
墓石に刻む文字の位置とその意味とは?価格や書体と彫り方についても紹介

「墓石への文字入れはどのくらいの値段?」
「お墓に彫る文字の位置や模様は自由なの?」
「墓石にはどんな書体・フォントを使えるのか知りたい。」
このように、お墓を新しく建てたり、墓石に追加で文字を刻んだりする場合、費用やデザインなどのさまざまな疑問が尽きない人は多いのではないでしょうか。
本記事では、墓石に刻む文字の位置や意味、文字彫りや模様を刻む場合の費用、使用される書体、彫り方の種類などをまとめました。
記事を読むことで、石材店に文字入れを依頼する際に、墓石のデザインに合う文字の入れ方や位置に迷うことなく、適正価格で納得いく仕上がりにしてもらえるでしょう。また、古くなると色落ちが気になる文字の色の塗り直しについても知ることができます。
お墓の建立や追加で文字を刻むときには、ぜひこの記事を参考にしてください。
墓石に文字を刻むときのおおよその費用
墓石に文字を刻む場合は、刻む位置や戒名などを彫り入れる人数、模様の有無などで費用が変わります。
また、磨き直しや文字を消して新たに彫る場合など、出来上がりの希望によっても大きく価格が変動するとされています。
ここからは、墓石の文字入れの各パターンに合わせて、費用相場を解説していきます。
文字彫りの費用
最初にお墓を建立する場合、基礎彫刻と呼ばれる家名などの正面文字、建立者名、建立日などを彫刻するのが一般的とされています。この基礎彫刻にかかる費用は、4万円~10万円程度の費用がかかるとみておきましょう。
また、民営霊園や寺院墓地は連携している石材店があるケースがほとんどです。お墓の建立や文字彫りの際には、自分で石材店を選べるかどうかも事前に聞いておく必要があります。
追加で文字を刻むときの費用
追加で戒名や俗名(生前に使っていた名前)を刻む場合、1人当たり5万円前後からの費用がかかるとされています。現場での彫刻が不可能な場合は、墓石を石材店へ運ぶ必要があるため、輸送費などの追加料金もかかる可能性があるでしょう。
棹石に追加で文字入れをする場合は、ご先祖様に向けて彫刻ができないため、お性根抜き(魂抜き)・お性根入れ(魂入れ)をとりおこないます。僧侶へのお布施として1万円~3万円程度を準備しておきましょう。
なお、棹石ではなく墓誌に文字入れする場合、墓誌は礼拝の対象にならないため、お性根抜きなどの法要は必要ありません。
模様を刻むときの費用
墓石に故人が好きだった花や道具、家紋などの模様を刻むケースもあります。イラストや模様を墓石に入れるときの費用の目安は、10万円~20万円程度とみておきましょう。
追加で新たに模様を刻む場合は、5万円~15万円程度かかるといわれています。追加で文字を入れるのと同じく、墓石の輸送費などの割増料金や、彫刻をほどこす場所など、状況によっても価格が変わるとされています。
墓石の磨き直しと文字の追加費用
経年劣化で光沢やツヤがなくなった墓石は、墓石の表面を磨く「磨き直し」できれいによみがえります。磨き直しの費用相場は、30万円前後からとみておきましょう。
磨き直しは現場での作業ができないため、解体や再設置、輸送などの費用もかかります。お性根抜き法要も必要となるため、お布施として1万円~3万円程度も準備しておきましょう。
一般的に、元々入っている文字は磨き直しの工程で彫り直されます。磨き直しと新たな文字入れを同時におこなう場合、さらに1人当たり5万円前後の追加費用がかかるとみておきましょう。
文字を消して刻み直すときの費用
墓石の文字を消す方法は、消したい部分の文字を削る方法と、パテで埋めて消す方法があります。削る場合は20万円~50万円程度、埋める場合は数万円程度とみておきましょう。
削る場合は、文字の彫りの深さによっても金額が変動します。削られた面とそのままの面との経年劣化の差が気になったり、墓石の大きさが変わってしまったりといった点を考慮しておきましょう。
パテで埋める場合、安価に施工できますが、時間がたつと境目が目立ってしまう傾向にあります。また、石の種類によっては不自然に見えるものもあるため、応急処置として利用するのがよいでしょう。
新たに文字を入れる場合は、1人当たり5万円前後の追加費用がかかり、施工の条件によってお布施代や石材店への割増費用もかかります。墓石への文字入れなどの施工をおこなう場合は、1つの工程のみならず、トータルの費用を把握しておきましょう。
墓石に刻む文字の位置とその意味
一般的なお墓のイメージは「~家之墓」といった家名が入るイメージが多く持たれますが、実際は墓石に刻む文字や内容には決まりがありません。
近年では洋型や個性的なデザインのお墓も増え、彫刻される文字も時代の流れと共に変化しています。
ここからは、墓石の種類や位置ごとに、よく彫刻される文字とその意味を解説していきます。
棹石の正面
棹石の正面には家名や「南無阿弥陀仏」などの題目、好きな言葉やオリジナルのメッセージなどが刻まれます。
墓石のタイプによってどのような文字が多く選ばれているのか、さらに細かく解説していきましょう。
和型墓石に刻まれる一般的な文字
和型墓石の正面に刻まれる文字で多くみられるのは「~家之墓」などの家名や、宗派による題目などです。ほかにも、個人のお墓になると戒名や俗名を入れるケースもあるでしょう。
宗派による題目は以下の通りです。梵字を入れた後に家名を入れるケースもあるため、宗派にそった題目を事前に確認して彫刻しましょう。
・浄土真宗、浄土宗、天台宗…「南無阿弥陀仏」
・真言宗…「南無大師遍照金剛」
・臨済宗、曹洞宗…「南無釈迦牟尼佛」
・日蓮宗…「南無妙法蓮華経」(ひげ文字と呼ばれる書体を使う)
洋型墓石に好んで刻まれる文字
洋型墓石に好んで使われている文字は、想いを込めた漢字や単語、ひらがなでの短いメッセージなど、より自由に選ばれている傾向があります。
漢字だと「愛」「偲」「心」「絆」などのシンプルで意味の伝わりやすいものが人気です。2文字以上になると「感謝」「誠実」といったメッセージ性を感じるものや、故人の人柄を思わせる単語が好まれます。
「ありがとう」などのひらがなでのメッセージも、柔らかな雰囲気で親しみやすいことから、人気が高まっています。
個性的なデザインの墓石に刻まれる文字
お墓のデザイン性が強いものになると、墓石のモチーフにあわせたメッセージが好まれます。
たとえば、ツーリングが好きだった故人に、バイクをモチーフとして取り入れたお墓を作った場合は「風」「道」など、イメージの合う文字がなじみやすいでしょう。オリジナリティに富んだお墓には、故人や家族からのメッセージを強く感じる文字などもおすすめです。
棹石の右側面
棹石の右側面には、埋葬者の戒名・没年月日・俗名・享年などが刻まれ、追加彫刻されていきます。
宗派や地域により場所が異なることもありますが、これらの追加彫刻は一般的に右側に彫られるケースがほとんどです。刻む順番は埋葬された順に刻む場合と、家系図にそって刻む場合があります。
刻む順番や俗名に関して疑問がある場合は、親族や菩提寺などに確認しておくとよいでしょう。
棹石の左側面
棹石の左側面には、お墓の建立年月日・建立者名が刻まれます。
建立年月日は「~年~月吉日」と彫刻されることが多く、お墓を建てた日のほかに、故人の法要の年月日を入れるケースもあります。
建立者名が名義人と同じである必要はなく、お墓を建てるために資金を出した人すべてを彫刻するケースもあり、細かい決まりはありません。
棹石の裏面
洋型墓石は側面に建立年月日や建立者名が彫られることがほとんどですが、和型墓石の場合、棹石の裏面に彫られるケースもあります。
彫る位置に細かい決まりはないといわれていますが、疑問点や不安がある場合は菩提寺や霊園に確認しておきましょう。
墓石に好きな文字を刻むときの注意点
お墓に刻む文字にルールはありませんが、寺院や霊園によってはある程度の決まりが定められている可能性があります。なかでも和型墓石の場合、昔からの風習にならう傾向が強いため、彫刻する文字については事前に確認しておくとよいでしょう。
お墓は先祖代々受け継がれるものでしたが、時代が変わり、個人や夫婦だけのお墓など、埋葬のスタイルも変化しています。好みの墓石やモチーフを選び、その人らしい言葉を刻むことで、故人の在りし日の姿を思い浮かべることができるでしょう。
墓石の文字に彩色する理由
墓石の文字の彩色は、一般的には文字を目立たせるためのもので、白や黒、グレー、金色などが主流の色といわれています。
墓石の文字の色には特別なルールはなく、地域によって多く使われる色に違いはありますが、白御影石なら黒や白、黒御影石ならグレーなど、文字が映える色がおすすめです。あえて色を入れずに彫りだけで自然にみせるのもよいでしょう。
また、生前にお墓を購入し、いただいた戒名を彫り入れた場合、その文字は赤字(朱)に色入れされます。一般的には亡くなった後に戒名の色を抜きますが、建立者名は戒名を使わないため最初から赤字を入れないか、色を抜く必要はないとされています。
墓石に刻まれた文字の色の補修方法
墓石の文字の汚れや剥げなど、劣化が気になってきた場合は、色を入れ直すことができます。
墓石の磨き直しや文字の刻み直しと比較しても、安価に仕上げられるでしょう。より費用を抑えたいなら、自分で道具をそろえ、補修するのもおすすめです。
文字の色を補修する場合はトラブルを防ぐため、業者が入る場合のみならず、自分で作業する場合も、事前に墓地の管理者へ作業することを伝えておきましょう。
自分で補修する
自分で補修する場合は、ホームセンターなどにあるペンキでも塗り直せます。墓石専用の補修ペンキや補修ペンなどを使えば、よりきれいに仕上げられるでしょう。
塗り直す部分の汚れを歯ブラシなどで落とし、きれいに乾かした後で塗っていきます。はみ出した部分は、乾いた後に塗料をカッターで削り取って整えましょう。古い墓石の場合は、塗料が石ににじむ可能性があるため、シーラーと呼ばれる下地で補強して塗り直すのがおすすめです。
専用の補修ペンキは千円前後で購入できます。リーズナブルに補修できるため、塗り直す部分が少ない場合は、自分で補修してみてはいかがでしょうか。
業者に頼む
よりきれいに仕上げたい場合は、石材店などの業者に依頼しましょう。業者に依頼した場合は、数千円~3万円程度の費用がかかるとされています。
金色などの塗料は高価なため、入れる色によっても価格が変動する点を考慮して、業者に見積もりを出してもらいましょう。クリーニングなども同時に頼めば、文字部分だけでなく全体をきれいに整えられるでしょう
戒名を墓石に彫るタイミングは?
戒名を墓石に彫る時期に期限はありませんが、一般的に四十九日法要の納骨式に間に合わせるよう依頼するケースが多いといわれています。
作業には数週間かかる場合が多いため、余裕を持って1か月前には依頼しておきましょう。生前戒名を彫っている場合は、赤字を抜く作業のみとなります。自分で抜くこともできますが、剝離液は墓石を傷つけてしまう可能性もあるため、難しい場合は業者へ相談しましょう。
墓石の文字を刻むときに注意すること
墓石の文字は一度刻むと、修正するのに大きな費用がかかるため、業者への依頼時には注意しておくべき点があります。
戒名などの彫り間違いが起こらないよう、業者との意思疎通はしっかりとおこないましょう。
誤字に注意する
戒名に使用される漢字は似たようなものも多いため、ご位牌と照らし合わせて間違いがないか、しっかりとチェックしておきましょう。
特に旧字と略字(新字体)の間違いでのトラブルが多いといわれています。墓石を新しくする場合などは、お墓と過去帳、ご位牌を比較して、誤字がないように気をつけましょう。自分だけでなく、家族全員でチェックすれば見落としなども防げるでしょう。
刻む文字は一般的に正字を使う
墓石に使われる文字は一般的に「正字」と呼ばれる文字が使用されるため、注意が必要です。
たとえば、一般的に使われている「国」という字は、正字では「國」と表記されます。普段使われる漢字も略字の可能性があるため、どちらか判断がつかない場合はご位牌を確認し、業者へ相談してください。
デザイン性の高いお墓にオリジナルのメッセージなどを刻む場合は、略字でも問題ないといわれています。
墓石に刻む文字の書体例
墓石に刻む文字は、書体(フォント)によってイメージが大きく変わります。
墓石に使う書体に決まりはありませんが、一般的に好まれるものがいくつかあります。遠くからでもわかるよう見やすさを重視したり、故人のイメージに合わせたりしながら、お墓になじむ書体を選びましょう。
ゴシック体
ゴシック体は線の強弱などがなく、見やすさなどからネット上や横書きの文章でよく使われる書体です。
日常生活でも目にする機会が多いことから、墓石に彫ったときに親しみやすさを感じるのもゴシック体の特徴といえるでしょう。横書きに向いている書体のため、洋型墓石やオリジナルの墓石に英語でメッセージを入れる場合などにもおすすめです。
楷書体
筆を使ったような筆跡で、文字の「とめ」「はね」などがわかりやすく、読みやすいことから、墓石にもスタンダードに使用されるのが楷書体です。
墓石に刻まれると力強くはっきりとした印象になり、存在感が際立ちます。遠くから見やすいのも楷書体の利点といえるでしょう。
草書体
草書体は速く書くために字画を簡略化してあるため、書き方を学んだ人でないと文字を読めない可能性もあります。楷書体や行書体と比較して、墓石に使用する人は少ない傾向にありますが、メッセージなどを彫刻する場合などにおすすめです。
比較的読みやすいひらがなを使い、「ありがとう」「やすらかに」などのメッセージを入れると味わい深い印象に仕上がるでしょう。
行書体
楷書体を崩し、続けて書いたような筆跡の書体で伸びやかさを感じるのが行書体です。読みづらいということもないため、墓石には多く使用されています。
墓石に刻んだ場合も、流れるような筆跡が小気味よく、品格を感じさせてくれるでしょう。力強さより繊細なイメージを重視したいときにおすすめです。
隷書体
横長の書体が特徴的で、見やすさから認め印などにも多く使われているのが隷書体です。昔から墓石に好んで使用された書体のひとつでもあります。
古くから伝わる隷書体は、先祖代々の歴史ある墓石にもぴったりの書体です。安定感のあるどっしりとした形は歴史を感じさせ、お墓にもしっくりとなじむでしょう。
墓石に刻む文字の彫り方
墓石の文字の彫刻方法はさまざまな種類があり、彫り方でお墓の印象も大きく変わるといえるでしょう。昔は手彫りがメインでしたが、現代では機械を使い砂を吹きつけて彫刻をほどこす「サンドブラスト」と呼ばれる方法が多く使われています。
ここからは、各手法の特徴と見た目の印象を解説していきます。彫る場所や、彫るものが文字かモチーフかによっても適した彫り方があるため、参考にしてみてください。
浮かし彫り
文字部分を浮かすように周囲を彫るのが「浮かし彫り」です。彫った部分を彩色しなくても、文字をくっきりとみせることができます。
棹石の文字に使われることもありますが、一般的に多いのは水鉢や花立にほどこす家紋の彫刻などです。石の素材を活かしながら、模様を美しく際立たせられるでしょう。
ヤゲン彫り
V字の彫刻刀で彫ったような深さの出る手法が「ヤゲン彫り」です。しっかりと陰影が出るため、文字に深い立体感を感じられるのが特徴といえるでしょう。
手彫りの彫刻方法のひとつですが、手彫りができる職人は減少傾向にあり、高度な技術が必要となるため、費用が高くなる点を考慮しておきましょう。
平彫り
彫り部分の深さに高低差をつけず、均等に彫り上げるのが「平彫り」です。躍動感や迫力は控えめになりますが、メリハリを出しながらも落ち着いて静謐なイメージになります。
水が溜まりにいため、プレート型などの平らなお墓にも適している手法のひとつです。
線彫り
「スジ彫り」とも呼ばれる、細い線を彫る彫刻方法が「線彫り」です。一般的に、イラストやデザインなどに使用されることが多い手法で、繊細な表現に適した手法といえます。
立体感を出すことは性質上難しい手法ですが、平面にそのままイラストなどを書き写したように仕上げられるでしょう。
彫り込み
墓石に入れる彫刻方法のなかでも、多く使われているのが「彫り込み」です。文字を書くときと同じように、筆を下した位置やとめる位置を深く彫りこむことで強弱をあらわし、文字に立体感を出すことができます。
陰影や強弱がはっきりと出るため、味わい深い風合いも出せるのが彫り込みの特徴ですが、彫りが深い部分には汚れや苔などが付着しやすい傾向もあります。歯ブラシなどを使ってメンテナンスをおこないましょう。
墓石に刻む文字には決まりがないことを知っておきましょう
墓石に刻む文字には決まりがないため、故人のイメージにあわせたり、遺族からのメッセージを刻んだりするのもよいでしょう。昔ながらのお墓の場合は、一般的な風習も考慮しながら彫刻していくのがおすすめです。
また、お墓の形や石の種類だけでなく、書体や彫刻方法でもお墓のイメージは大きく変わります。費用や地域ならではの風習など、細かい疑問点がある場合は、業者や墓地の管理者に確認しておくと安心です。
ぜひこの記事を参考にして、故人やご先祖様がやすらかに眠れるお墓にしていきましょう。
お電話でも受け付けております
