続権のない第三者に遺贈することもできます。トラブルの軽減に役立ちますし、保管を任せられるでしょう。また、本当に相続手続きができるかチェックもできます。
遺言書の効力について理解しよう
死後に、自分の財産を、誰にどのくらい渡すかなどを決定できるのが遺言書の主な効力です。
法定相続分以外のパーセンテージで遺産を分けてあげたり、ある遺産を特定の相続人や相続人以外の人へ与えたりすることが可能です。また、遺言では「相続方法」を指定できます。
親族間や兄弟間で争いが起こらないよう、今回の記事を参考に遺言書の効力について理解しましょう。
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